ざん!!


「ヤマト姉ェ・・・!?」

は、は…。

荒い息が少女の口から忙しなく吐き出される。心臓がゾクゾク、ドクドクと高鳴った。
死ぬ。と思った。また死にたくないと、

あの暗闇はもう、イヤだった。





「…!!?は、へ…」

敵が、切れた。

アマテラスは何もしていない。それは確実にヤマトから発せられたもの。
彼女自身の、力。

そしてアマテラスたちも呆然としていて、その間に仲間が斬られたことに気付いた妖怪達は警戒の念をヤマトへと向けた。

「あ!」

またヤマトに飛び出した妖怪をアマテラスは一匹仕留め、しかしもう一匹は逃してしまう。自身の手を不思議そうに眺めている彼女の元にその妖怪が現れ、そして襲い掛かった。

「!!う、わ、たた!」

「!!?」

悲鳴なのかよくわからない声を出しつつ難なくよけるヤマトにアマテラスたちはまた驚いた。
そんな彼らに気付かないヤマトは軽快なステップを取るかのように攻撃を避け、いつの間にか妖怪の後ろを取る。


――斬(ザン)!


その業は正しく断神・一閃。

妖怪は全員倒したらしい、周りの不のオーラは消え去り先ほどの神秘的な風景に戻っていた。
アマテラスたちが呆然としている間、手をグッパと開き閉じして自身の動きを確かめるかのようだった。

「だ、大丈夫かよヤマト姉ェ!!」

我に返ったイッスンたちはヤマトに駆け寄った。それに気付きイッスンたちのほうを見る。その表情は意外にも冷静で、「おー」といつもの呆けた顔で安否の返事をした。

「ヤマト姉…い、今のって…」

「えと、うん。一応喧嘩というか、護身術は心得ているので…」

えへへ、と。ふにゃりと笑ってヤマトは言う。「要領はわかったから」と。

「要領?」

「ウン。多分ね。何だろう、一閃っつったかな。あれがなんか、腕から出る感じ」

うん。うん。と自分でも確かめるように頷くのを見て、イッスンは「そうか…!」と閃いた。

「わかったぜィ!やっぱりヤマト姉は、“ヤマト大神”なんだァ!」

「…?どゆこと?」

?を浮かべて同じ方向に首を傾げる一人と一匹に、イッスンは「だからよぅ!」と若干興奮気味にまたアマテラスの頭を飛び跳ねる。

「ヤマト姉は“地”母だから、自分の身体に筆業を宿らせてるんだよォ!“土”であり“大地”が花咲かすのと同じことだィ。アマ公が筆神を“土台に放つ”なら、“土台”のヤマト姉は筆神を“土台(自分)に咲かせてる”ってことだァ!」

「・・・・・・・・・・」

「……全く理解出来てねェって顔だなァお前ら…。まぁいいや!ヤマト姉もやり方は自分で理解できたんだろィ?」

「え?うん」

「ならこれからはヤマト姉も筆しらべを出せるじゃねェか!それもヤマト姉だけの業をよ!」

「・・・私だけの」

無意識で呟いたそれは、ほっとしたような、安心したようなものだった。

「さぁ、妖怪どもで時間を食っちまった。早く戻ろうぜェ!村が待ってる、なんてよォ!」

意気揚々とするイッスンは、案外勉強好きというか、物知り好きなんだなぁと発覚した気がする。そして、神サマが好きなんだなぁとも思った。

「よかった。」

――わたし、役にたってるよね?


それは、内に居る“彼女”の言葉。



「…暗いなあ。」

神秘的な土地の出口である幹の穴から出てくれば、真っ暗な世界に逆戻りだった。
ゾクリとしたものが背中から沸き立ち、無意識に腕を組み摩る。
上を見上げれば、アレがイッスンの言っていた実だろう。

大きな桃の実が生っている。

アマテラスも同様に上を見上げ、そのふでを一振りした。

斬!桃が落ちて、桃太郎が生まれる瞬間のように、パカリと二つに割れた。


「う、わ・・・・」

緑が生い茂り、花が咲き、透き通った水が溢れ出す。
暗い暗い地面に、文字通り村が溢れ出した。


後に“神卸ろし”と呼ばれることになる。

そして、彼女の力がまた一つ蘇る。




@もっとわかりやすく出来ればいいのですが、わたしの説明力じゃこれが限界っす…すいません…。



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