おまけの七松家 「ちょ、ちょっと小平太…!こんなとこでキスしないで」 「相変わらず仲良しですね」 「おう!あ、竹谷ならあっちで弁当食べてるぞ」 「そうですか、ありがとうございます七松先輩。それでは…」 八左ヱ門の嫁が身を守るために召喚したのは、七松の嫁、名前だった。 事情を話し、「助けてほしい」と涙ながらに電話で伝えると、名前はすぐに二つ返事をしてくれた。 お弁当を食べても絶対にお腹を空かせているだろうと思い、簡単に作ったお弁当と末っ子を背負って現場へとやってきた。 名前を見つけた小平太は尋常ではないほど喜び、外だと言うのに名前に抱きついて離れない。 そのままの状態でお世話になっている社長に挨拶をして、事務所を貸してもらうことにした。 「何で名前が!?」 「ちょっとね。ところでお弁当作ってきたんだけど、食べる?」 「食べる!」 嬉しそうにがっつき、頬についたご飯を取ってあげて、末っ子を下ろす。 外に遊びに行きたそうにしていたが、出したら絶対に何かを壊したり、迷惑をかけたりするので絶対に開けてあげなかった。 「小平太、昼休憩は休むものだよ」 「ん?ああ、そうだな」 「食休みって言葉もあるんだから、無理に竹谷くんを誘ったりしたらダメだからね」 「解った!」 「……本当に解った?」 「解った!」 「(絶対に解ってない…)当分の間、現場が近いみたいなんで昼休憩には私が来るから」 「っ毎日!?」 「うん(きっと他の人にも迷惑かけてるから、今回ぐらいは見張っとかないと…!)」 八左ヱ門に迷惑をかけていることは知っている。 何度言っても、小平太が止まらないことも知っている。 だから、現場が近い今回ぐらいは八左ヱ門や他の人たちに迷惑かけないよう、名前は頑張ろうと張り切った。 そんな裏事情を知らない小平太は眩いばかりに明るくなってお弁当を持ったまま名前を抱き締める。 「名前がいてくれたらもっと頑張れる!」 「そ、それはよかった…。でも、こういう場所では抱きついたり、キスしたりするのはダメだよ」 「え、何で?」 「TPO!」 「てぃ…?」 「はぁ…。ともかく、ダメなものはダメだからね。大体仕事場に私とかチビが来たらダメでしょ?無理言って今回入れてもらえたんだから、あまり迷惑かけないようにしないと」 「……うーん、じゃあ家帰ったら触っていいんだな?」 「…うん」 「解った、我慢する!」 「(我慢するってことは、その反動が夜に……。で、でもここでキスしたりするのはダメだよね…。あー……普段迷惑かけてる分、全部私に…!)」 そうは思ったが、目の前で幸せそうに笑う小平太を見て、名前は夜のことを考えるのは止めて、「行儀が悪い」と小平太から離れた。 「今日はもう帰るからね。ほら、帰るよー」 「おう!じゃあまた夜な!」 深い意味がないのは解っているが、どうしても警戒してしまい、ぎこちなく「うん」と答えると、小首を傾げられた。 「何でもない。じゃあお昼からも頑張って」 深い意味はないんだな。と思い、荷物をまとめて末っ子の手を取る。 最後に振り返り、いつもの癖で頬にキスをしてしまった。 「しまった」と思ってすぐに離れたが、顎を掴まれ、そのまま強引に口にキスをされる。 長いキスの間、末っ子はジッとそれを見ていた。 「っ小平太!」 「だって名前がしてきたから…」 「違う、反射的にしちゃっただけで…!ああもういい、帰る!行くよ」 「あい」 何故名前が怒っているのか解らない小平太はハテナマークを飛ばしながら後ろをついて行き、現場の外まで見送った。 ( TOPへ △ | ▽ ) |