がばあっ!と勢いよく伊武に抱き付いたのは、苗字だ。
その目は少しだけ、潤んでいる。



「い、伊武…」

「…何だよ」



因みにここは、昼休みの教室。
2人は同じクラスで、2年の最初に苗字が伊武に懐いたのが始まりだった。
それ以来時折このような姿が見られ、クラスメートは動じなくなっていた。
それも、伊武に取っては迷惑な話しだが。



「伊武伊武伊武ー!!」

「うるさいんだけど。何、聞こえてないの?全くいつもいつも困るんだよねー。だいた」

「そんな事より聞いてよ!!プリンに!!」

「また聞いてないよ。しかも何、そんな事って。嫌だなー、人のはな」

「プリンに押しつぶされる夢見たの!!でーっかいプリン!なんでプリン何だろうね?私はプリンよりゼリー派だー!!」



どうやら話を聞かないのはお互い様のようで。
ブツブツと呟く伊武を無視し、苗字は自分の話をする。
どうやら彼女は、授業中に居眠りをしてそんな夢を見たらしい。

これ見よがしに溜め息を吐いて、伊武も喋り出す。



「プリンでもゼリーでもどっちでもいいんだよ。今昼休みなんだけど、分かる?あぁ、分からないよね。俺だっていつもいつも苗字に付き合ってる暇ないんだよね、疲れるし」

「もー、伊武酷い!ちゃんと聞いてよー」

「聞いてる、ちゃんと。プリンとゼリー、どっちが好きかでしょ。…別にどっちでもいいじゃんか人それぞれだし。プリンの方が好きだけどゼリーも食べない訳じゃないしその時の気分ってものが」



プリンとゼリー、どっちが好きか。
そんな事、苗字は一言も言っていない。
けれどもそんな事を気にせずぼやく伊武に、言うべきか悩んでいたクラスメートの耳に届いたのは。



「流石伊武、分かってる!!」



…満足げな、苗字の声だった。
それにクラスメートが戸惑うと思ったら大間違い。
彼らは呆れたように、けれどどこか微笑ましそうに見るだけだった。
戸惑っているのは、今現在このクラスに訪れ始めてこの光景を見ている生徒達だった。



「ねー伊武!どう思う?」

「………だからどうでもいいって言ってるよね人の話し聞けって何度言えば苗字は分かるのかな無理なのか無理なんだろうなあぁほんと面倒くさいな」

「え、ほんと!?食べる食べるー!!」



とうとう伊武のぼやきがノンブレスになった時。
微かに貶されているのにも関わらず、苗字は嬉しそうにしている。
苗字はそれからようやく伊武から離れ、2人は立ち上がった。



「…ああもうほんと面倒だなでもまぁいいか甘いもの食べたくないわけじゃないしどうしようかなやっぱ行かないでも」

「伊武はプリンね!私はゼリーにするから!あ、でも半分ずつにする?」

「…………」

「うん分かった、半分ずつね!!」



ぼやきがとうとう聞き取れなくなったけれど、苗字には分かるようで。
というよりも、大分自分なりの解釈をしているようにも感じられるが、それは別にいいのだろうと考えられる。
結局2人はどこまでも…


仲が良いんだ。




プリンとゼリー、半分こ

(相変わらず仲良いよね)
(ていうかよく会話出来てるよな)
(2人がいいならいいんじゃない?)





―・―・―・―・―
なんだか電波な2人組に…(汗)
そんな2人を、クラスメートは親の心境で見守ります!!←

相互記念に赤橋さまに捧げます^^
これから宜しくお願いします!


@なんという電波カポ!だがそこがいい!
流雨さまありがとうございましたああああ!!




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