昨日の夜準備したリュックには、朝にお母さんが作ってくれたおにぎりも入って準備万端。天気予報も晴れだし、絶好の出発日和だね!

「せっかくウツギ博士の研究に役立てるんだから頑張ってくるのよ」
「もちろん!」
「明後日には帰って来るのね?」
「そうなるかな。ゆっくり行ってくる予定だしね」

キキョウシティに歩いて行くのは初めてだけど、車でならそう遠くはない距離だからゆっくり行ってきたって何日もかかるようなことはないはず。

『チクサと3日も会えないの?』
「んー、実質は明日だけだよ。明後日帰って来たら会えるしね」
『そっか…気を付けてね!』
「うん、ありがとう!」
「アンタどんくさいんだから転んで怪我しないようにね」
「大丈夫だってばー!もう!」
『もしチクサがバトルで怪我して帰って来たら、ミントが3匹に怒るからって言っておいてね!』
「あはは、うん!きっと大丈夫…なはず!」
『はずじゃダメだよー!』
「じゃあ大丈夫!」

んー、やっぱりミントは可愛い!私やお母さんのことになるといつも必死になるミント。私が3匹のトレーナーになったことを言ったら最初は少し拗ねちゃったけど…(まあそれも可愛いんだけどね!)ミントを抱き上げてぎゅうっと抱きしめてから、私はよし!と声を上げた。

「行ってきます!」
「はい、行ってらっしゃい」
『行ってらっしゃーい!』

外はやっぱり快晴。ぐぐーっと背伸びして気持ちいい空気を吸い込む。お母さんもミントもたかだか3日出るだけなのに、心配しすぎだよね?私もう18歳なのにさ!…とは言っても、ヨシノシティまでは野生のポケモンが結構出てくるらしいから緊張しているところもあったり。

少し歩いて行くと研究所が見えてきた。…と同時に、博士と3匹が遊んでいるところが見えた。私は思わず早足になる。

『あっ!チクサさあん!』

ブンタと追いかけっこをしていたのか、ブンタに追われるように走っていたアカヤが私に気づいてこっちへ走ってきた。

「お、アカヤ元気だね〜」
『久しぶりに外出たんすよ!だから気持ちよくて!』
「そうだね、今日いい天気だし」
『そうな』
『チクサおはよ、久しぶりだな』
「おはよう、ブンタも元気そうだね」
『まあな〜…はいタッチアカヤ鬼だかんな!』
『い゛』
「ん?」

アカヤの羽にポンと触れるとブンタは風のようにどこかへ走って行った。

『……』
「アカヤ?」
『やっぱ嫌っす!』
「は?」

そう言ってブンタが走って行った方向に一目散に走って行くアカヤ。ああ、追いかけっこに負けるのが“嫌っす!”なわけね。

「おはようチクサちゃん」
「あ、博士おはようございます!…キモリもおはよう!」
『おはようさん』
「綺麗に晴れてよかったね」
「はい!せっかくだから気持ち良く歩いて行きたいですし」
「うん、ブンタとアカヤも外に出てからずっと遊びっぱなしでね。…こっちにきて外に出してあげられなかったからなあ」

申し訳ないことをした、とでも言うような顔をする博士。

「博士も研究員さんも忙しいんですし、しょうがないですよ」
「僕達はそうでも、この子達にはそんなことわからないだろう?だから、今回チクサちゃんが手伝いとして連れて行ってくれて本当によかった」

そう言って博士は3匹を見て笑った。やっぱり博士はいい人だ。ちゃんとポケモンのことを考えてるもん。

「私もよかったです。こんなこと、自分でしようなんて思いませんでしたし」
「そうかい?そう言ってくれると僕も助かるよ」
『……』
「マサハル?どしたの?」
『いや、何でもなか』

しゃがんでマサハルに声をかける。ぎゅっと口を結んで何かを耐えるようにしたマサハル。心なしか瞬きも多い。…あ、今日も寝てないのかな?

「さ、ブンタ!アカヤ!そろそろ出発するよー!」

博士が走り回ってる2匹に声をかけた。さっきと形勢逆転してるみたいで、アカヤがブンタに追いかけられながらこっちへ走ってくる。

『チクサさん!俺のこと受け止めて!』
「え?」

そう言ったアカヤは私の胸に飛び込むようにぴょんとジャンプした。私は慌てて抱き止める。

『は、アカヤおま!』
『へっへーん、俺の勝ち!』
『…ま、いいわ。もう出発するっぽいし』
『お前等よく動くのう』
『むしろマサハルが動かなすぎんの。体動かしておかねえと、バトルのとき困んだろ?』
『そうっすよ!』
『いいからお前はチクサから降りろ!』
『へ〜い』



「じゃあもう一回モンスターボールの使い方を確認するよ」

ボールの真ん中を押して大きくしたモンスターボールをブンタに向ける。

「ブンタ!戻れ!」

赤い光に包まれたブンタは、そのままモンスターボールに収まった。

「出すときはボールを投げても開けてもいいんですよね」
「うん」

この場面で投げるのはちょっとなあ…。私はそう判断して、手に収めたままボールを開けてブンタを外に出す。

「よし、問題ないね」
「はい!ブンタもいつもありがとね」
『おう』
「えっと…歩いてるときみんなどうする?」
『俺外!』

一番に名乗りを挙げたのはアカヤ。確かボールに入るのが嫌いなんだっけ…。

「わかった。マサハルとブンタは?」
『俺も外〜』
『俺も今日は外で』
「何もみんな出なくてもいいよ?」
『だってアカヤだけじゃ不安だろい?』
『ちょ、何なんすかそれ!』
『天気もええし、ボールの中じゃ暇そうじゃき』
『はい、そういうことだから外な!』

ぶーぶー文句を言っているアカヤをはいはいと宥める2匹。もう、本当に仲がいいんだなあ。

「どうするって?」
「あ、みんな外に出て歩くそうです」
「そっか、それならヨシノシティまでは安心だね」
「はい!でもあの…」
「ん?」
「この子達って一体どれくらい強いんですか?」
「ああ…」

思い出すように目を上に向ける博士。

「僕はまだ話を聞いただけだけど、かなり強いらしい」
「元々…ってことですか?」
「いや、この3匹は野生だったみたいで、そのときに鍛えられたんじゃないかな」
「……」
『まだ行かないんすかー?』
『早く行こうぜい!』
「え、あ、うん!」

ちょっと先に行っていたアカヤとブンタに声をかけられた。マサハルも横に立ってこっちを見ている。

「なんて?」
「早く行こうって…」
「ああ、それもそうだ。すまなかったね」
「いえいえ!私から聞いたことだったので」
「ありがとう。…ブンタマサハルアカヤ!チクサちゃんと仲良くやるんだよー!」

博士はそう少し離れている3匹に声をかけた。3匹もそれぞれがアクションで返す。

「わかってくれたみたいだね」
「はい!」
「それじゃあ、お使いよろしくね」
「任せてください!」

行ってきます!博士にそう言って、3匹のところに向かった。ブンタ、マサハル、アカヤ。仲良し3匹といっちょ頑張りますか!


ドキドキを楽しもう!