おまけの段 「なあ、伊作…。治療してもらって文句を言うのは失礼だけどよ、包帯ぐるぐる巻かれた挙句、首から吊るすのってやりすぎじゃね?」 「君ってほんっと失礼だね、虎徹。噛まれた腕が動かないからどうにかしてくれって言ってきたのは自分だろ」 「言ったけど…。俺が言いたいのは「動かせるようにしてくれ」って意味で…」 「なに?全身動かなくしてあげようか?ああ、虎徹には毒がきかないんだっけ?でも毒草はどうかな。試してみる?」 「……すみません、伊作さん。大人しく吊っておきます…」 「じゃ、無理しないよう気をつけてね」 「はー…。こんないかにも「ケガしてます」って恰好で歩くのイヤだなー…。竹谷が見たら絶対責任感じるわけだし…。当分の間委員会には顔を出さず、んでもって竹谷にも会わないようにし―――誰だ…?」 「さすが国泰寺先輩。背後から気配を消して近づいて来たのによく解りましたね」 「鉢屋か。俺の背後を取りたかったら気配消したうえに呼吸も止めるんだな。で、なんの用?お前から俺に近づいてくるなんて珍しいじゃん」 「最初に謝っておきます。国泰寺先輩、大変申し訳ありません」 「え、悪戯?勘弁してくれよー。そういうのは文次郎あたりにするのが面白いだろ」 「いえ、それはまた今度にでも。私が謝っているのは、―――こうやって縄で拘束することについてです」 「うえええええ!?ちょ、お前…!そういう趣味があったのか!?」 「誰が好き好んで国泰寺先輩みたいな野獣に手を出しますか」 「お前…解ってたけど失礼な奴だな。野獣て」 「だから最初に謝ったじゃないですか。それと私はおしとやかな女性が好みです」 「おー、俺も俺も!」 「八左ヱ門、国泰寺先輩捕まえたぞー」 「えーっ!?な、何でそこで竹谷を呼ぶの!?俺、今竹谷には会いたくないんだってば!」 「―――捕えたか、さすが三郎!」 「あとは二人でごゆっくり。八左ヱ門、油断すんなよ」 「おうっ」 「あのー…竹谷くん?俺なにかしましたか?まさか飼い犬に手を噛まれるとは思ってもなくてビックリしてんだけど…。まあ詳しくは飼い犬の友達になんだけど」 「虎徹先輩」 「うっ…」 「先日の「あー、そうだ竹谷!お前傷口は大丈夫か?膿んだりしてねぇか?いくら浅かったって言ってもケガはケガだからな!痛みがまだあるようなら保健室に行けよな!委員会は俺に任せて完治するまでゆっくり部屋で休んでくれ!なんなら伊作を部屋に向かわそうか?本当は俺がいてやりてぇんだけど、ほら俺って委員長じゃん?ってなわけで委員会は俺に任せて部屋に戻りなさい、以上!」 「に、逃げないで下さいよ!」 「に、に、逃げてねぇし!厠行きたいだけですぅ!だから縄解いてください!」 「先輩がそういう態度を取ると思ってたから三郎に手伝ってもらったんです。縄は話を聞いてくれるまで解きません」 「うー……真剣な目で見てくんなよ…。どうせお礼とか謝罪だろ。いいって、そんなの。くすぐってぇし…」 「でもっ…。俺のせいで今も腕動いていませんよね…?」 「はぁ…。ああでもしねぇとお前死んでたかもしれないだろ。こんなのすぐに治るって」 「しかし虎徹先輩…」 「お前はほんとに忠実でいい子だねぇ…。まぁ、そこが気に入ってんだけどな」 「俺、虎徹先輩には迷惑かけてばかりで…。虎徹先輩の分まで委員会頑張ろうとしたのに、結局それ以上の迷惑を…!しかも、三郎や雷蔵の足まで引っ張ってしまいました…」 「確かに、忍務があるのに事前の情報を怠ったのは失格だと思う。けど生き延びたんだからいいだろ?って、こんなこと言ったら先生に怒られそうだな。でも俺はいいと思うよ。失敗からしか学べないこともあるって言うし」 「虎徹、っ先輩…」 「もしまた同じようなことしたら助けねぇよ。だから次から頑張れ。忍びの世界に「次」があるのは今だけだぞ?」 「……ッはい!」 「うん、じゃあこれ解いてくれる?」 「虎徹先輩、俺に何かできることはありますか!?」 「は?……うん、だから縄解いてくれる?」 「その腕に変わって俺にできることは全てお手伝いします!」 「おーい、俺の話聞いてるー?」 「厠へ行きたいと言ってましたね。では俺がお手伝いします!」 「ハァ!?え、いや、いいし!てか恥ずかしいから止めて!」 「大丈夫です、任せて下さい!」 「うわああああ!だ、誰か助けてェ!!」 ( TOPへ △ | ▽ ) |