化け物はいった。
あ、星だ。
綺麗だなぁ、気づかなかったや。
戦争が始まってしばらく上は見てなかったから、ふと、上を見たらたくさんの小さな光が私を見ていた。
いや、正確には私たち、かな。
私の周りには星の数に負けないくらいの生き物だったものが転がっている。私の仲間だったものもいれば、敵だったものもいる。
そういえば死んだ人達って星になるらしいね。だったらこの彼らはあの星達で、私を見ているのか、悪趣味だな。そんなんだから娘にお父さんの足臭い!とか言われるんだよ。あれ、それは違うかな、いやあってる、はず…うん。
「おーい」
しっかし、痛いなぁ畜生。
落ちついたせいか、今までなかった感覚がジワジワ戻ってきた。痛いなぁ。
いや、これさえも幻なのかな、幻覚なのかな、そもそも《化け物》とか言われた私に感覚があったっけ。いや、《化け物》にだって感覚はあるだろう、じゃなきゃ物語も面白くない。
「おーい、死んでる?」
あぁでも、私は違うのかな。
だって斬った感覚が、あの鮮明な肉をさばく感覚が慣れすぎちゃって、なんだかなんも感じなくなってる気がする。
あ、アレかな、悪者って悪いことしても全然動揺しない、寧ろ笑ってる。命乞いをする奴らに情の一つも見せない、敵からも仲間からも怪訝な目を向けられ、恐れられて、それでも迷わず命を奪いまくる。そういうモノ。
あ、なんだ、私悪者決定じゃん。
バシンッ
「いった…」
「お、生きてた。」
突然の衝撃に首を回すと、星とは違うおっきな銀色の輝き。
仰向けに寝っ転がってる私を見下ろす男。
「…なに」
「いや、死んでんのかと思って」
「死んでほしいの?」
「ちげーよ死にたいの?」
「私はお前に死んでほしい」
「銀さんの心(ハート)が砕けそうだよ」
砕けちゃえばいいのに、そう毒づけば奴は大げさなため息をついて私の隣へ座り込んだ。なんでだ。
「あっち行け。」
「お前よくこんな所で寝っ転がれるなぁ」
「五月蝿い、あっち行け」
「あいつらもう戻ってるってのに、」
「あっち行け」
「しかも一人で」
「聞けよ天パー」
寂しい奴だなぁなりなんなり言ってくるこの莫迦男の縮れだ毛根をむしりとってやりたい。人の話はちゃんと聞けって親に言われなかったのか、いや、松陽先生に言われなかったのか、なんて、私が彼の名を口にする権利もないけれど。
「…どうでもいいけど、早く戻れば、」
「あん?迎えにきてやったのにそりゃないんじゃねーの?」
「私といてもいいことないよって言ってんの」
「……」
「白い目で見られたくないならさっさと戻れ、そして私に近づくな
私は一人で平気だ」
殺戮人形だの悪魔だの化け物だの、言われてもお構いなしに老若男女問わず迷いなく斬って行く。そりゃ仲間でも引くだろう、自覚してやってる。
戦争なんて孤独で十分だと私は思う。怒り狂うにしろ泣きわめくにしろ、戦争という愚かな命の奪い合いに参加してることに変わりないのだから。
「お前さぁ何かと私に近寄ってくるけど、何勘違いしてるか知らないけど、私はお前が思ってる奴じゃないと思うよ。むしろ私から見ればお前は愚かな莫迦者だ。
こんな化け物といて何が楽しい、こんな化け物といて何を得る。
悪いけど私はお前らの考えを何一つ理解できない、共感できない。
慰めあう?仲間がいる?莫迦みたい。
傷の舐め合いしたって、得るものなんて何もない。」
そんな考えしかしない私も、十分愚かで大莫迦者だ。
所詮私は、悪者の化け物でしかない。
「化け物は独りでいるのが決まりだろう。
って何やってんのお前。」
気づいたら浮かんでた。
この莫迦者によって。
「離せ。」
「うるせーもう黙れお前うるせー黙れ。」
「なんで二回言った。」
「お前が大バカ野郎だからだよ、化け物だの愚かだのむつかしい言葉を使うな。」
「お前が莫迦なだけだ。」
「次言ったら襲うぞ。
足の骨見事に折れた奴は化け物とは言わないんだよ、ただの見栄張りって言うんだよ。」
「………。」
なんで知ってる。
「そんなんだから父親は娘に『お父さんの足臭い!』って煙たがられるんだよ。ってなんか違う気がする。」
「全然違うと思うんだが。」
「うるせーとにかく、今のぼろ雑巾みたいなお前のどこが化け物だっつーんだよ、
ただの怪我したじゃじゃ馬娘っつーんだよ。」
………………。
奴の背中の布に力を込める。
「化け物にただの娘呼ばわりすると?喧嘩売ってんの?」
「バーロー誰がお前みたいな小娘に怖じ気付くか。
それにてめぇは娘じゃねぇじゃじゃ馬だ。」
「…そう、か」
化け物に恐れず近づく莫迦者、
さぁ物語はどうなることやら。
@いのちしらず
(じゃあそのじゃじゃ馬に喧嘩売ってんのか)
(おれは喧嘩は売らねぇ、どっちかって言うと糖分がほしい。)
(…関係ないじゃん。)
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こういうの多いなー
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