夢/とある獣の生活 | ナノ

食休み


昼食もお腹いっぱいに食べた忍たまたちは、食休みのため少しの間だけゴロゴロと寝転んだり、散歩をしたり…。
各々好きなように休んでいたが、一年生と六年生はとても騒がしかった。
一年生は、次の競技はなんだろうか。今さっきのは楽しかった、またしたいな。と話しているのだが、六年生は先ほどの障害物リレーについて楽しそうに語らっている。


「仙蔵の罠は本当にえげつないね!殺す気満々じゃん」
「そう言いながらも伊作、かすり傷一つ負ってないじゃないか」
「まぁね。でもそのあと落とし穴に落ちちゃってさ…」
「やっぱり仙蔵の罠がいいよなー…。俺なんて小平太だぞ?少し間違えたら久々知が死んでたんだからな」
「だって罠難しいんだもん…。動物を捕まえるなら作れるけど……。私そこまで得意じゃないし、それを言うなら虎徹だって酷かったぞ?動物使った!」
「足止めってことしか聞いてなかったんで、何でもありだと思いまーす!あ、でもそのせいで野生に戻れなくなったけどよ…」
「俺と長次は楽しかったよな。さすが長次、面白いけどうざい罠だったわー」
「留三郎も……しつこかった…」


少し間違えれば死ぬかもしれないというレベルの罠だと言うのに、笑い合ってる六年生を見て、五年生は顔が引きつった。
全く理解できないと言った雰囲気を出しているが、六年生がそれに気づくことはない。


「まだ二つしかやってないのにこの疲労感…。次はなんだろうな」


八左ヱ門が後ろに両手をついて、溜息を吐きながらお昼以降の競技について聞くも、誰も答えてくれない。
お腹がいっぱいになって喋るのが億劫になっているのと、先ほどの疲労のせい。


「遊ぶのは好きだけど、振り回されるとやっぱり疲れるよねぇ」
「組別は許そう。せめて学年別はもうあれで終わってくれ…」
「三郎大丈夫?水持ってこようか?兵助も顔色悪いけど……」
「大丈夫…。ちょっと豆腐不足なだけだ…」
「え?あ、うん、いや…えっと、それでも大丈夫?」
「豆腐くれ…」


そんな疲れてる彼らを救う手はいつになったらくるのか…。
キィンとマイクの音が空に響き、全員が喋るのを止めてマイクを持っているユキちゃんに目を向けた。


「お昼休憩はこれで終わりでーす。次は学年別による、早食い競争になります!」


昼飯を食べたあとに!?
という全員の突っ込みを貰ったあと、ユキちゃんはニコニコとルールの説明を開始した。


「わんこ蕎麦で早食い競争してもらいます。各学年から二人出てもらい、一人がついで、一人が食べてもらいます。他の皆さんは補佐でお願いします」


学年別対抗戦、次は通常のわんこ食い競争が始まった。
勿論これも下級生の部と、上級生の部に別れている。
下級生の部で優勝したのは一年生。しんべヱに敵うものはいなかった。
そして上級生の部。四年生は今回こそ参加せず、大人しく五年生と六年生の激しいバトルを見ることに。


「やっぱりここは小平太だろ!」
「だな。つぐのは長次でいこう」


虎徹と文次郎の言葉に六ろの二人はニヤリと笑い、腕をまくって用意された椅子に座る。
目の前には大量のわんこ蕎麦。
そして小平太の隣には戦意を喪失している八左ヱ門が強制的に座らせていた。つぐのは勘右衛門。


「両者準備はいいですか?」
「長次、遠慮せずついでくれ!私、全然余裕だからな!」
「解った…」
「はっちゃーん、俺も遠慮なくつぐから全部食べてね?」
「俺はもう腹いっぱいだから!無理だって」
「よーい……開始ッ!」


ユキちゃんの掛け声とともに早食い競争ははじまり、それと同時に六年組は凄まじいスピードでわんこ蕎麦をたいらげていく。
その威力、


「ダイソンかよ!」
「いいから八左ヱ門食べてよ!ほらァ!」
「無理ぃいいい!!」


吸引力の変わらない七松小平太に、八左ヱ門は涙目になりながらも勘右衛門につがれた蕎麦をたいらげていく。
お腹がいっぱいだと言うのに、頼まれたら頑張る八左ヱ門は本当に責任感のある男だった。
だからと言って勝てるわけもなく、頑張った八左ヱ門だが小平太に敵わず、今回の勝負も六年生の勝ちで終わった。


