(マサハルがジュカイン(尚今回は擬人化中)、ブンタがヌマクロー、アカヤがワカシャモです)
(「」:人、『』:ポケモンです、マサハル贔屓?)
(昔書いていた連載が元ネタです)

『ウッッッマ』

遠くまで広がっている青い空ともくもくと上に伸びる白い雲は、如何にも夏のそれだ。ギラギラと照りつける太陽が反射して、海面は眩しいくらいで。
潮風を切って海の上を走るアクア号に、私達は乗っていた。


「本当?美味しい?」


初めて見るそれに一番最初に興味を示したのはブンタだった。『何あれ』と指を差した先にあったのは、恐らくほとんどの場所で夏にしか食べられないデザートである、かき氷だった。

『美っ味い、つーか練乳が最高!』
「わかるわかる、練乳かけると美味しいんだよねえ」
『これ氷なんだろい?元はただの水だなんて信じらんねーくらい美味いな』

そう言っていちごシロップの上から練乳をたっぷりかけて貰ったかき氷を掬い、ブンタは再びかき氷を頬張る。甘いものが大好きなブンタだから、このままもう一つ食べたいと言われそうな気もするくらい。


「アカヤは?どう?」


ベンチに座る私から見て、ブンタの奥に座るアカヤに声を掛ける。しかし私の声に反応して振り返ったアカヤは、不機嫌そうに眉を顰めていた。


『…美味いっすよ』


そう呟き、アチャモの時とは違ってちゃんと形になった手で、上手にスプーンを使い黄色に染まったかき氷を掬いあげる。だけど、アカヤの元々とんがっている嘴が、今は更にとんがって見えるような気がする。

先程、船の甲板で売っていたかき氷を買った私達。何処で食べようかと周りを見回した所、日陰になっているベンチを見つけたのだけれど。


『でも、なつこさんの隣りで食った方が絶対もっと美味い!』


キッと睨み付けてくるアカヤの視線は、私ではなく、私の隣りに座るブンタとマサハルに向けられた。
いざ、ベンチに座ろうとなった時。私と半分こする前提でかき氷を買ったマサハルが私の左に、ほのおタイプで体温が高いアカヤと隣りに座ったら更に暑くなるという理由で、右にブンタ、アカヤと四人で並んで座ることになっていた。

『仕方ねーだろい、お前が熱すぎんだから』
『じゃあ冷房効いたとこで食べればいいじゃないすか!』
『あー暑い暑い、お前怒ると熱発すんだから怒んなって』

『そんな熱いとかき氷ソッコーで溶けるぞ』、そう言ってブンタはシャクシャクと音を立ててかき氷を混ぜる。しかしブンタの言うことは最もで、太陽からの日差しと共にアカヤからこちらに向かってくる熱気がものすごい。隣りに座るブンタが水タイプだからこそ、その程度の対応で済んでいるのだと思う。
ただ、このままではもっと怒ってしまいそうなアカヤを宥めようと、私はアカヤの頭に手を伸ばした。


「アカヤは冬場、ずっとなつこにくっつかれとったじゃろ」
『…あっ!』


しかしその手は、アカヤに届くことは無かった。それどころか、左に座っているマサハルが私の肩を抱き寄せたとこにより、私はマサハルの身体に自分の身体を預ける形になってしまった。


「わわっ」


体勢を崩しかけた私は、慌ててかき氷を持つ手に力を入れる。かき氷が安定したのを確認してから、危ないよと言おうとマサハルの方を見上げた私。だけど目の前でアカヤを見るマサハルの、まだ見慣れない人型のマサハルの綺麗な顔が思いの外近くにあって、その言葉は何処かへ引っ込んでしまった。


『のう?』


私の方を見ると、マサハルはそう言って口の端をゆっくり上げる。不覚すぎるけれど、その距離の近さに思わず胸が高鳴る。


『あー!ちょちょちょ!何してんすか離れて!』


ぴょん!とベンチから飛び降りたアカヤが私達の目の前までやってくる。『マサハルお前、煽んなよ』と呆れたようなブンタの声も聞こえてきた。

「嫌じゃ」
『だめっす!』
「なんで」
『…か、かえんほうしゃしますよ!』
「なつこに当たるき、それはやめんしゃい」
『……』

何も言えなくなり、ムスッとほっぺを膨らますアカヤ。口を開けたら本当にかえんほうしゃが出てきそうで、私は身体を起こして再びアカヤに手を伸ばす。


「だめ」


でもこの手もアカヤには届かず、むしろせっかく起こした身体を引き寄せられ、今度は後ろから抱き締められる形になってしまった。


『な"っ』


声に鳴らない声を上げたアカヤの口から、小さく火の粉が漏れる。しかし今の私は、それ所ではなかった。


「ど、どうしたの」


突然のマサハルの行動に、そう聞くことしか出来ない。同じような体勢に戻り、再びマサハルを見上げる。先程よりも心無しか近い距離な気がするけれど、今はそれ以前に、マサハルの行動のせいで心臓がバクバクと煩い。


「…別に、冬場のこと思い出したらなつこを独り占めしたくなっただけぜよ」


そう言って私へと頬ずりをして、嬉しそうに口元を緩めたマサハル。そしてより一層腕に力を入れたかと思うと「なつこ、かき氷一口ちょうだい」と口を開けてみせる。
目の前で怒るアカヤの事も、恐らくびっくりして目を見開いているであろう私の事も全く気にしていないのだから、驚くべきマイペースだ。


『………俺も』


怒っていたアカヤが、ぽつりと呟いた。


『俺も人型になれば、熱くなくなりますよね?』
「…え、あ、どうだろう」
『……』
「……なる、んじゃないかな」
『ですよね!』

目をパァァと輝かせ、何を思ったのかアカヤは持っていたかき氷を一気に流し込む。私の手にあるかき氷はほぼ固体を保っているから、やはり、アカヤの体温で溶けていたのだろう。…ってか、かき氷を流し込むって、見てるだけで頭が痛くなる気がするのは私だけ?

『プハァ!』と綺麗にかき氷を飲み干したアカヤが、口元をグイッと拭う。


『こんな所でかき氷食ってる場合じゃねーっす!その辺にいるでしょ、トレーナー!一分でも早く進化する為にバトルしましょ!』


目を鋭くさせて既に臨戦態勢のアカヤが、私の左手を掴む。


『お前それ、動機がおかしいだろ』


鼻で笑ったブンタは横でそう言って、それからほとんど無くなっていたかき氷をすぐに食べ終えてベンチから立つ。


『でも俺も、それは面白くねーわ』


そして目線で私の後ろをチラリと見たブンタは、かき氷を持った私の右手を掴む。


「……お前さんら2人で行ってきんしゃい」
『あ?それじゃバトル出来ねーだろい』
「ジェスチャーでバトルしようって伝えればええじゃろ」
『それが出来たら苦労しねーんだっつーの』
「……」
「……」

黙ったマサハルを見ると、目が合ったマサハルが小さくため息をついた。その直後、私を抱き締めていた腕の力が緩んで。


「それじゃあ…」
「待ちんしゃい」


身体を起こそうとした私だったけれど、いきなり力の入った腕のお陰で本日三度目のマサハルへと逆ダイブ。


「一口、ちょうだい」


今度はどうしたのかと疑問に思う私を見下ろすマサハルは、そう言って小さく口を開ける。そんなマサハルが可愛くて、思わず笑いが零れる。一口あげる前に、ふわふわと銀髪の揺れるマサハルの頭を撫でてあげよう。そうしたらきっと、ブンタとアカヤにするのも許してくれるでしょ?

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