夢/とある獣の生活 | ナノ

戦闘準備の段


●注意●
夢主出てきません。

また、これから先、忍者っぽいことしかしていませんので、無理が多々あります。
それと、それぞれのペアに視点がちょくちょく変わるため、読みにくいです。
一応解りやすくしていますが、いつも以上に小説ではなくなってしまいました。
不快感を抱くかたは早々の退室をお願いします。

夢主の活躍。というか登場も少ないです。





●一番 仙蔵・兵助組み●


「立花先輩、どうしますか?」
「まずは長次たちが入ってくるのを待とう」


一番最初に入った仙蔵・兵助は森の入口付近で留まっていた。
仙蔵は持ってきた色々な大きさをした宝録火矢を身体のいたる場所に隠し、戦闘準備を整える。
兵助も得意の寸鉄(小さな刃物こと)を身体に仕込ませる。持ってきた火縄銃にも不備はないかも確かめる。


「中在家先輩と雷蔵をですか?」
「久々知、お前小平太と虎徹に勝てる自信はあるか?」
「いえ…。力も速度も勝てる気がしません」
「私もだ。だがあやつらを潰さないと後々面倒になる」


よりによってあの二人が組んでしまったと愚痴を言う仙蔵に、兵助は苦笑い。
火種を腕に巻き、いつでも発砲準備は万全。


「まずは長次たちと組む。私も久々知も長次も遠距離派だが、力持ちの不破がいるし、長次は小平太とやりなれている」
「そうですね…。雷蔵は五年の中では八左ヱ門の次に強いです」
「留三郎たちとも組みたいが、竹谷と戦いたがっている二人は嬉々として潰しにいくだろう。そうなるとやりづらい」
「…八左ヱ門、可哀想に…」
「お前は後方支援を頼む。二人の相手は私たちに任せろ」
「解りました!」
「気をつけることは、「虎徹に動物を使役する時間を与えるな」と「小平太には本気でいけ」だ」
「わ、解りました…」
「最後に一つ」
「なんでしょう…」
「死ぬな」
「ええええ!?」



●二番 長次・雷蔵組み●


「というわけだ、長次。あいつらを最初に倒すため、協力してくれ」
「……」
「中在家先輩…?」
「解った…」


二人が森に入ると、すぐに仙蔵と兵助が現れた。
まだ開始にはなっていないが、思わず身構えてしまった雷蔵。
長次は焦ることなく、いつもの落ち付いた様子で仙蔵から作戦を聞く。
あの二人を潰したかったのは自分たちもなので、断る理由もない。
しかし、その作戦を伝えてきたのは仙蔵だ。
小平太と虎徹を倒せたとしても、油断できない。
隙あれば、二人と戦っているときであろうが印を狙ってくるに違いない。
雷蔵もそれが解ってか、不安そうに長次の名前を呼んだ。


「そうか、助かる」
「…他の奴らに作戦がバレてしまっては意味がない。開始同時に再会しよう」
「それがいいな。行くぞ久々知」
「不破」
「あ、はい。じゃあ兵助、またあとからね」
「ああ、お互い気をつけような」
「うん!」


六年生は実習となると、例え同級生であってもまず疑う。そして警戒し、隙を伺う。
しかし五年生は仲がいいので実習中であろうとも、お互いのことを気にかけてしまう。
森の中へ消えていく仙蔵と兵助を見送った長次は、二人とは反対方向へ歩き出し、雷蔵もそれを追った。


「不破、今は実習中だ…」
「は、はい…」
「久々知も敵だ」
「……解りました」


鉢屋は実習となれば割り切ることができるが、他の四人はまだ甘い。
そこを指摘すると、雷蔵も気を引き締めた。


「隙があれば兵助の印を奪います」
「それでいい」



●三番 留三郎・八左ヱ門組み●


「さて、大変なことになりそうだな」
「ええ、本当に…」


森に入った留三郎と八左ヱ門はあまり元気がなかった。
小平太と虎徹が組んだことにより、二人が八左ヱ門を狙ってやってくるのは解りきっている。
あのパワータイプの二人を同時に相手するには留三郎だけでは無理だ。
それに八左ヱ門の士気が落ちている。


「竹谷、あいつらに狙われてるけど、逆を言えば絶好の機会じゃねぇか」
「え?」
「あの二人は猪突猛進型だ。そこに罠を張れば…」
「…なるほど!一網打尽ってことですね!」
「仙蔵ほどじゃねぇが、俺だって罠を作るのは得意だ。ついでに伊作なんかもかかりそうだろ?」


八左ヱ門を励ましながら、どうやって戦うか二人で作戦を立てる。
その前に入口付近にいては危険だと言って、森の奥へと進んで行く。
森は薄暗く、同じような光景が続いているので迷子になりやすい。
だからと言って目印をつければつけられてしまう。
極力目印となりそうな草や枝を見つけ、帰り道を覚えた。


「逃げながら至るとこに罠仕掛けるぞ。悔しいが二人の、誰かの印を狙う真似は止めろ」
「そう…ですね、その隙を誰かにつかれそうです」
「印を持っているのが一番数の少ない組みには罰があるみたいだが、伊作になるだろ。とにかく生き残るのことに集中しよう」
「善法寺先輩っていつも最下位なんですか?」
「ああ、毎回な」


木々を飛び越えながら罠に使えそうな物資を調達する。
できるだけ罠を作る時間を稼ぐため、奥に進み続けていると、崖にやってきた。


「おほっ!あ、危なー…」
「へー、崖があんのか」
「ここも実習範囲、ですかね?」
「ああ。下に川があるだろう?それより向こうが範囲外だ」
「なるほど」
「おい竹谷」
「はい?」
「今さっきの言葉、撤回するぜ」
「今さっきの言葉?」


