前提話の段 我が一族は先祖代々忍者を務めてきた。 だから女である私も、忍者として育てられてきた。 毎日の鍛錬、実践、薬草などの勉学…。父や母からたくさんのことを教えてもらったが、それがイヤだなんて思ったことはない。 寧ろ、知れば知るほど「忍者になりたい」という願望が強くなって、昨日より厳しい修行を行い続けた。 そんな私を見る兄たちは口を揃えて、「そこまでしなくていい」と言う。 それは私が女で、「クノイチ」だから。 兄たちは忍者に興味がないのか、あまりやる気がない。 しかし、男が家を継ぐのだからと、一緒に鍛錬に励んでいる。 「千秋が羨ましい」「俺も女に生まれたかった」「辛いし楽しくないし、遊びたい」 常々言ってくる兄の台詞も聞き飽きた。 私だって男に生まれたかった。 だけど女は家を継げないし、男にも勝てない。 それでも忍者になりたい。忍者が好きだ。家を守りたい。 この気持ちだけは兄たちには負けない。 もし――、兄たちがいなくなったら私がお家を継ぐことができるだろうか。 「死んだよ」 私の気持ちが通じたのか、上の兄全員が亡くなってしまった。 父と母は悲しんだが、涙は流さなかった。忍者は感情を出すべからず。 私も泣かなかった。最低な妹だ。 「これで我が一族も終わりだな」 「ご先祖様になんと言い訳していいものか…」 両親とは違う感情が沸々と湧いてきて、二人の後ろに立つ。 「私がお家を継ぎます。継がせて下さい」 私は「くのいち」ではなく、「忍者」になりたい。 一族だって大事だ。 あんな不真面目な兄に継いでほしくなかった。だから泣かなかった。 最低で最悪な妹でごめんなさい。そして、ありがとう。 ( TOPへ △ | ▽ ) |