生物委員自慢の子の段 その日の天候も悪く、雨が降り続いていた。 暇を持て余した生物委員たちは、食堂のおばちゃんに作ってもらったオニギリを頬張り、時間を潰す。 ご飯をさっさと食べおえた虎若、三治郎は一平と孫次郎を誘って、今二人の中で流行っている遊びを始めるのだった。 「竹谷、俺と勝負だぁ!」 「おおー、今日こそ虎徹先輩に勝ちます!」 虎若は適当に拾った木の棒を後ろと左右の腰に計四本さし、三治郎は腕をまくって身構える。 見たことあるような、ないような光景を虎徹と八左ヱ門と孫兵は少し離れた位置で見ていた。 「てやあああ!」 「甘いぞ竹谷、この俺から一本取れると思うな!」 「くっ…、こうなったらあいつらを呼ぶしかないっ…」 虎徹に成りきっている虎若に攻撃をかわされ、三治郎は苦痛の表情を浮かべる。 虎若は両手に日本の木の棒(小刀のつもり)を三治郎に向けて、余裕の笑みを浮かべていた。 「こい、俺の山犬よ!」 指をくわえ、息を吹くも音はでない。 しかし待機していた山犬役の一平が四つん這いになって姿を現し、「わんわん!」と鳴きまねをする。 「竹谷…、俺に本気出させていいのか?」 「ええ、虎徹先輩は尊敬していますが、強くなりたいんです」 「そうか、ならば俺も本気を出してあいつらを呼ぼう」 木の棒を投げ捨て、虎若も指笛をならす。しかしシューッという空気が抜ける音しかしない。 同じく待機していた孫次郎が四つん這いになって虎若の隣に来て、「がおーっ」と全く怖くない鳴き声で威嚇。 「いくぞ、ナツ!竹谷とハナコを倒すんだ!」 「ハナコッ、今日こそ虎徹先輩に勝つぞ!」 と、盛り上がるは組の二人だったが、山犬役の二人は不機嫌そうな顔だった。 「何で僕がは組の犬にならないといけないんだよ!」 「ぼ、僕できれば虎徹先輩役したいぃ…」 「僕だって虎徹先輩か、竹谷先輩役がいい!変わってよ」 「イヤに決まってんだろ。それにこれは俺と三治郎が考えた遊びなんだから、俺らが二人の役をするのは当たり前だろ」 「そうだよ!僕だって格好いい先輩の役やりたいしー」 「そんなのずるいじゃないか。せめて交代制にしろよ!」 「僕も虎徹先輩役ぅ…!」 取っ組み合いのケンカになりそうな雰囲気だったが、虎徹も八左ヱ門も止めようとしなかった。 二人ともオニギリを持ったまま微笑ましく彼らを見守っている。 「竹谷ー、俺もうオニギリいらねぇや」 「奇遇っすね、俺もお腹がいっぱい……というか、胸がいっぱいで食べれません」 「だよなぁ!なんなのなんなのなんなのあの子たち!マジで可愛いんですけど!俺の委員会の子たちマジ天使なんですけどッ!」 「やっべぇすね、ほんとどこの委員会よりも可愛いですよ。いや、ほんとダメだって…!可愛すぎるって…!」 「いや、どうでもいいですから止めましょうよ。三治郎と一平がケンカしてますよ」 「「小動物のじゃれ合いって可愛いよな、孫兵」」 「(ダメだこの先輩たち、早くなんとかしないと)」 そう思った孫兵は鼻の下が伸びまくってる先輩たちを放置して、下級生の仲裁に入るのだった。 今日も生物委員は平和です。 ( TOPへ △ | ▽ ) |