We were pure and foolish.
However, only wanted to see your smile and.


僕らは無垢で、そして愚かでした。
ただ、あなたの笑顔が見たかっただけなのに。




「兄さん」

その鎧に似合わない柔らかい声に顔を上げた。時計台の前に座るエルリック兄弟の姿は正に今の天気と同等だった。
曖昧に返事をしたエドワードは下を向いて、静かに言葉を紡ぐ。

「…なんだかもういっぱいいっぱいでさ、何から考えればいいかわかんねーや。
……昨日の夜からオレ達の信じる錬金術師ってなんだろう…って、ずっと考えてた」

いやな夢を見たからだろうか。違う、いやな夢なんかじゃない。あれは己の立場…或いは罪の認識。

あの母の夢は、まるで自分の目を覚まさせるような、

「おかあさんはちゃんと作ってくれなかったのね」

思い上がるな。

そう突きつけられたような、弟の人生を狂わせ、母さんに侮辱以下のことをした罪を。



『錬金術師とは物質の内に存在する法則と流れを知り 分解し 再構築する事
この世界も法則にしたがって流れ循環している
人が死ぬのもその流れのうち

流れを受け入れろ』

「師匠(せんせい)にくどいくらい言われたっけな。」

わかってるつもりだった。でもわかってなかったから、

「あの時…母さんを…」

子供だからなんて理由は聞かない。無垢で無知だった俺の、残酷な過ち。

「そして今もどうにもならない事をどうにかできないかと考えている」

「あんなの…死んでると同じだ!」

なぜあの時、どうにか出来る時に何もしなかったのか。

「オレはバカだ。あの時から少しも成長しちゃいない」

はあ…と上を見上げた。雨はだんだんと収まってきたが、まだその粒たちはエドワードとアルフォンスの鎧を濡らす。

「外に出れば雨と一緒に心の中のもやもやした物も少しは流れるかなと思ったけど、顔に当たる一粒すらも今はうっとうしいや」

アルフォンスはぐ、と手を握る。握っているとわかるのに、その感触は感じない。己が姿を突きつけられる感覚。

「肉体が無いボクには雨が肌を打つ感覚も無い。それはやっぱりさびしいし、つらい」

「兄さん、ボクはやっぱり元の身体に…人間に戻りたい。たとえそれが世の流れに逆らうどうにもならない事だとしても」

それは、二人で決めた、決意。


ふと、それを切り出したのはアルフォンスだった。

「…キイにも、謝らなきゃね」

「…な、なんでアイツが出てくんだよ」

キイの名前にあからさまな反応をした兄に内心笑いながら、だって、と続ける。

「どの道保護したのは僕らなのに置いて行っちゃったし、兄さんに至っては八つ当たりしちゃったんだから」

む…、なんて眉に盛大なシワを寄せてて悩みに悩んだのだろうしばしの沈黙結果、「…………ああ」と頷いた。しかしそう決めたからなのか、その顔はわりとスッキリしたようで、

「初めてあったなぁ、あんな不思議な人」

「ニーナとアレキサンダー殺すなよ」

「不思議ってより謎なヤツだろ。ていうか、結局どこ行ったんだアイツ?」

「あ!いたいた!エドワードさん!」

あの目立つ白髪頭を思い浮かべて、まあ、誤るくらいならしてやると思う。



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