八左ヱ門が不思議そうに留三郎を見ると、彼は好戦的に笑って作戦を教えてくれた。



●四番 伊作・勘右衛門組み●


「最初に言っておくね、尾浜」
「何でしょう、善法寺先輩」
「ごめん」
「いきなり謝罪ですか」


伊作は申し訳なさそうに頭を下げた。
さすがの勘右衛門も驚き、「頭をあげて下さい」というと、伊作は恐る恐る頭をあげる。


「とにかく奥に進みませんか?ここにいたらあとから入ってくる三郎たちに足をつかれます」
「そ、そうだね」


とりあえず適当に森の奥へと進みながら、伊作は喋り出す。
だけど常に警戒はしている。もしかしたら先に入った留三郎たちが自分たちを見張っているかもしれない。
きっと仙蔵や長次は小平太と虎徹を倒す作戦を立てているから、自分たちはまず狙われない。
が、自分をよく知る留三郎は小平太たちを警戒して奥に進んでいるか、弱い自分を真っ先に狙ってくるかどちらかだ。
しかし今のところ気配はない。


「僕ね、こういう実習は絶対に最下位なんだ…」
「理由は言わずもがな、ですね」
「ははっ、そうそう。だからさ、尾浜には迷惑かけるよ…」
「んー、でもそれは困りますね。僕も強くなりたいので、せめて勉強させて下さい」


六年生との実習は疲れるが、五年生だけの実習よりかなりの力をつけることができる。
例え負けると解っていても、何か一つでも学びたい。
前向きな考えを持つ勘右衛門に、伊作は「そうだね!」と気合いを入れ直した。


「尾浜の得意な武器はなんだっけ」
「万力鎖です。細かい作業も得意ですよ」
「それは助かる。それと、薬の調合は?」
「善法寺先輩ほどではありませんが、これでもい組です」
「そう」


二人は顔を見合わせ、笑う。
楽しそうに笑っているのだが、どこか黒い笑みを含んでいた。
奥に進みながら伊作の指示のもと、色々な草を摘み取っていく。


「誰も入らない山だから材料がたくさんあって助かるよ」
「薬草ですか?」
「量によってはね。あ、丁度川がある。川向こうは範囲外だから気をつけてね」
「解りました」
「じゃ、僕の指示通り作ってくれる?」


そう言って大量に持ってきた粉末の薬と、扇を取り出した。



●五番 文次郎・三郎組み●


「さて、どうしますか、潮江先輩」
「俺に聞かず、少しは考えたらどうだ?」
「考えていますよ。ですが、勉強もしたいのです。それに、あの二人のことをよく知っている潮江先輩の意見を聞きたいです」
「それもそうだな。ではまずここから離れる。最後に入ってくるのはあいつらだからな」
「早々に盗られてしまっては避けたいですね」


気配を消し、足音を立てないよう地を駆ける。
五年の中で頭一つ飛びぬけて優秀な三郎と組めば、自分の鍛錬にもなる。
そう思った文次郎だったが、性格は扱いづらくて仕方ない。
余裕そうな態度に頼もしさを感じたが、それは少し違う気がした。


「俺の予想だと、仙蔵と長次が組んだだろうな。伊作はまぁ置いておいて、留三郎は逃げながら戦うか、罠を仕掛けてるかだ…」
「あの二人はどう動きますか?」
「動物の考えることは俺には解らん」
「慣れてるはずですよね?」
「考えまで読めん。ということだ」


こうくるだろう。と予測しても、彼らは別ののところから現れる。
こう動くだろう。と予測しても、そうは動いてくれない。
動物の考えることなど、人間の自分たちには解るわけがない。
毎回トリッキーな動きをする二人に、自分たちも苦戦していると素直に伝えた。


「では何か手を打ちましょう。二人を相手にするのは難しいですが、一人ずつ相手をすればなんとかなりませんか?」
「そうだな、小平太は難しいにしろ、二人で虎徹を相手すればなんとか取れるだろう」
「解りました。僭越ながら私が国泰寺先輩の相手をします」
「それは構わんが。……鉢屋、お前焦っているのか?」


文次郎の言葉に、三郎は口を閉ざした。
前に「一本取ってみせる」と言ってから、そればかり考えていた。
せめてこの実習で虎徹から印を取れれば、強くなれる気がする。
もう助けてもらわずに済むよう、強くなりたい。


「優秀なお前が珍しいな」
「買いかぶりすぎですよ、先輩も先生方も。私は五年の中で一番弱いです」
「はっ、冗談を言う余裕はあるみたいだな」


文次郎は足を止め、三郎も少し先で足を止めて振り返る。
その瞬間、入口方面から圧迫感が襲ってきた。
きっと最後の小平太、虎徹組みが入ってきたのだろう。
すでに彼らは戦う気満々。


「お前はあいつらと戦いたいか?」


圧迫感は息をすることすら忘れてしまう。
そんな二人と戦うのはきっと大変だろう。
文次郎は真面目な顔で三郎に問うと、彼はゆっくりながらも頷いた。


「そうか、ならば俺も全力であいつらを潰そう。時間は少ないが、作戦を立てるぞ」
「はいっ!」
「だからと言って真正面から奪おうと考えるな。あいつらはバカだから、ここを使え」
「頭だけならあの二人に勝てます」
「俺もだ」
「では、国泰寺先輩ではなく七松先輩を狙います」
「お前が得意とする変姿の術は小平太にしかきかねぇからな」


二人は笑って、再び森を駆け出した。





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