夢/とあるわんこの恋模様 | ナノ

息子もきちゃいましたの段


!注意!
前回に引き続き娘と息子も出てきます。
名前固定になっていますので、苦手な方はお気を付け下さい。





「とと様ー」


甘える声を出すお菊ちゃんと、デレェとだらしのない顔を浮かべるハチ…。
廊下に座って楽しそうに遊ぶ二人を見ながら、プラプラと足を動かしていると、隣に座っていた雷蔵がくすくすと笑う。
雷蔵の隣に座っていた三郎が「一緒に遊んできたらどうだ」と笑いながら言ってきたので、「子供じゃないからいい」とそっぽを向いてしまった。
我ながら子供っぽいことをしてしまった…。と思うものの、楽しそうに遊んでいる二人を見るとどうしてももやもやしてしまう。


「楓ははっちゃんが本当に好きなんだな」
「だって兵助…お菊ちゃんのことばっか構ってるんだよ?折角の休みなんだし、私もハチと一緒に遊びたかった…。鍛錬も途中だし」


あのあとすぐに雷蔵たちが帰ってきて、事情を説明する。
摩訶不思議なことなのに四人はすぐに受け入れてくれた。うーん…さすがのんびり学年だけあって、肝が据わってるなぁ…。
勘ちゃんとハチはお菊ちゃんと一緒に中庭で遊び、私と雷蔵、三郎、兵助は廊下に座ってそれを眺めていた。
お菊ちゃんはハチみたいに運動神経が凄くよくって、動物の扱いもあの年齢にしたらかなりよかった。


「だってとと様が教えてくれたんだもん!」


って笑うお菊ちゃんの顔は幸せそうで、やっぱり微妙な心境になる。
私だって犬ぐらいなら扱えるもん…。
とは思ったが、あれはお菊ちゃんの才能だ。元々そういう才能を持っていたのを、ハチが開花させてあげたんだと思う。
そうか、顔や性格は私似でも、才能や技術はハチ似なんだ…。


「よく見ると、目だけは八左ヱ門に似てるよな」


三郎の言葉に全員が頷く。
確かにお菊ちゃんの目だけはハチに似ていた。
強くて鋭く、野生を感じさせる目…。
特に動物を扱うときにそんな目になって、ハッキリとした声で指示を出す。


「だけど暗器は苦手そうだね」


暗器どころか、苦無を持つ手も怪しい。
そこは私に似てないんだ…。
雷蔵と一緒に笑いながら、三郎の淹れてくれたお茶を飲んでいると、背後に何かの気配を感じて、四人で後ろを振り返ると、物静かそうな男の子が立っていた。
兵助と同じくらい細身で、兵助と同じぐらい綺麗な顔をしているイケメンくん…。
忍たまの制服を着ているんだけど、見たことのない顔に私と雷蔵は首を傾げ、三郎と兵助は警戒をした。


「かか…様、でしょうか…?」
「え?」


イケメンくんは私の顔を見たあとそう呟いて、一歩近づいてくる。
すぐに三郎と兵助が私を庇うように目の前に立って、それぞれの武器を構えると、イケメンくんも苦無を取り出し何故か戦闘体勢に入った。


「ちょ、ちょっと待って!今その子、かか様って…!」
「あーっ、兄様(あにさま)だ!」
「お菊…。どうしてお前がこんなところにいるのですか!」


………。
これは…もしかして?
雷蔵と顔を見合わせたあと、「息子?」と聞くと「だと思う」と返ってきた。
お菊ちゃんがイケメンくんに走って抱きついたあと、ハチと勘ちゃんもこっちに戻ってくると、二人も首を傾げる。


「とと様……、私の制服を着て何をされているのですか?」
「はぁ?」


はい、今度は息子くんまで現れたようです。
ハチと勘ちゃんも廊下に座り、イケメンくんもお菊ちゃんを膝に乗せてから座る。
一つ一つの仕草がとても丁寧で、見てて惚れ惚れする…。
現在の状況を解っていないイケメンくんに、摩訶不思議なできごとを説明すると、「そうですか…」と頭を押さえながら何とか飲み込んでくれた。


「現にいつもより幼いかか様がいらっしゃいますもんね…」
「ねぇねぇ、君の名前はなんて言うの?」


頭を抱える仕草さえ格好よくて、自分の息子だと思うとさらに愛しくなって近づくと、顔をほんのり赤く染めてそっぽを向いた。


「かか様…その、あまり近づかないで下さい。恥ずかしいです…」
「はっちゃんの息子だと思えないほど純情さんだねぇ」
「楓に似たんじゃないのか?」
「でも顔が整っているから、可愛く見えるよね?」
「雷蔵、ちょっと発言が危ないから黙っておこうか…」
「おいお前!楓にあんまり近づくんじゃねぇよ!」
「ちょっとハチは黙ってて!ねぇ、名前は?」
「竹谷八千代です」
「八千代くん!」


可愛らしい名前だと言えば、俯いてお礼を言う八千代くん。
可愛い…。イケメンだけどハチに似ているから余計に可愛い!


「あーあ、息子くんいたんだ。しかも息子くん、楓のこと好きっぽいよ」
「どうするのだ、はっちゃん」
「俺の楓に近づきやがって…!」
「嫉妬するのはいいけど、今さっきまで八左ヱ門もお菊ちゃんとあんな感じだったんだよ?」
「下手に邪魔すると確実に楓に怒られるな」
「だってよー!」


八千代くんに未来のことを少しだけ聞いた。
何の仕事しているのか、とかじゃなく、幸せに暮らしているか?とか、どんなとこに住んでいるかとか…。
未来の私たちは山に住んでいるらしく、そこで動物と一緒に暮らしているらしい。
お菊ちゃんは九歳で、忍術学園に入学する気満々!そのために未来のハチがお菊ちゃんを鍛えているらしい。
思った通りお菊ちゃんはハチの素質を継いでおり、動物の扱いが上手なんだって。
反対に八千代くんは私の素質を受け継いでくれているようで、暗器の扱いが得意!
現在忍たま五年生らしく、滅多に実家に帰れないから少し寂しいと甘えてくれた。


「だからっ、楓に抱きつくんじゃねぇよ!俺の息子であろうがそんなの関係なし!抱きつくなら未来の楓にしろ!」
「とと様は相変わらず独占欲が強いのですね。しかし、かか様は嫌がっておられないのでいいのでは?」
「そうだよ。私だって子供たちと仲良くしたいもん!」
「じゃあとと様、わたしとあそんでー!」
「お菊ちゃん…!ああ、勿論だぜ!もっともっと動物の扱い教えてやるっ」
「ほらっ、そうやってお菊ちゃんばっか構ってるじゃん!」
「かか様、かか様には八千代がおります。そうだ、いつもみたいに武器の扱いを教えてください。たまには初心に戻りたいと思います」
「八千代くん…!勿論だよっ、何がいいかな?あ、実践する?」
「お前だって八千代にばっか構ってんじゃねぇか!」
「………ねぇ兵助。未来の竹谷家ってすっごく面倒くさそうだね」
「そうだな。相思相愛なのになんていうか……面倒だ」
「あはは。でも全員が全員のこと好きなのはいいってことじゃない?仲良さそうで何よりだよ」
「見ている分には面白いしな。全員が嫉妬しているってどんな家族だ」


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