おまけ その二の段 「八左ヱ門、そのケガどうしたんだ?」 「いやー…昨日の夜ちょっと…」 「もしかして虎徹先輩の殺気と関係あるとかー?」 「……やっぱ解ったか?」 「うん。五年はもちろん、四年と数人の三年が気がついてたよ」 「昨日あの狼が一年生を襲いかけて、八左ヱ門がそれを助けたんだよ」 「あ、三郎!」 「別に隠すことないだろ」 「へー…。はっちゃん格好いいじゃん!」 「いや、俺は庇っただけだ。助けてくれたのは虎徹先輩で…」 「あの先輩って本当獣だよな。七松先輩と同じ」 「もう三郎!そういう失礼なこと滅多に口にするなよ」 「本当のことだろう?あの狼だけじゃなく、動物全てが国泰寺先輩に逆らうことはない。それは「動物が好きだから」って生ぬるい言葉や感情だけじゃできなことだ。動物が国泰寺先輩に従っているのは、国泰寺先輩の奥に秘められている「野生の部分」に畏怖しているから従っている。違うか、八左ヱ門」 「……三郎の言う通り、あの人に逆らう動物はこの世にいない。動物達は強いものに従うからな」 「そうだけど…。でも虎徹先輩はいい先輩だよ。優しいし」 「おうよ!委員会さぼったり、猫とか犬とか拾ってくるけど、面倒見がよくていい先輩だ」 「そうだな、俺もよく豆腐もらう…」 「この間お団子もらっちゃったー」 「…なんだよ、これじゃあ私だけが悪口言ってるみたいじゃないか」 「三郎は虎徹先輩が苦手だからね」 「あの目が苦手だ」 「竹谷ー」 「虎徹先輩!?」 「委員会の前に保健室行けよ。それから、腕が痛むようなら無理して出てくんな。餌やりは俺らに任せろ」 「あ、いえ!腕は痛みませんし、出ます!」 「そうかぁ?まあ痛くなったら遠慮せずに言えよな」 「はいっ」 「それと昨日はごめんな」 「い、いえ!避けれなかった俺が……」 「いや、お前はよくやったよ。だからこそすまない。後輩を守るのが俺の役目なのに…」 「虎徹先輩…」 「とにかく、このことで自分を責めるなよ!お前は悪くないからな!」 「っ、はい!」 「鉢屋、雷蔵。昨日は迷惑かけたな、ありがとう」 「いえ、お構いなく」 「僕たちは平気です」 「竹谷こんなことになったからさ、同じ組の二人には迷惑かけるけど宜しくな。なんかあったら俺に言ってくれ。力になるぞ」 「お言葉だけで十分です。それにハチは友達ですから迷惑だなんて思っていません」 「ははっ、さすが雷蔵!鉢屋、今度何か奢る」 「私は遠慮しませんよ」 「知ってるさ。じゃあ俺は戻るよ。兵助、勘ちゃんもまたな」 「はい」 「あ、虎徹先輩。今度またお団子奢って下さーい」 「おう、任せろ!」 「………。はーっ、いきなりでビックリしたー…」 「ね。一瞬心臓が止まったよ」 「……前々から気になっていたのだが、国泰寺先輩は何故私だけ名字で呼ぶんだ?」 「…そう言われてみれば…」 「俺だけ「ちゃん」づけだー」 「そう言えば…」 「ああ、先輩は鏡みたいなもんなんだよ」 「鏡?」 「好意には好意。三郎は虎徹先輩苦手だろ?だから虎徹先輩はあまり三郎に干渉しないようにしている。お前慣れた奴以外が近づくと嫌がるじゃん?」 「…まぁ…」 「反対に勘右衛門は虎徹先輩をを慕っているし、仲がいいだろう?だから「ちゃん」づけ。兵助たちが「勘ちゃん」って呼んでるからその影響もあるけどな」 「だって奢ってくれるもん。いい先輩じゃん」 「んで、兵助は六年生がいないのに委員会を頑張っているから可愛がりたいんだと。雷蔵も可愛がりたいけど、中在家先輩がいるから遠慮してるって言ってた」 「(だから会うたび「何かあったら頼れよ!」って言うのか…)」 「じゃあ何でハチのことは「竹谷」呼びなの?」 「下の名前が長いからだと。あと「はち」って犬を実家で飼ってて、かぶるから」 「あはは!でもハチも犬みたいだから間違ってないよね」 「はは、そうだな。八左ヱ門も犬っぽい」 「忠犬だ」 「ほら八左ヱ門、おてー」 「お前ら俺で遊ぶなよ!」 ( TOPへ △ | ▽ ) |