おまけの段 「なぁ三郎」 「何だよ、八左ヱ門」 「俺な、今回こそ自分の凄まじい治癒能力を呪ってんだ」 「お前が一番酷かったのに、もう完治しかけてるな」 「雷蔵とお前もそろそろ完治するだろ」 「私はあと右手だけだ。雷蔵は足が痛むって言ってた」 「そうか…。でも一週間以内には痛み引くだろ…」 「……多分…」 「あとは兵助だけか…」 「完治してもすぐにケガをするなら実習する意味がないと思うんだよ、私は」 「それは俺も思う。何で六年生と実習しなくちゃいけねぇんだ…!確実に死ぬじゃねぇか」 「七松先輩、国泰寺先輩と戦うなら確実だな。潮江先輩、食満先輩、中在家先輩もダメだ。立花先輩も善法寺先輩も別の意味で恐ろしい…」 「あー、もー…マジ嫌だ…。戦場のほうが全然マシだよ…」 「何がマシなんだ?」 「虎徹先輩!?」 「お前らこんなとこいていいの?ケガ大丈夫か?」 「え、ええ……まぁそれなりに…」 「そうか。そりゃあよかったな!結構酷くやられてたから心配してたんだぜ」 「(こうして見ると普通に優しい先輩なんだよな、国泰寺先輩は)」 「虎徹先輩はケガのほう大丈夫ですか?」 「俺?俺はすっかり治ってるぜ。ほら」 「うわー…ほんとだ、ケガの跡しかない…」 「治癒力高いって便利だよな!」 「人間とは思えませんね」 「獣だったりなー!」 「ええ、戦ってる姿は獣そのものでしたよ」 「三郎!」 「アハハ、それ仙蔵たちにも言われるわ。別に気にしてねぇから三郎を怒るなって」 「ですが…」 「だってそうだろ?両手両足を使うなんて人間がする技じゃねぇ。戦えば戦うほど興奮しまくる。忍者に向いてねぇのも解ってんだけどなー……」 「…そ、それでも俺らは虎徹先輩と七松先輩のおかげで助かりました」 「竹谷は優しいなー。ほら、いい子いい子」 「そ、それは止めて下さい…」 「とか言いながら照れてるぞ、八左ヱ門」 「うるせぇ!」 「何だ、竹谷が羨ましいのか?ほら、鉢屋もいい子いい子してやっから」 「私は結構です」 「そう言うなって。可愛い後輩が死なずに帰って来てくれたんだ。嬉しくて仕方ねぇんだ」 「……」 「頑張ってくれてありがとうな」 「…」 「三郎、顔が赤いぞ」 「……いつかお前の顔でくノ一風呂覗いてやるから覚悟しておけ」 「それだけは止めろ!」 「まぁ俺は動物がいねぇと弱いけど、小平太とか留三郎はマジで強いから、今回の実習でしっかり勉強しろよ」 「あんな姿を見せられて、その言葉は説得力に欠けます」 「いや、本当だって。いつもあんな風に戦えるわけじゃない。それにあれは敵味方見境ないし、何より冷静でいられない」 「(ああ、だからあのとき食満先輩は喋るなって…)」 「では覚悟しておいて下さい、国泰寺先輩。今回の実習であなたから一本取ってみせます」 「鉢屋も強いからなー。楽しみにしとくわ。じゃあ、しっかり治療してくれよな」 「あ、はい!」 「……。って言ってしまった…」 「三郎、お前なぁ…」 「つい…。もしかして国泰寺先輩の口車に乗せられたか?」 「さぁな。でも、俺もちょっとやる気出てきたかも。こんないい機会、滅多にねぇし!」 「だな。何事も前向きに考えるとしよう。でもできるだけ国泰寺先輩と七松先輩の相手はお前がしてくれ」 「断る!」 ( TOPへ △ | ▽ ) |