この匂いが好きだ、
この音が好きだ、
この場に立つ自分が好きだ。
此処は愛しい永遠の故郷だからだ。
荒狂う海原、轟々と吹き荒れる風と雨。暗闇の難解に必死に耐える小柄な船。麦わら海賊団の船である。それが最近、先ほど彼らの船に新たな仲間が一人入った。偉大なる航路に入る前に仲間が増え、先行き良好だった。
そしてその期待(?)の新人船員(クルー)、キスライトは――
「…うぇ。」
酔っていた。
「いやなんでだよ!!」
ビシィ!!とツッコミをいれたのはウソップだった。
だが当人、キスライトはそれどころでは無いらしく、キッチンの隅で小さくなって顔を真っ青に染めている。(サンジに背中を摩られて)
「海賊が船酔いするなんて聞いたことねえぞ!」
「…いや、実は船乗ったの初めてなんだよ、」
「なにぃー!?」
「おまえそれでよく海賊になったなあ…」
「少しは静かにしやがれクソ野郎ども!キイちゃんの体に響くだろうが!!」
「おぶぶ…」
そんなやり取りをしているといままで外にいたナミとルフィがキッチンに入ってきた。
ナミは隅にしゃがんでいるキイに呆れた目を向ける。
「ちょっと、アンタ大丈夫?」
「…多分」
「全く…それよりみんな聞いて!」
テーブルに地図を広げてナミは言った。
「“偉大なる航路”の入り口は、山よ」
「山!?」
ナミが言うには、導きの灯が差すは赤い土の大陸(レッドライン)にあるリヴァース・マウンテンと言う山。そこに行き着く運河を登って行くとのことらしい。
「運河!?バカいえ!運河があろうと船が山登れるわけねえだろ!!」
「だってそう描いてあったんだもん」
「そりゃバギーから奪った海図だろ!?当てになるかよ」
ウソップやゾロの言うことはもっともで、そんな中話し合いに水を差す人物がいた。
「え?船って山登んないの?」
「うおっ!?」
ウソップの横ににゅっと乗り出したのはさっきまでちぢこまっていたキイであって。
「おま、船酔いは!?」
「治った」
「早っ!」
「ねぇ、それよりそこ行けないの?」
「行ける訳ねぇだろ!船で山登れるわけが…」
「いやだって…行けるって描いてあるなら行けるんじゃないの?」
「いや、それは…」
「それに、ナミちゃんは航海士なんでしょ?ナミちゃんが言うなら大丈夫じゃない?」
詰め寄るように、純粋に問いかけて来るキイに思わずウソップが行き詰ってしまった。隣ではルフィが「不思議山か!」とはしゃいでいる。
「アンタ話がわかるわね、キイって言ったっけ?」
「いやぁ、わたし船の知識なんて皆無だからさー。航海士さんに任せるのが一番かなーと」
「さっすがキイちゃん!レディ達の言うとおりだぜ!!」
「…まぁそれはともかく、」キイを含めた三人が意気投合しするのを遮り、ゾロは説明の続きを促した。
「だいたいなんでわざわざ“入口”へ向かう必要があるんだ?」
「南から下ればどっからでも入れるんじゃねぇのか?」ゾロがそう聞けば「それは違うぞ!」とルフィは言う。
「そう、わけがあんのよ」
「入口から入ったほうが気持ちいいだろ!」
「違う!」
興奮ながらに言ったルフィを迷わずナミが殴る。船長何だからそのくらい知っているかと思えば全くそういうわけじゃなかった。
そのとき、ウソップが窓を見て慌てだした。何でも突然嵐が止んだらしい。室内から飛び出ると、確かにさっきまでの豪雨が嘘のようだ。
キイは「ん?」と首をかしげる。止んだことに越したことは無いが、いくらなんでも不自然すぎる。
「しまった…“凪の帯(カームベルト)”に入っちゃった…」
そういったナミの行動はすばやくて、全員に先ほどの嵐に戻れと支持を出した。
「せっかくこんな晴れてんのに」
「じゃあ説明してあげるわよ!」
“凪の帯”は二本の海域に存在し、その間に挟まれているのが“偉大なる航路”の海域。名の通り風の無い海域。
「要するこの海は…」
そのとき、船がグラリと揺れた。海に地震が起こるわけもなく――。
ザバ・・・
「「「・・・・・・・」」」
彼らの船は、巨大な海獣たちの上に、
海獣の鼻の頭にいた…。
「海王類の………巣なの…大型のね」
とりあえずキイは、ナミと同じく柱にしがみつくことにした。
(エンド・エンド・エンド)
@さっそく心が折れそうです/(^q^)\
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