夢/とあるわんこの恋模様 | ナノ

お泊りの段


●初日:い組へお泊り●


「今晩、お世話になります!」
「はっちゃんの具合大丈夫?」
「うん、寝れば治るって言ってたよ。あ、布団敷いていい?」
「ああ、敷いてくれ。………昼間は虐めすぎたな」
「だね。しょうがない、今晩だけは楓と一緒に寝ようか!」
「え。俺は無理だぞ」
「何だよ兵助、意識するからダメなんだぞ。こういうのはいつものように気しないのが一番!」
「そうか」
「勘ちゃんと兵助の間に敷いちゃった!」
「…勘右衛門、俺無理。マジで無理」
「もー…。楓、こっちに敷いてよ。で、俺らがこうやって向き変えて………。はい、これで寝転んだまま話せるよ!」
「あ、そうだね!これでいこう!」
「さすが勘右衛門。ところで楓、布団以外に何を持ってきた?」
「えっへへー!二人の為にお菓子と高野豆腐を持ってきましたー!」
「さすが楓、解ってるぅ!」
「さすが楓だ、解ってるな!」

「んで、元気で明るくて素直な子がいいかなっ」
「勘ちゃんって結構……」
「ああ、要望が多いな」
「だって結婚する相手でしょ?じゃあ妥協したくないじゃん?」
「勘右衛門、あまり求めすぎると婚期を逃すぞ」
「そう言う兵助はどんな子が好きなの?」
「あ、それ私も気になる!」
「俺か?俺は…そうだな、まず白いのがいいな」
「兵助は色白さんが好きなんだね」
「兵助からこういった話聞くの初めてだから何だかドキドキする…」
「私も私も!」
「肌はこう豆腐のように滑らかで、できるだけ柔らかいのがいい。そう、豆腐みたいに!そして儚いが、芯のしっかりした人物が好ましいな。豆腐のように!」
「……勘ちゃん…」
「もう兵助は豆腐と結婚すればぁ?」
「何だそれ。できるのか!?」
「できるわけないだろ。あーあ、やっぱ兵助はダメだな。楓はどう?」
「私?私はねー…えーっと……。私自身小さいから、大きな人がいいな!あと面倒見てくれる人!一緒にいて楽しくて、素の自分を出せる人がいい!」
「(それは八左ヱ門のことではないだろうか…)」
「それってはっちゃんのことじゃん。楓、はっちゃん好きなの?」
「か、勘右衛門…。ハッキリ言いすぎだぞ」
「ハチ?あ、そうだね、ハチのこと大好きだよ!でも勘ちゃんも兵助も三郎も雷蔵も大好き!だから皆と結婚したいなぁ!」
「アハハ、俺も楓と結婚したいなー!元気で明るいし、素直だし俺の好みピッタリじゃん!」
「ほんとだ!じゃあ今日から私、勘ちゃんのお嫁さんね!」
「(いいのか、これで…。というか、勘右衛門が本気に見えるのは気のせいだろうか…)」
「あと兵助のお嫁さんにもなる!一緒に豆腐作りしてあげるーっ」
「末永くお願いします」



●二日目:双忍部屋へお泊り●


「今晩、宜しくお願いします」
「あ、待ってたよ楓。どこに布団敷く?」
「二人の間で!前言った双忍サンドしてー」
「…。あの、楓さん…。それだけは勘弁して頂けないでしょうか…?(雷蔵、ごめん。ほんとごめん)」
「兵助と勘右衛門とは向い合って寝たんだって?僕たちもそれにしようよ。(許してほしければ楓の隣で寝ろ)」
「だな!普段話さないことを話そうじゃないか!(そ、それだけは勘弁して下さい…)」
「そうだね!って言いたいとこなんだけど、昨日夜更かししすぎて眠たいの…。だから寝かせて下さい…」
「……じゃあしょうがないね。布団敷くの手伝うよ。(三郎、明日覚えてろよ)」
「(本当に申し訳ありませんでした)」

「左に雷蔵、右に三郎…。あは、最高だね!」
「楓、なんか凄く近くないか?」
「あ、うん。私の布団の上に二人の布団敷いたの。寒いからくっついて寝ないとね!雷蔵、寒くない?」
「僕は大丈夫だよ。でも三郎は冷え症で寒がりだからもっとくっついて寝てあげて」
「雷蔵ぉおお!」
「三郎うるさい」
「よいしょっと…。三郎、寒くない?平気?もっとくっつこうか?」
「ちょ…!(近い近い!私の服を掴むな!あ、いい匂い…。じゃなくて!)ら、雷蔵…!」
「じゃあ僕もちょっと疲れたから先に寝るね。おやすみ」
「おやすみ雷蔵。寒くなったらくっついていいからね!」
「うん、そうさせてもらうよ」
「(雷蔵ぉおおお!もうほんとすみません!当分の間いらないことは口に出さないから!)」
「(僕はもう寝ます。おやすみなさい)」
「うーん…、もしかしてさっきから矢羽音使ってる?」
「えッ!?あ、…いや?(やばい、そんな目で見てこないでほしい…!というか楓はもっと危機感を持つべきだ。八左ヱ門が口うるさくなるのも解った気がしたよ…)」
「そう?じゃあいいや。おやすみー!」
「楓、その…。近いから離れてくれないか?」
「でもあったかいから…。ふふっ、三郎もハチと同じこと言ってる……おやすみ…」
「いや、せめて掴んでる服を離してほしいのだが…」
「……」
「……。(八左ヱ門の気持ちがよく解った。今度は真剣に話を聞いてやろう…)」



●後日●


「いやー、スッキリスッキリ!やっぱ一人で寝るのが一番だよな!」
「八左ヱ門…、お前が凄いことがよぉく解った…。真面目に相談に乗ってやるから、今回みたいなのは止めてくれないか?」
「お、どうした三郎。隈ができてんぞ!ははっ、ちゃんと寝ろよなー!」
「楓のせいで…!楓と雷蔵のせいでっ…!」
「……まぁなんだ。泣くな。あと俺の気持ちを解ってもらえて嬉しいぜ」
「近くて寝れなかったんだ…。それに加え、雷蔵が寝ぼけて楓を抱き締めて寝るんだよ…!それだけならまだしも、楓の衣類を乱すから何度も何度も…!」
「雷蔵は寝相が悪いからな…。どんまい」
「ほんとお前を尊敬したよ。よく我慢できるな」
「伊達に五年間一緒じゃねぇからな!」
「…。逆を言えばヘタレ「楓ッー!今日も三郎がお前と一緒に寝たいらしいぞ!」
「え、ほんと?じゃあ今晩は三人で夜更かししようね!」
「うわあああ!今度こそ雷蔵に殺されてしまう!」
「普段の口の悪さが仇となったな!ざまーみろ!」



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