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「…はあ、やっぱりすごいねえ」
柵によって出口を塞がれていた洞窟は、手に入れたアマテラスの一閃によりズッパリと切り捨てられた。
再びアマテラスの背に跨り坂道を駆け下りながら、小さくなっていく洞窟のあった場所を見据えて感心する。
「当ったり前だィ!断神の一閃は何でも切り裂く筆神サマだからなァ!」
「ほうー。・・・で、もともとはサクヤ姫?が神木村とやらを桃の中に守ってくれて、それを切るためにここに探索に来たってことでいいのかな」
「おうよ!コレであの実も一発で切れるぜェ!」
「・・・」
イッスンの話を聞いている最中。ヤマトの思考は違うところへ向かっていた。
――やっぱり、生まれ変わりって言うくらいなら、死んじゃったのかなあ私。
ここが黄泉の国なら死んだことも納得もいったけど、生まれ変わった先が神サマて。
小人は出てくるし、神サマを馬にしてるし。
――ああ、本当に夢のようだ。
――夢なら、どんなによかったか。
彼女の思考はだんだん暗くなっていく。それこそ表情には表れないが、その感情は“不”のものには違いなかった。まるでそれが外に雪崩れ出てくるように、周りが、黒い何かが、ジワリと空気を焦がし――
「!」
赤黒い何かに囲まれた。
言葉には表現しづらい、なんと言えばいいか、そう。とにかくそれは重々しく、ドロドロした空気。近づけばそれに溶かされてしまうかと思うほどの、漫画や小説で言う“邪悪”なオーラが言いえて妙だろうか。それが突如アマテラスたちの周りを取り囲み閉じ込めたのだ。
そして、突如現れたのは人間では無かった。動いているので生き物ということはわかる。いや、この際生き物なのかも怪しい。
「な…何だいこいつら急に現れやがってェ!」
もしかしてイッスンの言ってたこれが妖怪と言うやつなのだろうか。
「と、とにかく説明は後回しだィ!ヤマト姉は下がってなァ!!」
アマ公!イッスンが呼びかければアマテラスはヤマトを地面において端に寄らせる。ヤマトの安全を確保したところで、爆ぜるかのようにその身を跳ねた。
「・・・・!」
またすごいと思った。
イッスン曰くアマテラスの背中の神器によって敵が一掃されていく。
そして手に入れた断神の一閃により敵が真っ二つになる。
またカッコいいと思った。
なんて、すごい。なんて眩しい。
泣きそうになる。
――どうしてわたしが神サマなのだろう。
アマテラスのような力が、本当にわたしにあるのだろうか。
「ヤマト姉危ねェ!」
イッスンの声に気付けば、瀕死らしい妖怪がこぼれるかのようにアマテラスの視界からはずれ、変わりにヤマトへとその牙を向けた。
こちらに恐ろしい形相で近づいてくるそれに、身体が金縛りのように動かなかった。
また――、死ぬ?
ざん!!!
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