見上げた先には、暗い空。これらが囲う、対照的に光り輝く空間。目の前には、真っ白い犬。
もしかしたら、これを照らしているのは彼じゃないかと。



壱・昔々あるところに、天の神様と地の神様がおりました。



夢かと思った。でも夢じゃないと確信していた。死んだかと、

「思ったんだけど、なぁ」

「て、てめぇ!一体何モンでィ!?」

白い犬の頭の上で、ぴょんこぴょんこと跳ねる緑の光るモノ(とりあえず妖精としよう。小さいせいか緑の光が強いせいか、その姿は影しか見えない。)を見ながらポリポリと頭を掻いてみた。感触はある。これも夢なのだろうか。其れにしてはいやにモサモサした…

「…おお、」

モサモサしてる筈だ。自身の真っ黒い髪が、異常なほど伸びているのだから。道理で前が見えないと思ったら、自身の伸びに伸びた前髪だったのだと気づく。そして、

「…おおぉ」

いやに体が涼しい筈だ。自身が素っ裸なのだから。ロングヘアーなんて次元じゃない、まるで伸びた髪がその白い肌を隠すかのようだ。

「(…ん?白い?)ぶっ…」

ばふっ、

ワンワン!と元気な鳴き声(いや、吠え声?)と共に押し倒された体。考えごとに夢中だった彼女に待ちきれないと白い犬が飛びついた。顔を思う存分ベロベロと舐められ、巻き込まれた髪も含めてあっという間にベトベトだ。オマケに彼の爪が肌に食い込み少しだけ痛い。

「ちょ、くすぐっ…やめ、」

「なんだいなんだい毛むくじゃらァ!お前この姉ちゃんのこと知ってんのかァ?まさか、この姉ちゃんがそうだってのかィ?ああもう結局お前ら何モンなんだってんだ!」

「や、全くの初対面だしわたしが知りたいくらいですが」

ぷおーっと赤く変色した光に、冷静に声をかけた。我ながら落ち着いた対応だと褒めたい程に。何故自分は今知らない無い場所にいて、しかも素っ裸で、髪が異常に伸びてて、しかも土の中で犬(?)に発掘されたのか。脳内のスペックが当にぶっちぎってむしろ冷静な自分に拍手を送ってやりたい。

「そんなもんオイラだっておんなじだィ!外は真っ暗だし、毛むくじゃらが穴掘ったら姉ちゃんが土ん中這い出てくるし!オイラが昼寝してる間に一体何があったんだよォ!?」

「這い出てきたっておい」

ずいぶんな言い方だと思いながら、実際そうなのかもしれないと思い直した。まず、あの時からの記憶が全くというほど無い。これからどうしよう。少女がそう思った瞬間、視界が桃色に染まった。「ぶっ」顔から体全体を覆い被さったそれは、この世の物とは思えないくらい美しい布だった。

「わ…、」

「とりあえずアンタはそれ羽織りなァ。サクヤの姉ちゃんの布だぜィ。
“土より目覚める彼の方”なんてアンタしかいねぇだろ?姉ちゃんが渡してくれってよ!」

「まぁオイラはその格好でも問題ないけどなァ!プフフフフ!」

なんて嬉しそうな妖精の笑い声。確かに、いくら髪で隠れてても素っ裸には変わりない。生憎その場にいるのが妖精(?)と犬(?)の為、そう問題はなさそうだが。(この妖精もどきは男の子のようだがまぁ置いておこう。)

「ありがとう妖精くん、あと、わんわんお。君らは…」

「オイラは妖精くんじゃねぇ!全国行脚の旅絵師、イッスンさまだい!あとコイツは犬じゃなくて狼な。アマテラスって名前らしいぜィ」

ワン!とまた一吠えした犬、もとい狼のアマテラスは嬉しそうに、千切れんばかりに尻尾を振った。そこで、初めて少女の名前を知る。

「わたしやまと。よろしく、イッスン、アマテラス。」

「ヤマト?また随分凛々しい名前だなァ?」

「まぁオイラの名前も凛々しいけどな!」そう意気込むイッスンにはは、と笑いながら、貰った布を申し訳程度に包まれて(土で汚れた体でこんな綺麗な布を汚してもいいのだろうかと怖じ気づいた結果である。)立ち上がって、

「っおろ?」

ぐらり、と揺れた。何がって、視界が。再び土に触れると思ったらアマテラスがその大きな体でクッションのようになってくれた。

「ヤマトの姉ちゃん!?」

「あ、ありがとう…大丈、うわっ」

「わふっ」

「へ?うひゃ、?」

その時、アマテラスが少女ヤマトの羽織る布を引っ張り、わざとバランスを崩さした。当然倒れる形になったが先ほどとは違う、ヤマトがアマテラスの背に跨るようになった。

「え、あ、重たいよぉ?」

「コイツが勝手にやってんだから気にすんなィ!それにアンタ見るからに軽そうだしなァ」

「ま、まじか。スゴいなぁ君」

戸惑い混じりに誉めれば、アマテラスはフーンッと意気込む。当然だと胸を張っているようにも見えた。そんなアマテラスに驚き半分、感動半分(狼に乗るなんて生まれて初めてな為、仕方ない。)でフワフワな真っ白い毛を触っていると、アマテラスの頭の上にいたイッスンが怪訝に言う。

「ホントに大丈夫かよォ?アンタ随分ほっせぇもんなぁ、倒れるのも無理ねぇってこった。まさかホントに冬眠でもしてたんじゃねぇのかァ?」

「あー…はは、どうだろう…」

『わたしの肌は、こんなにも白かっただろうか?』以前の地肌はもう少し色黒だったはずで、体だってもう少し脂肪やら筋肉やらあったはずで、

まるで、何日も飲まず食わず、何日も日の下にあたらず、それこそ土の中で仮死状態だったような。

「………」



有り得なく、無いかも知れない。




@ここ掘れワンワン!宝物が埋まってる!



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