夢/とある獣の生活 | ナノ

輪廻転生の段


!全力で注意!

これからのシリーズに死ネタ(流血・暴力)表現が何度か出てきます。しかもキャラたちがケガしてます。
伊作が最強に不運。からの、転生ネタ(学パロ)があります。でも最後はハッピーエンド!
それでも苦手な方は進まないようにして下さい。





「伊作は一番に死にそうだな」
「な、何だよ虎徹、いきなり…。というか縁起悪いこと言わないでくれる?」
「だって伊作って不運だろ?就職しても他人を治療してるとこをパーンと火縄銃とかでやられそうじゃね?」
「あー、ありそうだな。初めての戦場ですぐに死んだりしてな!」
「もう止めてくれよ二人とも!」
「………お前ら、明日の試験の勉強もせんと何くっちゃべってやがる…」
「さすがアホのは組だな。試験前にしてその余裕、私たちに真似できることではない。なぁ文次郎?」
「もー、仙蔵ってば褒めすぎだって」
「嫌味だアホ虎徹」
「おっ、虎徹たちが勉強してるなんて珍しいな!」
「おいーす、小平太。お前こそ何してんの?明日試験だぞ?」
「今からバレーしてくる!」
「仙蔵先生、ここにバカがいまーす」
「このバカ小平太!貴様もしっかり勉強しろ!長次はどこ行った!」
「長次なら教科書取ってくるって言ってから帰って来ない。だからバレーしに行くのだ!」
「大人しく待っとれバカタレが!」

「で、何話してたんだ?」
「何だよ小平太。話聞いてたのか?」
「聞こえたんだ」
「六年の中で一番に伊作が死にそうだなって話してた。な、留?」
「おう。逆に小平太が一番長生きしそうだよな。死ぬ想像ができねぇわ…」
「当たり前だろう!伊作っくんじゃあるまい」
「言葉の暴力反対!」
「じゃあ伊作のために約束作らないか?」
「約束?とうとう、バカになったか虎徹」
「仙蔵、頼むから冷たい目で俺を見るな…。ほら、伊作が先に死ぬなら向こうで一人ぼっちになるだろ?だから俺らが死んで、向こうで伊作に会ったら言ってやるんだ!」


一年もあっという間に過ぎ、僕たちは乱世に足を踏み入れた。
小平太、虎徹、文次郎、留三郎は戦忍びになり、長次と仙蔵は隠密になって、僕は医療忍者になった。
皆と顔を合わせることができないほど忙しくて、でも皆の名前はよく聞いていたから安心していた。
まだ死んでいないんだと。


「―――小平太が死んだ…っ…」


まず最初に小平太が死んだ。一ヶ月以上続いてた戦で死んだ。
教えてくれたのは虎徹だった。彼は小平太とも仲が良かったし、お互い就職したお城が仲良しだったから情報が早く届いたんだろう。
常に戦の最前線に立っていた小平太。人並み以上の体力と力に恐れをなしたのか、集中的に狙われ、死闘の末に命を散らしたという。
虎徹曰く、彼の死に顔も楽しそうに笑っていたという。


「伊作、虎徹が死んじまった…!」


小平太の死を伝えに来た虎徹はその一ヶ月後、山中で亡くなったらしい。
伝えに来たのは虎徹と小平太ほどではないがそれなりに連絡を取っていた留三郎。
彼は涙を堪えながら遺髪を手に持って、僕に渡してくれた。
敵から逃げている最中、大事にしていた山犬二匹を火縄銃や手裏剣から庇い、深手を負った。
留三郎が駆け付けたころには遅く、彼はすでに冷たくなっていて、傍には山犬二匹が離れようとしなかったが、留三郎が「死んだ」と伝えると姿を消したという。
彼は最後まで動物を愛していた。


「……あいつが死んだ。先日の戦でだ」


小平太と虎徹が死んで、何年か経ったころ、再び告げられた聞きたくない言葉。
文次郎はあの頃と変わることなく目の下に隈を作っていた。いや、もっと酷いかもしれない。
彼の服は新しい血や砂で汚れていて、先ほどまで戦だったことを物語っている。
留三郎もあの二人と一緒の戦忍び。いつか死ぬかと思っていたが早すぎた。この間「死なないで」って言ったのに…。
戦って、戦って、体力の限界を迎えても戦い続けた留三郎。「彼らしいね」と言うと、文次郎は俯いた。


