夢/とある獣の生活 | ナノ

輪廻転生の段


長い学園生活も一年が終わり、俺たちは二年生になった。
俺と留三郎は伊作の不運に巻き込まれ、留年するかもしれなかったが、なんとかあがれた…。本当によかった…!
そして二年生と言えば、一番楽しい時期だ。
将来のことはまだ考えなくていいし、学園生活や部活、バイトにもかなり慣れたころだからな!
でも一番は鬱陶しい先輩がいなくなったこと!まだいるけど、この差はかなりでかい。
三年の先輩はそりゃあうざかったさ。よく小平太に喧嘩売ってたし、一緒につるんでた俺とか長次にも絡んできてた。
せっかく部活に入ったんだから、もうそういったことで問題になりたくなかったので、大体逃げてやり過ごしてた。
そんなウザい最上級生がいなくなった。ほんっと、爽快!一個上の先輩たちもそれなりにウザいけど、前のに比べたらまだマシだ。


「おい、面白い話がある」


春休み中、補習で学園に来ていた俺と留三郎、小平太の元にやってきたのは、生徒会の仕事をしていた仙蔵。
仙蔵の手には一枚の紙があり、俺の机にバンッ!と置いた。


「ちょ、ちょっと、俺の課題が!」
「どうせ落書きしかしてなかったんだろ。それよりこれを見ろ」


そう言われ紙を見ると、そこには「新入生 生徒一覧表」と書かれていた。
ああ、生徒会は新入生を迎える準備をしてるんだ。それで仙蔵も来てたのか。課題があるのかと思った。


「お前らと一緒にするな」
「で、これがどうしたんだよ」
「漢字ばっかで目が痛い…」
「このアホどもが…。ここを見ろ」


一覧表には、A組、B組、C組の三つに分けられ、下にズラッと生徒の名前が書かれていた。
その一人の名前を仙蔵が指さし、俺ら三人は顔を寄せて名前を読んだ。


「ひさ…?ひさなんとかへーすけ…?」
「五年の…豆腐小僧か!」
「兵助じゃん!うわ、あいつも生まれ変わったのか!」
「こいつだけではない。というか小平太…、後輩の名前ぐらい覚えてろ」
「すまん!」


A組の中には勘ちゃんもいて、B組の中には三郎、雷蔵、そして竹谷の名前もあった。
まさか俺らだけじゃなく、あいつらも生まれ変わったなんて…!これを奇跡と言うんだろうな!
とにかく嬉しくて、紙を強く握って立ち上がる。
留三郎も、小平太も笑って喜んでいたが、仙蔵だけはあまり嬉しそうではなかった。


「この間新入生代表の挨拶の件で久々知と会って話した」
「おお、マジでか!で、どうだった?元気してたか?こいつらも入学するって話してやったのか?」
「つーか鉢屋はどの顔なんだ?やっぱ不破の顔なのか?」
「だとしたら面白いだろうな!」
「竹谷元気かなぁ…。あいつ、俺が死んだあとどうしたのか気になってたんだ」


竹谷も俺と同じ城に就職した。
動物の扱いにも長けてたし、忍びとしての腕も問題なし。俺の推薦もあってすぐに就職することができた。
仕事ではよくコンビ組んでたし、学園のとき以上に一緒にいた。
気の合う可愛い後輩だった。
俺が死ぬ朝も「行ってくる」と言う俺に、「気をつけて下さい」と笑って見送ってくれた。
そのあと竹谷がどうなったか俺は知らない。死んでるんだしな。
留三郎と伊作の話曰く、俺が死んですぐに城を辞めたらしい。それからは知らないとのこと…。
きっとあいつのことだ、俺の仇討ちのために動いたに違いない。
俺のことなんて忘れて、好きに生きてくれてよかったのに…。って、死んじまった俺がこんなこと言うのおかしいよな。


「で、どうだった?」
「あいつ、記憶がなかった」


仙蔵の言葉に、「え…」と戸惑いの声をもらす留三郎。
俺もビックリしたけど、どっかで「やっぱり」と思ってる俺もいた。
だって俺たちもそうだったんだぜ?あいつらでもありえる話だ。


「他の奴らには会ったか?」
「尾浜にも会ったが、やはり記憶がなかった」


小平太の落ちついた質問に、仙蔵は少し俯いて答えた。
眉間を抑え、ふっと溜息をついたあと、俺の顔を見る。
そっか…、竹谷も記憶がねぇのか…。
仙蔵が喋らなくてもなんなく解った。


「不破と鉢屋にはまだ会っていないが、そちらもないだろうな」
「全員ねぇのか…。伊作みたいに一人あるよりマシかもしれねぇが…」
「俺らからしたら残念だな」
「じゃあ私たちが思い出させればいいんじゃないか?」
「また変な目で見られるぞ?」
「そんな細かいこと気にするなって、仙蔵!」
「貴様は本当にバカだな…。とりあえずこのことは伝えたぞ。早まって変な行動するなよ」


そう言うと仙蔵は紙を俺から取りあげ、教室から出て行った。
たったあれだけのことを伝えるためにわざわざやってきたのか。生徒会室、ここから一番遠いのにな。
口は悪いし、人を小馬鹿にすることが大好きな奴だけど、根本は優しいよな。


「つーわけだ小平太、虎徹。暴走するなよ」
「でも早く記憶戻ってほしいと思うだろう?」
「俺竹谷に謝りてぇし」
「初対面のときに悪い印象を残せば、それから先どんなことをしようが「変な先輩」としか見てくれなくなる。それだとまともな会話もできねぇだろ」
「「おー…」」
「まずは仲良くなってから、それから思い出させるなり、また墓場に行ってみるなりするのがいいと俺は思う」
「さすがA型」
「慎重だなー」
「お前らが大雑把すぎんだよ!」


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