『明日の夜明けまでに、テメェを船にのせる』


準備しとけ、そう言った。

翌日、クルー達に命じて女を探させた。
そして後から自分も船を降りて見たものは、


『一億越えの船のクルーがこれってどうなの、C・キッドさん』


倒れる野郎共の中心で凛と立つ女だった。














甲板に出ると、月は見えないがたくさんの星たちが赤い男を迎えた。無言で歩いていると、最近誘拐した女が背を向けていた。膝を曲げて顔をうめている。


「眠れねえか?」


そう言った途端、女はビクッと肩を痙攣させる意外な反応をさせてからキッドを振り返る。


「あら、キャプテン・キッド」

「普通に呼べねえのかてめえは」


呆れた様子でため息をつくキッドを余所に女は再び海へと体を向けた。その時落ち着いた声がポツリと聞こえた。


「貴方の性です」

「あ?」

「貴方の性でわたしの人生滅茶苦茶です」

「なんだ、怖えのか?」

「怖いですよ」


ぎゅっ、と腕に力を込めるのがうかがえた。初めて見た女の態度に、無意識に鼻で笑った。
莫迦にしているのではない、むしろ素直すぎて面白いと思った。


「普段余裕ぶってるヤツがこんな反応だと気分がいいな」

「なんとでもいってくださいよドSのファイヤー野郎、
貴方が攫ってくれたおかげでこれから命に関わる旅をしなくちゃならないじゃないですか
本を書くどころじゃない」

「受け入れる気か?逃げると思ったんだがな」

「降りていいなら喜んで降りましょう」

「いいわけねえだろ」

「なら仕方ないと思います、わたしだって命は惜しい」


それに、と、女は今一度キッドに振り返る。燃えるような赤い髪、実物はこんなにも強くて美しいのか、なんて彼女は思った。


「貴方はわたしより強いから、攫った限りわたしを守ってくれると信じてます
まあわたしを所有物といっておきながら、他の海賊たちに殺させる様を高みの見物するなんて趣味が貴方になければですが」


海賊を恐ろしい言いながら、この女は海賊を信じるのかと、キッドはまた笑った。
そしたら女は少し拗ねた感じでそっぽを向いた。


「勘違いしないで頂きたい、もし、貴方がそこらの弱い海賊と変わらないと判断したら貴方の寝首をかいてその首海軍にさらしてやります
地獄の羞恥に墜ちればいいよ」


最後だけタメ口になった女は、チラとこちらを見て、ニヤリと笑った。


「せいぜいわたしを守って下さい」


部屋に戻ります、そう言った女は立ち上がって去ろうとした。しかしそれはキッドによって阻まれた。

腕を捕んで、というか引っ張って、倒れた先はたくましい胸板。程よい硬さのそれは、少々荒々しく女を受け入れ、「ブふッ」なんて間抜けな息を吐いた。
それに笑って、何をするんだと顔を上げようとする女の腰に腕を回しちょうど手に収まる後頭部を軽く押せば、あとは簡単。


「―――――――、」


柔らかい感触を己のそれにあてがい、思う存分堪能した。

離れた唇は少し震えていた。


「地獄にしろ天国にしろ」


俯こうとしたので顎を掴みそれを阻める。目があえば驚きに満ちた、どこか儚い女の表情。ゾクリと理性が疼いて、それを誤魔化すついでにニヤリと口元を釣り上げた。


「堕ちるのは、てめえのほうだろうな?」


わたすかよ、誰にもな。


耳元で囁いたそれに、女は、


@依存エロチック
(所有物の"しるし"をつけようか)


【ジャイアニズム】の続き。

ローとキッドでこうも卑猥差を感じないのはわたしだけだろうか




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