「文次郎が殺された…」


あの日からまた何年か経った。
長次から告げられた言葉に「やっぱりね」としか思えなくなってしまった。
最近人の死が解ってきだした。あの頃の文次郎を見てからだ。
働き続けた彼は過労が溜まっていた。そのせいで敵に隙を作ってしまい、首を跳ねられ、滅多刺しにされたという。
隠密をしている長次はすぐに僕に知らせてくれた。何度聞いてもこればかりは慣れない。


「ああ、拷問の果てに死刑された」


おかしいよね、僕らまだ二十代だよ?まだまだやりたいことだってあるのに何で彼らは死に急ぐのだろうか。
残っているのは僕と仙蔵。七人いたのにいつの間にか二人だ。
長次は隠密中、捕まってしまい拷問されたのだが、決して口を割らなかったらしい。
刑は打ち首。仙蔵は長次の最期まで見届け、僕に伝えに来てくれた。


「何で僕が生きてるんだろうね」


戦場に出ても、僕は決して死ぬことはない。ケガを負うことはあるが、致命傷を負うことはなかった。
死なないと思ってた人から徐々に死んでいき、死ぬのが遅くなればなるほど苦しい死に方をしている。
だけど仙蔵は違った。彼は殺されるなんて真似はせず、醜態をさらすことなく、自分で自分の命を絶った。まだ三十代だった。

とうとう僕だけになってしまった。

何年経っても、何十年経って僕は死ぬことなく普通に生活している。
早く死んで、この苦しみや悲しみから解放されたいというのに、僕は死ねない。


「不運だなぁ…」


早く会いたいよ。小平太、虎徹、留三郎、文次郎、長次、仙蔵ッ…!
僕はいつになったら死ねるの?いつになったら殺してくれるの?
仙蔵みたいに自ら命を絶つなんてできない自分が嫌いだッ!





「お前さー、別に俺に付き合って男子校に来なくてよかったんだぞ?お前が頭いいの知ってるし…」
「そんなこと言わないでよ留三郎。と言うか、他の高校受けようと思ったんだけど、色々と不運なめになちゃって…」
「そ、そうか…。まぁ小学校からの付き合いだし、今更だよな!」
「……もっと前からだよ」
「あ?なんか言ったか?」
「ううん、何でも」


室町時代で生きていたことなんてすっかり忘れてしまっている留三郎。
僕だけは小さいころから覚えていたのに、何で彼は忘れているのだろうか。
きっとこれも僕の不運体質のせいだ。
そう割り切って小学校、中学校、高校まで彼と一緒にいるが、時々悲しくなる。
また会えて嬉しいはずなのに、彼は覚えていないのが悲しい。
でも嬉しいから、前みたいに離れ離れになるのは嫌だから同じ高校を受験した。
留三郎とは小学校で出会ったけど、虎徹たちとは会っていない。彼らは違う時代に生まれているんだろうか…。


「よっしゃぁああ!セーフ!」


入学式が始まる五分前。出入り口方面から騒々しい声が体育館に木霊した。
ざわつく会場。僕と留三郎も振り返ると、制服を適当に着て、髪を金髪に染めている男の子が一人立っていた。
すぐに解った、虎徹だと。


「何だあいつ?」
「虎徹だ…。虎徹だよ留さん!」
「は?お前の知り合いか?」
「知り合いじゃないけど、知り合い!」
「…大丈夫か?頭打ったのか?」


会場の視線を集めている虎徹だけど、気にせず自分の席を探しだす。
留三郎に虎徹をなんて説明しようかと唸っていると、虎徹がすぐ後ろにやってきた。
髪の色が違うから不思議な感じがするけど、野犬っぽい雰囲気は変わっていない。腕まくりで露出している肌は傷だらけ。


