夢/とある夫婦の日常 | ナノ

それぞれの家庭 その5


各家庭がデパートへ行って、子供が迷子になりました。



●七松家のバヤイ

「かーちゃん、おれはらへった…」
「うん、今さっき朝ご飯食べたよね?」
「にいちゃんにとられた…」
「はい、我が家は弱肉?」
「……ていしょくくいたい!」
「どこで覚えたのよ…。我が家は弱肉強食です。文句があるなら小平太にね」
「ぶー!」
「ところで小平太。今さっきから何してるの?」
「名前っ。あのな、なんか足りんのだ」
「足りない?何が?お酒は買わないよ?」
「やだ!」
「やだじゃない。で、何が足りないの?」
「子供」
「……え?な、七松家全員集合!」
『はーい!』
「えーっと…、ひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ…………」
「な?」
「チビが二匹ほどいない!ワラワラいるから気づかなかった…」
「もしかして迷子か?私が探して来ようか?」
「…。あ、うん、大丈夫。どうせあそこでしょ。はい、皆ー。ちゃんと私について来てねー」

レストラン街。

「ほらいた。こらっ、勝手に動いちゃダメでしょ!」
「母ちゃん、母ちゃん!おれ、これ食いたい!」
「おれこっち!」
「先にごめんなさいでしょ!」
「そうだぞ、お前ら。名前を怒らせたら夕飯食えないぞ」
「「母ちゃんごめんなさい!」」
「よしっ!」

元気が有り余っている七松家の子供たちはいつの間にかいなくなってる。けど、どこに行ってるかすぐに解るので「迷子」というものがない。
もしあったとしても、直感力・視力・嗅覚が人並み以上の小平太が動きまわって探してくれる。子供たちも強いのでケガの心配は一切していない。



●善法寺家のバヤイ

『お呼び出しを申し上げます。善法寺名前さん、旦那さんがお待ちで御座います。一階、サービスカウンターまで起こし下さい』
「えぐっ…。ひっく…っ!名前、名前ー…!どこっ、…どこ行っちゃったんだよぉ…!酷いよ、寂しいよぉ…!」
「あ、あの旦那様…。今、店内放送をかけましたので…」
「ううっ、すみません…ご迷惑おかけします…」
「いえ…。あの、大丈夫ですか?」
「確かに僕が不運なのがいけないよ…。いけないけど、せっかくの休日だよ!?何で名前は僕を置いて行っちゃうのさ!」
「お、落ちついて下さい!」

「―――伊作ッ!」

「留三郎!?え、な、何で…?」
「俺らも家族で遊びに来てんだよ。なんだ、また名前に置いて行かれたのか?」
「…っ留さーん!」
「うおっ!?」
「名前がまた僕を置いて行っちゃった!まだ来たばかりなのにぃ!」
「落ちつけ伊作。あ、すみません、俺こいつの友達です」
「あ……。では、あとはお任せしても?」
「はい。ほら伊作、行くぞ」
「うん…」
「ご迷惑おかけしました」
「いえいえ!(あの人はちょっと頼りないけど、今の人はいい人ね)」

「つか携帯はどうしたんだよ」
「電源切られてる…」
「またか…。でも車の鍵はお前が持ってんだろ?」
「うんっ!あ…」
「どうした?」
「家の鍵は名前が持ってる…。だから多分バスで帰って………」
「お前なぁ…!まだ買い物してねぇんだろ?ともかく名前を探そうぜ。俺も手伝ってやるから」
「ううっ、持つべきものは友達だなぁ…!ありがとう、留三郎!」

迷子になるのは伊作。そして毎度のことなので面倒くさくなって放置している嫁。
いつもは放送かけてもらったあと何分か待っても来てくれなかったら車のとこで待ってる。それから留三郎へ電話かける。留三郎にちょっと依存している伊作を、気に食わないツン全開な嫁。そして気づかない鈍感伊作。悪循環家庭。でも二人とも娘バカ。



