おまけの段 「先輩」 「どうした、虎若」 「今さっきの狼たちに向かって喋りかけていましたけど、会話できるんですか?」 「いや、できないよ?」 「え、でも普通に喋ってたじゃないですか」 「ああ。あんなの適当だよ。通じればいいなーって感じ!」 「普通に会話してたから話せるんだと思ってました」 「一平ちゃん、あれはなんとなくだよ、なんとなく。孫兵のほうが凄いだろ。ジュンコちゃんと相思相愛だぜ?」 「ええ、それはもちろん!」 「まあ狼は賢いから言えば大体解ってくれる」 「へー…。じゃあ今さっき「襲うな」って言えばよかったね」 「だな!」 「いや、その手が使えるのは虎徹先輩だけだから真似するんじゃない」 「でも竹谷先輩も意思疎通できますよね」 「え、そうなんですか!?」 「ん…まあ虎徹先輩ほどじゃないけどな」 「謙遜するな、竹谷。お前も十分凄いぞ!」 「はぁ。虎徹先輩に言われて嫌味にしか聞こえませんが、素直に受け取っておきます」 「おう!ところで孫次郎、大丈夫か?ハルの背中はなかなか揺れるからな…」 「気持ち悪いですぅ…」 「あ、あと少しだから我慢してくれ!」 「ねぇ虎若。さっきの狼は虎徹先輩の犬になったんだよね?じゃあ今度餌持ってってあげようよ」 「そうだな。お腹が減ってるから俺らを襲ってきたわけだし」 「いや、それはするな」 「どうしてですか?あの子たちも忍犬としていつか使うなら何かしてあげないと可哀想です!」 「三治郎、その考えは捨てたほうがいいぞ」 「竹谷先輩、どうしてですか?」 「さすが下級生、まだまだだな。ねー、ジュンコー?」 「あいつらは野生であって飼ってるわけじゃない。だからその「自然」を勝手に壊したらいけないんだ。それとも、毎日餌を持って行ってあげれるのか?」 「…」 「それは…できません…」 「何より飢えているほうが扱いやすい」 『…』 「それに、弱いものが強いものに絶対服従するのは当たり前だろう?何故俺があいつらのために獲物を献上しねぇといけないんだ」 「……。虎徹先輩、後輩たちが若干引いてますよ。その極悪顔で笑うの止めて下さい…」 「あ、すまん!ついつい…」 「虎徹先輩が強いのはよく解ったな」 「動物が全部従うのってすごいね!」 「僕も虎徹先輩みたいに扱ってみたいなぁ…」 「ぼ、僕も…」 「でも………」 「六年生と五年生がいるにも関わらずこんな遅くまでどこを歩いていた!」 「いやぁ、アハハハ!」 「国泰寺!笑って許されるとでも思っているのか!?貴様は昔からそうだったな!今日という今日はみっちり説教してやる!」 「冗談はよして下さいよ、木下先生!ちょっと遅くなっただけではないですか」 「どこがちょっとだ!竹谷、貴様も一緒に来い!」 「はっ、はい!」 「いやいや、竹谷も私が無理やり連れ回しただけです。ほら、彼って忠実じゃないですか」 「じゃあ貴様には大量の反省文を書かせるから覚悟しろ」 「うへぇ…。まあ慣れてますから書きますけど…」 「それと、明日から一人で飼育小屋の掃除だ」 「あー……ありがたくその罰受けさせて頂きます…」 「先生には弱かったみたいだな」 「だね!」 「コラ、お前たち聞いているのか!」 「そして俺たちもな…」 「だね…」 ( TOPへ △ | ▽ ) |