「………」
「はっちゃん大丈夫?」
「八左ヱ門、豆腐食うか?」
「お疲れ様、八左ヱ門。お昼のあとに大食い競争はちょっと辛いよね…」
「起きろ八左ヱ門。邪魔だ」
「なんだよ三郎!俺頑張ったんだぞ!もっと労われよ!」


気持ち悪さに寝転ぶ八左ヱ門に優しい声をかける三人と、頭を小突いて「起きろ」という三郎。
勢いよく起き上がり、半べそになりながら胸倉を掴む八左ヱ門だったが、すぐに口を押えてどこかへと走り去って行った。


「さ、八左ヱ門も復活したし、少しの間休むか」


お昼ご飯のあとの大食い競争後、また食休みを挟むことになった。
(何故なら、学園長先生が眠たいと言ったからである)
今はおやつの時間。下級生たちは眠たそうに目をこすっている。日差しも温かいし、絶好のお昼寝タイム。


「いやー…運動会っていいな」


あぐらをかいて空を見上げる虎徹と、その横に座って「だな」と楽しそうに答える小平太。
ここ最近、戦場実習や夜間訓練ばかりで少しばかり気が滅入っていた六年生。
久しぶりに笑ったと言わんばかりに笑顔を浮かべ、ゆっくり流れる時間をひたすら楽しんだ。


「とは言ってもあと一つか二つで終わりだろ。忍者だし夜にもあるかもしれんが」


文次郎の言葉に伊作が「そうだねぇ」とのほほんと答えた。
確かに時間的に、次の競技で終わりかもしれない。
しかし、自分たちは忍者なんだし夜まで続くかもしれない。
競技内容や流れを教えられてないからどうなるか解らないな、と仙蔵が薄く笑った。
勿論、自分たち上級生には大したことではない。寧ろ夜のほうが動きもよくなる自信がある。


「あ、でもダメだ。夜になると私容赦できなくなる」
「あー、解るわー!俺も俺も」
「野生動物かよ」
「何を言う留三郎。こいつらは一年のころから野生動物だろ」
「だったな。野生動物たちが活発になって暴れないように、できたら次の競技で終わってほしいな」


仙蔵と留三郎が笑って、小平太と虎徹を見ると二人は揃って首を傾げ、六年全員がフッと笑った。
くだらない日常話をして休憩時間を過ごしていると、再びキィンと機械音が聞こえ、そちらに顔を向ける。
今度の司会はトモミちゃんだった。


「長くなりましたが、次の競技で終わりになります。最後は勿論、組別対抗戦になります!」


マイクを握ったトモミちゃんが喋るとすぐに盛り上がった。
眠たそうにしていた下級生たちも、目をキラキラさせ、次の競技内容が何かを待つ。
身を乗り出してまでトモミちゃんの言葉を持っている下級生たちを見た上級生たちは微笑んで、「楽しそうだな」と呟く。
しかし、上級生…特に六年生も気持ち的には下級生たちと一緒で、静かに何の競技が行われるか待つ。


「下級生の部、最後は「騎馬戦」です」


運動会の目玉と言えばこれである。
四人一組の騎馬。上に乗った者の鉢巻を奪えば勝ちといったこれも簡単なルール。
それと、大将も一人決めることになった。大将の鉢巻を奪えば例えたくさんの騎馬が残っていても負けとなる。
赤組大将は三年ろ組、次屋三之助。白組大将は三年ろ組、富松作兵衛。
肉体派の二人は他の者より長い鉢巻を巻いており、上級生に負けない好戦的な顔でお互いの大将を睨んでいた。


「作兵衛、頑張れー!んでもって生物委員会においでー!」
「富松、油断するなよ!あと、生物より会計のほうがいいぞ。会計に来い」
「富松ー、頑張ってねー!相手が次屋だとちょっと辛いだろうけど、きっと勝てるよ!保健委員会に来てくれると嬉しいなー!」
「おい白組!作兵衛を勧誘するんじゃない!作兵衛、格好いいぞ!組は違えど応援してるからな!次屋、お前も頑張れ!」
「次屋、負けたらどうなるか解っているよな?」
「仙蔵……脅すのは止めてやれ…。次屋負けるな。あと、体育が嫌になったらいつでも図書に来てくれ」
「三之助ェ!いいか、委員会の花形である体育委員会が負けたらどうなるか、解っているよな?」


応援席から極悪に笑う小平太に、三之助のみならず上級生、同級生たちまで笑えない空気になったが、「精一杯頑張ります」という三之助の言葉に小平太は殺気をおさめた。
最終競技、騎馬戦。どちらが勝つか解らないが、上級生たちは温かく彼らの戦いを見守るのだった。


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