夢/とある獣の生活 | ナノ

障害物とお昼ご飯


長次の罠も仙蔵同様、容赦がない。
なかなか前に進めないでいたが、武闘派な自分にとっては嬉しくて楽しいものばかりだった。


「すまんな、不破。巻き込んでじまって」
「いえ……中在家先輩の言っていた言葉がよく解りました…」


しかも妨害者である雷蔵も巻き込んでしまった。
何度か危険なめにあいそうになる雷蔵を留三郎が助けたり、一緒に罠を壊したり…。
見事息があったコンビネーションで思ったより早めに平坦な道へと戻ってこれた。


「すみません、食満先輩。助かりました」
「おう。それなりに鍛錬になっただろ?」
「ええ!」


雷蔵だけは六年生と一緒に罠をかいくぐり、鍛錬に励んだ。
留三郎も、いい汗かいたな!と雷蔵と笑い合って、何故か一緒に最後の走者の元へと向かう。


「……不破、なんでお前まで一緒に来てるんだ」
「…あ……」
「まぁいいだろ。ほら、最後は伊作の罠だから気をつけろよ。遠慮なく毒使ってくるぞ」
「ふっ、対処は完璧だ」
「そーかい。じゃあさっさとゴールしてくれ」


巻物と木札を受け取った仙蔵は余裕に笑ったあと、長い髪の毛を揺らして走り出した。
雷蔵の「頑張ってくださいねー!」という言葉に背中を向けたまま手を振って、留三郎と一緒に一足早く学園へと戻る。
仙蔵は忍務ではないのに口布をあて、大きく息を吸って、止めた。


「どうしよう三木ヱ門くん、最後は立花先輩だ」
「どうしようもなにも、止めるしかありませんよ!…ってなんで戦闘体勢なんですか!?」
「一度しか言わん。死にたくなければ息を止めて下がってろ」


勿論、すぐに理解できなかった四年生二人に仙蔵は苦無を投げつけた。
攻撃ではなく、二人の元に飛んできた玉の破壊。
玉は破裂し、白い粉が舞い落ちる。
それを吸った二人はくしゃみを連発して、涙を流した。


「すまん」


思わず攻撃してしまい、結局巻き込んでしまったと素直に謝ったが、その場に留まることはせず進んでいく。
四方八方から飛んでくる玉はなるべく壊さず避けるのだが、それを見越してか、落ちたところに糸が張られており、別の罠が発動。
一瞬にして白い煙が広がり、仙蔵は目を細めて回避する。
学園の壁にあがれば大丈夫なのだが、そこはコース外。
仕方ないと、多少の犠牲を覚悟して白い煙の中に向かって行く。そこを通らないと門へたどり着けないのだ。


「(さすが伊作だな)」


コース内にたくさんの薬草。
自分同様容赦のない攻撃に仙蔵は楽しそうに笑うのだった。


「あ、見えてきました。六年生のゴールです!」


ようやく、五年生四年生が妨害するレースではなく、六年生が六年生を妨害する障害物リレーが終わりを迎えた。
結果はやはり六年生のほうが早く、全員でハイタッチ。
くしゃみが止まらない四年生二人は乱太郎たちが治療してあげ、そのあと伊作も手伝ってあげた。


「次はなんだろうなー」
「そんなことより虎徹。忘れてないか?」
「……なんだよ、留三郎。なんで指バキバキ鳴らしてんの?」
「お前が借り人競争に選ばれたことを、俺らは根に持っている」
「まだ持ってんのかよ!」


留三郎にヘッドロックをされ、近くで小平太がわざとゆっくりとカウントをとりはじめる。
いくら「ロープロープ!」と虎徹が叫んでも、小平太は無視。
長次と文次郎もニヤニヤと観戦しており、時々「変わってやろうか?」と嘘をつく。
そんなはしゃぐ六年たちとは対称に、五年生たちはシートに座ってようやく安堵の息をもらすことができた。


「はっちゃん大丈夫?」
「勘右衛門、ありがとうな。お前が助けに来てくれなかったら俺ずっとあのままだったわ…」
「雷蔵…何で食満先輩と一緒に走ったんだ…」
「えへへ、なんかそんなノリになっちゃって…。あ、でもいい鍛錬にはなったよ!三郎はどうだった?」
「獣相手にすぐに撤退した」
「俺もすぐに撤退するべきだったな…。何度岩に押し潰されるかと思ったか…」


既に満身創痍な五年生たちだが、運動会はまだまだ続く。
もう学年対抗別はやめてほしい。またやるなら自分たちも四年生みたいに白旗をあげたい。
空しいかな、彼らのそんな願いは届くことがなかった。


「次の競技に入る前に、まずはお昼ご飯でーす!」


一つに競技にかなりの時間がかかるため、競技数は少ない。
気づけば太陽が真上におり、食堂のおばちゃんが作ってくれたお弁当が配られる。
勿論いつものようにおかわりも自由なため、六年生は下級生を配慮しながらご飯を大量にお腹に中に入れていく。


「あー、バカ小平太!それ俺の肉だろ!」
「ぬふふ…、甘いな虎徹。こっちの陣地に入ったお弁当は全て私のものなのだ!」
「バカ小平太め!油断しまくりだ!」
「それはこっちの台詞だ文次郎!テメェの食べかけはいらねぇが貰ったぜ!」
「………」
「静かに食えんのかあのバカどもは…」
「ねー。あ、これ頂き」


騒がしい四人がお弁当を取り合い、伊作と長次が隙をついて奪い、邪魔されないように少し離れた場所で仙蔵は食べる。
何をしても騒がしい六年生と、


「ちょ、勘右衛門!俺の弁当狙うなよ」
「出汁巻きは頂こう」
「あー、三郎テメェ!」
「じゃあ僕タコさんウインナー頂戴」
「雷蔵まで!」
「俺は豆腐でいいのだ」
「壊さずよくとれたな!」
「じゃ、はっちゃんの大好物のからあげを貰おーっと」
「お前らいい加減にしろ!」


八左ヱ門だけ狙われ、八左ヱ門の悲鳴がうるさい五年生。
折角のお昼ご飯なのに休む暇などなく騒ぎ続けるのだった。


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