「お、お前らもC組?俺もC組なんだよ。宜しくな!」


ニカッと歯を見せて笑う虎徹。犬歯も見えて虎徹だと確信した。


「虎徹っ、会いたかった!」
「は!?え、なに?何で俺の名前知ってんの?てか抱きついてくんなよ!男子校だからって俺ぁそっちの趣味ねぇぞ!?」
「おい伊作!お前止めろって!本当どうしちまったんだよ」
「お前こいつの知り合いか!?頼むからとってくれ!」
「おお!」
「虎徹ー!虎徹ー!」
「ええええ…?俺本当にお前のこと知らないんだけど…」


不思議そうな目で僕を見てくる虎徹。ああ、留三郎のときもそうだったっけ。
すっごく変な目で見られたのを思い出したよ。


「こいつ時々変なこと言うんだけどよ、根はいい奴だから!」
「えー……ただの電波じゃねぇの?」
「……おい、その言葉だけは聞き捨てならねぇなぁ…」
「お、何だ。やるつもりか?言っとくけど手加減してやんねぇぞ?」
「上等だ、勝負しやがれ!」


二人は胸倉を掴み合い、その場で喧嘩を始めようとする。
騒ぎに駆け付けた先生たちが何か言っているけど、二人は止まらない。止まるわけがない。
懐かしいこの感じに頬が緩んでしまい、周りは混乱していたけど僕だけは笑っていた。


「おー、なんか面白そうなことしてるな!」
「テメェら!入学式になにしてやがる!静かにしろ!」
「……飛んできた携帯が頭に当たった…!」
「おい、お前ら騒ぐんじゃない。これだから男子校はイヤだったんだ…」
「小平太…、文次郎、長次!仙蔵まで!」


二人の取っ組み合いに混乱していないのは僕だけじゃなかった。
騒ぎを一番に聞きつけた小平太が椅子から立ちあがり、腕をまくって二人に向かう。
文次郎はうるさい二人に「静まらんか!」と声をあげるが、彼が一番うるさい。
長次は昔に比べて頬の傷が少ないものの、小声で喋るのは変わらない。だけど虎徹の携帯を握りしめて静かに怒っていた。
仙蔵自慢の長い髪はなくなっていたけど、相変わらずのサラサラ。面倒くさそうに頭を抱えている。
まさか皆に出会えるなんて…!集まってきた皆を見て、思わず涙を流すとその場が静まりかえる。


「あれ?お前何で私の名前知ってるんだ?どっかで会ったか?」
「一度話せば大抵忘れることはないんだが……。すまない、誰だ?」
「……覚えがない…」
「まぁ私の名前は知っていて当然だろう。何しろこの学校を首席で合格したからな」
「よかったっ…。本当によかった!また会えて嬉しいよ!ねえ、留さん!」
「このバカ犬!一回ぐらいプロの調教師に預けてやろうか!」
「んだとアヒル野郎!テメェのお気に入りの工具ぶっ壊すぞ!」
「もう!喧嘩してないでこっち来てよ!」


二人を引きはがし、全員が輪になって向かいあう。
先生が「何してる!」と怒っていたけど、全員の耳には届いていなかった。
不思議な感覚に、全員が戸惑っている。


「あー、えっと、なんか解んねぇけどこれだけは言わせてくれるか?」
「俺も伊作に言うことがある。おかしいな、いっつも会ってるはずなのに…」
「私もお前に言いたいことがあるぞ!」
「初めて会ったのにおかしな話だ…」
「……」
「ふむ、何でだろうな。えっと、善法寺だったか?」
「え?うん、そうだよ?なに?」


出会えたことだけで十分満足だったのに、彼らは僕をジッと見て、声を揃えてこう言った。


『待たせてごめんな』


「だから俺らが死んで、向こうで伊作に会ったら言ってやるんだ!」
「ほう、何をだ?」
「「待たせてごめんな」って!」
「お、それいいな。だけど絶対ぇ泣くぞ!」
「そうなったら留三郎、貴様がどうにかしろ。保護者だろ」
「保護者じゃねぇって何度言えば解るんだよ!」


「っとだよ…!待たせすぎだよバカ…!」


全員が死んだときもここまで泣くことはなかったのは、きっとこの日のためだと思う。


「また会えて嬉しいよ!」


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