ダン

「っ!」

突きつけられ、背中に鋭い痛みが走った。その衝撃で眼鏡が舞う。痛みに耐えながらも周りを見渡す、誰もいる気配がない。
土管に隠れているのか、見つからないで、そんな思いがつのるばかりで。

「よそ見してんじゃねぇよ佐々木クン」

ガンと軽く顔を蹴られる。恐る恐る顔を上げると、ニヤニヤ笑う先輩達。

「なぁ、佐々木」

しゃがんで視線を合わせた先輩の次の言葉は、暴言とは全く違うものだった。

「助けてやろっか?」

「…え」

予想外の言葉だった。
名倉では無く、細身だがガッチリしているもう一人の先輩、堂本だ。

「チャンスやるっつってんだよ」

「チャンス…?」

「昨日のあの白髪女、お前の女か?まぁどっちでもいいけどよ、あの女ここに連れてこい」

「!」

「電話でも直接でもいい。おれはどっちかっつーとお前よりあの女に腹ァたってんだ。
ここに読んで ボコらせてくれりゃあお前は見逃してやるよ」

高橋さんを、ここに………

「逃げることしか能がないなお前なら、そんくらい出来るだろ?」

「………」

そうだ。

ボクは根暗でヘタレで弱虫なんだ。逃げることしかできない。
高橋さんを呼べば、
高橋さんを身代わりにすれば、ボクは殴られなくてすむ。

ボクは、弱いから。


――弱くないんじゃないの


「……………ごめんなさい」

「…あ?」

俯いたて顔は見えないが、堂本の声が低くなるのを感じた。それでも啓介は止めなかった。

(……………弱い、のに。)

「ごめんなさい…

ボクは、

…呼びた、く、…ない、です」

一瞬、息が出来なくなった。
鳩尾を思いきり蹴られたのだ。あまりの衝撃に吐き気が啓介を襲った。

「かっ…!げほっ!」

「お前…本っ気でバカだなぁオイ」

横倒れになった啓介の髪を掴み、顔を無理やり上げさせた。

「ネクラがでしゃばると…こうなるんだよっ!!」

「ヴッ!!」

固い音と共に叩きつけられるは頭。軽く切れたらしい、右のこめかみがじくじくした。

その時、

「にゃあ」

「!」

「?んだ猫かよ」

知っている鳴き声がした。土管の端から出てきたのは、明らかにチビ。注意が、啓介からチビへと向かった。そしてチビは、啓介のもとへと近づいて来る。

「にぁぁお」

「なんだ?なんでこっち来んだ?」

「俺が知るかよ」

「どうするよコイツ」

「だから俺が知るかって

邪魔なら蹴飛ばせ」

「!!そんっ…」

「お前は黙れっての」

ガン

また、蹴られる。
迫る足、近づくチビ。

「カハッ…や、やめ…!」

「だいたい俺犬派なんだよ。

どっか行ってろ!」


足が、


来―――――





「やめろっ!」

 ×back

しおり
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -