夢/とある獣の生活 | ナノ

BL展開の段


「虎徹、せんっ…ぱい!ハァ…、やば、っ…!」
「……」


こいつ、マジでやりやがった…。
いやいやいや、確かに「いいよ」って言ったけどさぁ…!マジで俺で抜くとかなんなの!?というか俺なんかで抜けるわけ!?
だって俺男だよ?小平太より劣るけど、若干ガタイのいい。俺、小平太で抜けねぇわ。やっぱ可愛い女の子がいいし。
だけど竹谷はリアルで抜いてるわけであって…ッ!なんだよ、マジでなんだよ!こんなの体験したことねぇから心臓うっさいんですけどー!
しごくときに鳴る独特のぐちゃぐちゃ音がうるさい!というか他人の聞くのとかすっげぇ変な感じだなおい!あと名前呼ぶなよ!いや、抜いてんだから名前呼んで当たり前だろ。ははっ、このおバカさんめ!
とかもう…さ、自分のキャラが崩壊するぐらい混乱してるんだよ、俺。とりあえず俺が言いたいことは、


「虎徹、虎徹先輩…」
「(甘ったる声で俺を呼ぶな!)」


しかもなんか壁際に追いつめられてるし!
最初は普通に面と向かって座っていたのに、始まったら若干近づいてきたから少し後ずさる、そしたらまた近づいてくる…。の繰り返しで壁際まで追いやられた。正直詰んでる。ボンバーマンだったらもう死んでる状態。解る?
言った通り触ってはこないけど、触れる距離まで近づいてきてさ、…その、見たくねぇもんまで目に入っちまって……。
前に一緒に風呂入ってるから知ってるけど、改めて見るとでっけぇなぁおい!ふざけんなよ、後輩にくせに!


「先輩、いい匂いっす…」
「(うおおおおお!こいつ匂ってきやがった!犬か!いや、いっそ犬のほうがマシだ!―――そうか、こいつを犬だと思えばいいんだ!)」
「虎徹先輩…、好きっす、マジで好きなんす…!」
「(って思えるかーい!)」


っていうか、さっさとイけよ!なんだこいつ、遅漏か!?羨ましいなくそ!死ね!ちんこ爆発して死ね!小平太並みに絶倫だったらもっと死ね!
なんかもうここにいたくねぇよ!最初っから無理だったんだよ…。何で俺をオカズにしてんだよ…、マジで勘弁してくださいよ竹谷さん…ッ。
声を出したらこいつの理性を飛ばしそうなので、口を抑えて耐えていたが、そろそろ限界だった。
顔を背けて竹谷の顔を見ないようにしてたけど、「そろそろ止めねぇか?」って声をかけようと竹谷を見ると、バッチリ視線が噛み合ってしまった。
すっげぇ気持ち良さそうな顔してて……、もー……こんなことになってもやっぱ嫌いになれねぇわ俺…。
俺と目があった竹谷は申し訳なさそうな顔になって「ごめんなさい」と謝り出した。でも手は止まらないみたいで、ようやくイってくれた。
乱れる息使いが部屋に響いて、沈黙が流れた。


「あー…」
「……す、すみません虎徹先輩…」


スッキリしたら冷静になるよな…。俺も男だ、解らんことはない。
冷静になった竹谷は失笑しているが、手が震えていた。
何度も謝りながら処理をしようとするも、ボロボロと涙をこぼし始める。
そんな姿を見せられたらさ、俺も何も言えねぇじゃん…。


「すみません、ごめんなさい虎徹先輩…。こんな…こんな失礼なことを…!」
「……ハチ、あの「でもこれで諦めるんで!」


涙を拭いながらニッコリ笑う八左ヱ門に、俺は苦笑しかできなかった。
絶対に苦しんでる。どうにかしてやりたい。だけど俺は竹谷をそういう目で見れない。それに、優しい言葉をかければ逆に傷つけてしまう。だけどさ……。


「俺は八左ヱ門のこと嫌いになってねぇぞ」
「…っあ……っひ…く…!虎徹せ、んぱい…ッ」
「悪いな、俺が男に生まれてきたばっかに」
「……ちが、…俺がッ…!」


嗚咽で喋るのも困難な竹谷。
落ちつけよの意味をこめて頭をぽんぽんと撫でてやると、さらに涙をこぼして抱きついてきた。
身体はでかいのに行動は幼いな。って思ったけど、まあ、可愛い後輩なのでイヤじゃねぇ。
背中を叩いてあやしてると、さらに力をこめられる。苦しい…。


「虎徹先輩、虎徹先輩っ!せんっ…虎徹先輩!」
「八左ヱ門、解ったから落ちついてくれ」
「…っ、すみません…、あの…。もう一回名前呼んで下さい…」
「は?…八左ヱ門?」


名前を呼んだ瞬間、空気が変わった。
慌てて竹谷を突き放したが、手首を取られ、組み敷かれてしまった!
おいいいい!今さっきまでのシリアス展開どこいった!


「おい…、ふざけんなよ竹谷…!」
「耳元で名前を呼ばれたので…。すみません…」
「謝ればいいってレベルじゃねぇよ!本気で嫌うぞテメェ!」
「っ…さ、さっきは嫌いになってないって…!」
「そこで泣くな!反則だぞそれは!お前解って使い分けてんだろ!」
「すみません、虎徹先輩。二回戦目を希望します」
「ふっざけんなァアアアア!」


このままじゃあ掘られる!
さすがに危機感を抱いたので、火事場のクソ力で竹谷の下から脱出し、逆に組み敷いてやった。
片手で頭を抑えつけ、片手で竹谷の両手首をまとめて背中で拘束。
身動き取れねぇようにしてやると、竹谷の顔が真っ赤に染まっていた。


「お前……」
「す、すみません…。つい条件反射で…」
「条件反射で喜ぶバカがどこにいんだよ!」
「…」
「いた、ここだ!このバカ犬が!当分の間、俺に近づくな!」
「そんなっ…!俺、虎徹先輩がいないと生きていけねぇのに!」
「知るか!妄想だけでなんとかしてろ!」
「妄想だけならいいんですね!」
「っちきしょう!さっきから墓穴掘ってばっかだ俺!」
「じゃあ、虎徹先輩を襲わないよう、服を貸して頂けますか?あ、その汚れた服で構いませんので」
「おまわりさーん、ここに変態がいます!」


どうか…。どうかお願いだから、他の六年、五年にはバレませんよーに!


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