生物委員会委員長の段 「学園で飼育している動物と虫たちは以上だ。個人的に毒虫に興味がある子は孫兵のところに行くといいぜー」 学園で飼育している動物、虫たちの紹介を終わらせた生物委員会は、最初の飼育小屋前に戻って来ていた。 虎徹の言葉に隣に立つ伊賀崎が、「毒虫についての良さを語ってやる!」と一年生たちに迫る。 しかしあまりの熱気ぶりに一年生は引き気味。そんな様子を八左ヱ門は「孫兵、ほどほどには…」と言って、苦笑い。 「あ、あと最後に一つ。あっちには絶対に近づかないこと!」 学園で飼育している動物は犬数匹に猫数匹。鴉(からす)や鷹などといった鳥類と、数匹の虫や爬虫類。 それプラス、伊賀崎が飼育している毒虫などが数十匹。虎徹が個人的に飼育している犬が数匹と猫が数匹、鳥類も何羽かいて、とにかく大所帯だった。 一平が紹介された生き物の名前をメモにとり、虎若と三治郎が戯れる。孫次郎は竹谷の後ろに隠れて様子を窺っていた。 この数分だけで一年生の大まかな性格を読みとり、これからどう接していくか考えていた虎徹だったが、あることを思い出し真剣な顔と声で一年生に注意を呼び掛けた。 「あっち…?あっちに何かあるんですか?」 「んー…あるって言うより、いる」 三治郎の質問に答え、もう一度「近づくなよ」と釘を刺す。 先ほどとは打って変わった虎徹の態度に、一年の間に緊張の糸が張られた。 気のせいか、八左ヱ門と伊賀崎の表情も強張っている。 「……あの、それも生物委員会が飼育しているのですか?」 「んー………難しいところだが、俺が飼育している、かな?俺にしか扱えないから近づいたらダメだぞ」 「だからその動物だけ隔離しているんですね」 「一平ちゃん、正解!」 「えー、ちょっとだけ見たいです」 「俺も気になるなー…」 「今年の一年は怖いもの知らずだなー!元気があってよろしい!」 「言ってる場合ですか、先輩…。ともかく、先輩の言うように絶対の絶対に近づかないこと!」 『はーい!』 一平と孫次郎は少し戸惑いの表情を浮かべているが、三治郎と虎若だけは少し楽しそうに笑いながら虎徹に「見たいです」と迫っていた。 虎徹はそんな二人を怒ることなく頬をプニプニと触りながら「ごめんなー」と謝る。 強く言えない虎徹に代わり、八左ヱ門が少し強めの口調で言うと一年生全員返事をした。 「うん!いい返事だ。可愛い後輩が入ってきてくれて俺は嬉しいぜー!よーし、今日はパーティだ!食堂行くぞー!」 「ちょ、ちょっと虎徹先輩!」 「竹谷と孫兵も奢ってやるからおいで!」 「やったー!三治郎、生物委員に入ってよかったな!」 「だね!何奢ってもらおうかなー…」 「ちょっとは遠慮しろよ、は組!」 「い、いいのかなぁ…」 「気にするな、一年。国泰寺先輩はお前たちが入って来てくれて嬉しいんだ。そして、甘えられるのが大好きだからこういうときは素直に甘えとけ」 「伊賀崎先輩がそう言うなら…」 ニコニコと食堂へ向かい始める虎徹の後ろを素直についていく虎若、三治郎。 遠慮を知らない二人にい組の一平が文句を言うも、浮かれている二人の耳には全く届いていない。 孫次郎も戸惑っていたが、伊賀崎の言葉に強張っていた身体をリラックスさせ、嬉しそうに笑って虎若たちの後ろについて行った。 ( TOPへ △ | ▽ ) |