「うっはー――――――――っ!!!」

興奮気味な少年の声は、広場ど真ん中から全体に響き渡った。

「これが海賊王の見た景色っ!!!そして死んだのかー―――っ!!!

そんでキイはどこだー――っ!!」

《コラ君っ!!今すぐそこから降りなさい!!》

それもそのはず。何故なら少年・ルフィは現在、海賊王が死んだ処刑台の上に立っているのだから。

鬼ごっこで見事に捲かれてしまったあの赤毛の兎を手っ取り早く見つけるべく“高い所”を目指した結果がこれである。海賊王が死んだ場所ということで興味があったのもそこへ上った理由かもしれない。己が走りまわって来ると想定し、それを待つため武器屋へ暇を潰しているなど露知らず。
とういかあわや、海賊の勧誘を断り煙に巻くがために鬼ごっこを提案した彼女自身、まさかこんな公共の場で(しかも超有名観光名所で)盛大に自分の名を呼ばれているなんて思いもしないだろう。

思わぬ暴挙(?)をふるう“イタズラ小僧”に警官は慌てて注意するも、当の本人は「なんで?」と本気で聞いてきた。天然なのかただの馬鹿なのか、まわりの人々からどっと笑いが広がった。

《そこは世界政府の管理下にある特別死刑台なのだ!!!》

「なーそれよりキイ知らねェか?」

《は?キイ!?誰だか知らないが、今すぐそこから……!!!》

ゴッ!!

「まあそうカタいこと言わなくてもいいじゃない、おまわりさん」

しかし、突如響いた生々しい轟音と共に倒れた警官によって、そのざわめきは笑いから悲鳴へと早変わりした。

「探したよルフィ…!!久しぶりだね」

悲鳴の渦中にいたのは、警官を襲ったであろう棍棒を肩に背負った、マントを纏うファーのハットを被る女だった。
そして女は超絶に美しかった。
整った顔に輝く肌理(きめ)細やかな白い肌。紅で赤く染められた口元が緩くつり上がれば、大人の女性を盛大に醸し出す。
今しがた警官を血まみれにした張本人だというのに彼女を見た男も女も、ルフィ以外広場全員の目がハートになり、彼女を魅了した。

そんな女はルフィを知ってると言う。対するルフィ自身は彼女が記憶の中には存在していない。ただでさえ顔を覚えるのが苦手な男だが、どんな理由であれ、ここまでの美女を忘れるわけも無い。(目をハートにするまででは無いにしろ、特に女性の魅力に疎いルフィが、だ。)

「おれはお前みてェな美女知らねェぞ。誰だおまえ」

疑問に疑問は重なり単刀直入に聞くが、女は聞いているのかいないのか。

「アタシは決して忘れない。…あんたはこのアタシの美貌を初めてぶった男だから」

「え!?おれがぶった!?」
 ・・・
「あの時のあんたの激しい拳……」

どよどよと観客と化した広場がまたもざわめいた。ルフィも当然覚えがないため、驚くしかない。
しかし、ルフィに暴力を振るわれたらしい女は怒るでもなく悲しむでもなく、自身の頬に手を当て、まさに“うっとり”として言うのだ。

「感じたわ」

彼らが女のその顔に“感じた”のは言うまでもない。

「あんた達っ。この海で一番美しいものは何だい!?」

「「「あなたです!!!」」」

女が腕を広げて問えば、観客全員がハートつきで即座に答えた。それに満足気な女は己にひざまずかない男はいない、そして強い男が好きだとルフィに言った。

「あんたはアタシのものになるのよルフィ」

強い男、ルフィはというと。

「うるせェ。いやだ。お前誰だ。キイどこだ。」

「まだわかんないのかいっ!?ていうかキイこそ誰だい!!」

今のルフィは美女よりキイだった。

自覚こそ無いにしろ、勧誘されただけの男によって巻き込まれ続けるキイが哀れで仕方が無い。運がよかったとすれば、名を出したところで美女がキイを“女”だとわかっていないことだろう。

その時、憤慨する女の目の前に突如現れたのは警官隊。ついでにルフィにも死刑台から降りるよう命令するが、女は至って余裕だ。

「あらアタシを捕まえるって?」

その余裕の笑みでさえも女を際立たせる道具でしかない。警官は目をハートにしつつも泣く泣く女を包囲する。
当たり前だ。女は警官の一人を無情に殴り倒したのだから。美女だろうがなんだろうが、やっていいいことの度を超えている。

瞬間。

「ハデに死ねェーっ!!!」

「うわあああっ!!!」「爆弾テロだァ!!!」

噴水が爆発した。

そのまま噴水は警官隊を襲い、近くにいた美女に勢いよく突進していくではないか。
ぶつかる―――誰もがそう核心した。

実際に、当たったのだ。なのに。



――スリップ!!

噴水が美女を通りすぎて、壁に直撃した。否。
・・・・・・・・・・・・
噴水が美女の身体を滑った。

美女は呆れつつ噴水を爆破させた本人を否めるが、マントに全身を包んだ男は言う。

「ハデにすまん。だがまァそのスベスベの肌は当然無傷なんだ、気にするな

麗しきレディー・アルビダよ!!」

美女・アルビダは悪魔の実の一種“スベスベの実”を食し、以前己を敗ったルフィを探すべく、ある男と手を組んだと言う。

「笑いあり!!涙あり!!友情ありの小さなバギーの大冒険!!!
だけどもバギーはがんばって…何言わすんじゃコラァ!!!」

――その男こそ、バラバラの実を食した“バラバラ人間”こと“道化のバギー”である。

「なんだバギーか………」

「よーしフザケんな!!!相変わらずいい度胸だなこのスットンキョーが!!!」

ルフィにとって対したことではない。だがこれによってようやく民衆が自分達の危機感を感じ取った。何しろ海賊が現れたのだから。


―――全てはとんとん拍子に進んでしまった。

広場の民衆はバギー一味に包囲され、ルフィはいつの間にやら背後に現れたバギー一味の幹部、カバジによって拘束されてしまった。

「これからてめェの“公開処刑”を始める!!!
ぎゃははははは光栄だろう海賊王と同じ死に場所だ!!!」



―――そして、それを境に海軍は出回り、彼女の友人と、悪友である“化物”は動く。

己の足にぶつかってしまい潰れてしまったアイスの金をその子供に渡しつつ、遅れてきた部下であり彼女の友人である女を叱り付ける。
そのころには麦わら一味も合流しており、肝心のわれらが船長を互いに問う。

優秀な航海士は処刑台のことを思い出し、狙撃手はそれならこの辺りだと仲間に言う。

そしてまさにその処刑台に、麦わら一味の船長はいた。

彼は今――――――







「長居しすぎちゃった…さすがに諦めたかなぁ。って、あれ。なんか騒がしい……

ん…?ルフィ?何して……
















…………あれ!?なんか殺されかけてる!?」



(その頃彼は…)

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