夢/とある獣の生活 | ナノ

敵を倒せ!の段


忍者のドロドロした展開あり。
暴力・流血表現あります。
苦手な方は進まないようお気を付け下さい。
あと男主が出ていません。





「―――キリがないね…」
「だな…」
「つーか何人いるんだよ、こいつら」


山中で、雷蔵、三郎、八左ヱ門の三人が背中を合わせクナイを構えている。
姿は見えないものの、たくさんの敵に囲まれているのは気配で解る。
三人の周りには敵だった人間が倒れており、腹部や首などといった場所から大量に血を流していた。
何人か殺したのだが、三人の体力もそろそろ限界を達している。
肩で息をし、襲ってこない間に体力の回復を図っていると、どこからともなく手裏剣が飛んできた。
三郎がクナイで弾き、あとの二人が周囲の警戒をすると、八左ヱ門に向かって敵が突進してきた。


「っだぁああ、くそ!」


敵の刀を避け、捕え、蹴り飛ばす。
たったそれだけの動作だけなのに、整えたはずの呼吸がすぐに乱れた。


「勘右衛門たちはちゃんと学園に辿りつけたかな…」
「兵助も無事だといいな」
「なんだ、雷蔵と八左ヱ門も余裕そうじゃないか。というか、八左ヱ門が少し冷静とは珍しいな。いつもだったら兵助がやられた瞬間、キレていただろう?」
「冷静さが大事って教えてもらったばっかだからな」
「国泰寺先輩からか?ほー、それは面白いな」
「何が面白いの、三郎」
「国泰寺先輩にそっくりそのままお返ししてやりたい」
「あぁ…、虎徹先輩も七松先輩同様周りに目がいかなくなるタイプだよね」


敵はジワジワと三人をいたぶっている。
体力がなくなるよう、姿を見せず遠くから攻撃していくるのに対し、三人は攻撃をかわしながら隙がないか探る。
体力的にもしんどいが、そろそろ精神的にも疲れはじめた。
少しでも集中力がかけてしまうと、攻撃をされる。そしたら自分だけでなく、仲間もケガをしてしまうかもしれない。
仲間を大事にする五年生たちは、自分が傷つくより仲間を傷つけられるほうが辛い。


「ッチ、さっさと姿を見せればいいものの…」
「だね、さすがにしんどいや…」
「んじゃあ、俺が特攻するってのはどうだ?」
「「は?」」
「今から動物を寄せ集める。敵をおびき出してもらい、俺がそいつを倒す。その間にお前らは逃げろ」
「な、何言ってんだよ八!そんなことしたら八が危ないんだよ!?」
「寝言は寝て言え。お前一人で片づけられるほど甘くない」
「解ってるさ!でもこのままだと三人死んじまうだろ!」


言うや否や、八左ヱ門は指笛を森中に響き渡した。
すぐに空から味方が現れ、徐々に獣たちも姿を現す。
敵は混乱しているようで、こちら側から注意が反れた。
瞬間、三人揃ってその場を走り出す。
だけど甘くない。全員ではないにしろ、たくさんの敵が後ろからついて来て、手裏剣などで攻撃してきた。


「いいか、お前らだけは逃げろよ」
「何言ってんだ八左ヱ門!そんなこと言ってないで走れ!」
「そうだよ!三人揃って帰って来いって勘右衛門に言われただろ!」
「三人死ぬより、一人死ぬほうがマシだ!」


足を止めた八左ヱ門に、三郎と雷蔵も足を止める。
二人が声を揃えて名前を呼ぶも、八左ヱ門は笑顔を見せて背中を向けた。


「かかってこい!俺と獣が相手してやらぁ!」


暗い森に向かって叫ぶと、一人の男が静かに姿を現わせた。
暗殺者としての威圧感や雰囲気を持っているものの、七松先輩ほどではないと冷や汗を垂らしながら笑う。


「ガキのくせに生意気な…」
「そのガキに地味な攻撃しかできねぇのはテメェらだろ?」
「八左ヱ門!」
「早く行けって!」
「はっ!逃げれる道などもうないぞ?」


獣で足止めをしていた敵はすでに三人を囲んでおり、八左ヱ門は舌打ちをする。
再び囲まれた三人は背中を合わせ、武器を構えた。


「こんな少ない獣で俺たちを止めれるとでも思っていたのか?やはりガキだな」
「うっせぇよ!それでも一瞬足を止めたのはテメェらだろ!」
「コソコソしてるから油断してたんだな」
「あ、でも逆の言い方をすれば、忍者らしいってことじゃない?」
「……このガキどもが…。余裕でいられるのも今のうちだけだ」
「こっちは毎日のように獣みたいな人間と手合わせしてんだよ!テメェらなんかにやられるわけねぇ!」
「雷蔵も思いっきり戦え。援護は私に任せろ」
「うん!」


飛びかかってくる敵。
八左ヱ門は再び指笛を吹き、雷蔵はクナイを敵に向かって投げ致命傷を負わせ、三郎は二人の援護に回る。
動物たちも八左ヱ門と雷蔵の援護に周り、敵の視界を奪ったり、動きを制限したり、地に転ぶ敵の止めを刺した。


「―――おい、お前が頭なんだろ?降りて来いよ」


血で血を洗いながら、自分たちを取り囲んでいた敵を全て倒した。
血と汗を腕で拭い、木の上にいるだけの男を睨みつける。
すると男はニヤリと笑って、立ち上がる。


「お前ら、なかなかやるな」
「そりゃあどうも。おたくらも結構やりますよ」


三郎がバカにした感じで言うと、男はさらに笑う。


「こいつらでお前らの首を取って、あの獅子みたいな男に送りたかったんだがなぁ…」
「獅子みたいな男?」
「七松先輩のことだろ」
「ああ、なるほど」
「あの男に俺の仲間も、部下もやられた…!山に潜ませていた奴らも獣どもに食い殺されていた…」
「虎徹先輩か…」
「その獣を操ったのはお前だろう?―――殺してやるッ…」


殺気を放ち、木の上から三人を睨みつける。
憎悪が殺気とともに伝わって、気分が悪くなった。


「お前らがあいつの後輩なのは知っている。だからあいつに同じ気持ちを味わせるためにも、お前らにはここで死んでもらう」


木の上から降り立つ男。
相手はプロの暗殺者だが、三人がかかれば大丈夫だろう。
そう思った三郎だったが、周囲の様子に気がついた。


「八左ヱ門、雷蔵…。まずい、囲まれてる」


戦いに夢中になりすぎてか、いつの間にか最初以上の敵に囲まれていた。


「あれが全部だなんて誰が言った?こっからが本番だ、クソガキども」


クナイを握った男の目はギラギラと復讐の炎が燃え上がっていた。


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