――ローグタウン。別名"始まりと終わりの町"

海賊王ゴールド・D・ロジャー生まれ、そして処刑された町、
海賊王が、死んだ町。



――ざり、ブーツと砂がこすれる音。それはこの賑やか町の住民達によってそれは当たり前のようにかき消された。白猟のスモーカーは真っ白い短髪を軽くかいてから目の前にいる、死刑台広場のど真ん中に刀を抱えて座る人間に近づいた。

「キイ」

名前を呼ばれた人間は目の前の死刑台を前に、彼を振り返ることはなかった。

「キイ」

スモーカーは声を大きめにもう一度読んだ。しかし反応はなかった。

「キスライト」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・」

バシッ

「あ痛ぃっ」

スモーカーが思いきり頭を叩けば、女のそう高くない、悲鳴に聞こえない悲鳴が聞こえた。叩かれた衝撃でキャップが舞い、中から派ね気味の真っ赤な髪が滑り落ちた。
それはスモーカーとはまた違う意味で目立っている。

「痛いよスモーカーくん」

「五月蠅え、こんな所で寝てるてめぇが悪い」

「いーじゃんココ来るとなんか寝ちゃうんだからってか寝てるってわかってて普通に起こしてくれないとかたち悪いよ!」

「じゃあ来るな。道のど真ん中で寝てるてめぇの神経もどうかしてるぜ」

そんなことより、と、落ちたキャップを拾いキイの頭に無造作にかぶせたスモーカーは、懐から紙を取り出し彼女に渡した。

「手続き済んだからさっさと継承金取りに来い」

「えーどうせならスモーカーくん持ってきてくれればいいのに」

「お前が取りに来ないならこの町の管理者、つまりおれが没収することになってる。おかげでおれは楽出来るし出世出来る、オマケに煙草代も浮くから別に構わないがな」

「うわズルーこのケムリンめ。煙草の吸いすぎで肺ガンになっちまえ!」

「ほう、それはこのおれに喧嘩売ってるととっていいんだな?」

「あ、ウソウソ。
別に煙のまま風に飛ばされるアホな終幕閉じればいいとか思ってないからいたたたたたた!」

アイアンクローを喰らわすスモーカーと、悲鳴をあげながらも彼の腕をペシペシ叩いて必死に降参の意を示すキイだったが、聞き入られることはなかった。

そのとき、突然遠くから悲鳴があがった。

「海賊だ!」

「助けてえ!!」

「誰か海軍呼べ!」

周りの人たちの声を聞くかぎり、どうやら海賊がこの町を攻めてきたらしい。

「ラビット!誰かラビット呼んでくれ!」

その言葉に、その体制のまま、お互いの目が重なった。

「お呼びだぞ」

「大佐こそ」

「丁度いいじゃねえか、雑魚連れてくついでに金取りに来い」

「・・・うえーい」

やっとそのゴツい腕から解放されたキイは、地べたに置いていた刀を手に持ち、しゃがんでからぐっと脚に力を込めた。
刹那、

ドン!!!

スモーカーは数秒前に見えなくなった彼女を遠目で見ていた。

 ダッシュラビット
「脱兎のキイ、ねえ」


(脱兎のごとく)

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