●食満家のバヤイ

「―――ッすみません!」
「はい?(あ、今さっきの人だ…)」
「警察呼んで下さいッ!」
「……はい?えっと…、事件でもおき「起きました!俺の可愛い可愛い可愛い娘がいなくなったんです!」
「はぁ…。迷子、でよかったでしょうか?」
「迷子じゃない!これは誘拐だ!なんたって俺の娘は目にいれても痛くねぇぐらい可愛いからな!しかも今日はふりふりの洋服着てんだぜ!?そりゃあ誘拐されて当然だよな!だが、俺の娘を誘拐しようなんざ百万年はえぇんだよ!くそっ、こうしている間にもどこぞの奴に泣かされてるに違いないッ…!」
「……(今さっきはまともな人に見えたのに…)」
「父ちゃんっ、妹見つかったか!?」
「まだだ!こんなに探して見つからねぇんだ…、きっと誘拐に違いねぇ!だから今警察に電話かけてもらってるところだ!」
「だから発信器作れって言ったんだよ!父ちゃんなら作れるだろ!」
「作れる!だが、発信器をつけるとこに悩んでる最中なんだよ!発信器事態を可愛くしてもいい、ぬいぐるみとかな。だが、目立ったらダメだと俺は思う!」
「留三郎はこだわりすぎなんだよ!だからこんなことになったんだろ!」
「うるせぇ!」
「あ、あの…」
「「すみません、警察はまだですか!?」」
「えー…」

「母さん、もう妹が見つかったこと教えてあげないの?」
「今いったら二人ともうるさそうだから。もうちょっと落ちついてからね」
「でも店員さん困ってるよ」
「そうだね…。じゃあちょっとこの子見てて、回収してくる」
「うん。ほら、おいで。お兄ちゃんと手、繋いでよ」
「うんっ」

長男、次男はそれなりにしっかりした子だし、男の子なので迷子になっても大丈夫。長男は泣くかもしれない。でも多分必死に探して、見つけたら拳骨一発。
但し、長女が迷子になったらこの世の終わりのように騒ぎまくる。これを機に発信器を作って、つけるかもしれない。嫁は慣れた様子で見守ってるだけ。



●鉢屋家のバヤイ

「……三郎」
「なんだ」
「あの子がいない」
「…迷子か」
「多分」
「あいつが迷子になるなんて初めてだな」
「だね。どうする?」
「放送かけてもらえばいいだろ」
「…。もっとこう慌てたらどう?」
「それは名前もだろ」
「だって慌てたところで出てくるわけでもないし。冷静に対処するのが一番」
「だろう?じゃ、サービスカウンターへ行くか」

放送をかけてもらったので、二人で大人しく待機中。

「あの子が珍しいね。何か見てたのかな」
「あいつが?そんな子供じゃないぞ、あいつは。クソ生意気なガキだ」
「それは三郎がそう思ってるだけでしょ。あの子ああ見えても可愛いもの好きだよ」
「男の子なのにか」
「趣味は人それぞれってねー。三郎があんまり構ってあげないし」
「そ…れは関係ないだろ。というか、話しかけてもあいつが露骨に嫌な顔するじゃないか」
「それは三郎が大人気ないから」
「はっはっはっは。それは褒め言葉だな」
「もう…。……あ…」
「……父さん、母さん…」
「よかったー、心配してたんだよー!どこにいたの?」
「ちょっと、…見てた…」
「そっか。気づかなかった私たちも悪いけど、見たいなら一声かけてよ。ね?」
「うん…」
「おい」
「……なに」
「三郎」
「解ってる。勝手にいなくなるんじゃない。私のことが嫌いでもそれぐらい伝えろバカ」
「……」
「解ってないじゃん…」
「それと、言うことあるだろ」
「……母さん、ごめんなさい」
「ふふっ、無事ならいいよ。今度からは気をつけようね」
「うん」
「おいっ、私にはないのか」
「ごめんなさい、雷蔵さんによく似た人」
「このガキ…!」
「はいはい、もういいからご飯食べに行こうねー」
「名前、やっぱ私もあいつ嫌いだ」
「三郎は賢いけど鈍感だね」

長男は三郎そっくり。似すぎてお互いが苦手(嫌いに近い)なのであまり会話がない。コミュニケーション不足。
素直になれない長男と、子供への接し方が解らない三郎の間に嫁が懸け橋を作ってあげてる。基本的にとても静かな家庭。でも怒らせると一番怖いかもしれない。







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