雷蔵との会話の段 「長次ー。……あ、雷蔵!」 「あ…えっと、千秋先輩」 「久しぶりだな。……三郎ではないよな?」 「はい、僕は不破雷蔵です。鉢屋三郎ではありません」 「三郎の変装は見分けがつかんからな…」 「ご迷惑をおかけしているようで…。でもあいつ、悪戯好きの困った奴ですけど、根はいい奴なので嫌わないであげて下さい」 「ふふっ、大丈夫だ雷蔵。解っている」 「あ、でももしご迷惑をおかけした場合、僕に言って頂ければ注意しておきます」 「そうだな、私より同室の雷蔵のほうが三郎の扱いがうまいだろう。そのときは任せた」 「お任せ下さい。ところで中在家先輩をお探しですか?」 「ああ、ちょっと話があって来たのだが、留守か?」 「先生に呼ばれて職員室へ行きましたが、もうすぐ帰ってくると思うので図書室で待ったほうがいいかと」 「では待たせてもらおう。適当に本を読んでも構わないか?」 「はい、大丈夫です」 「では……。何を読もうか悩んでしまうな、こんなに多いと」 「何を読みますか?」 「そうだな、少し薬学の勉強をしたいから薬草がたくさん載った本があればそれを…」 「ではあちらの棚にありますので、お好きなのをどうぞ」 「さすが図書委員だな。こんなにたくさんあるのに全ての本を把握しているのか?」 「いえ、褒めてもらえるほどのことでもありません。それに中在家先輩はもっと詳しいです」 「長次は言葉通り本の虫だからな。よし、では探してみるか」 「ごゆっくり。きり丸ー、こっちの整理終わったよ。そっちはどうだい?」 「これは前に読んだ。こっちは伊作が持っているのと同じで…、これは実家にもある。もっと詳しく書かれた本が欲しいな…。お、あれは見たことがないな!ふっ…、と、届かん…」 「じゃあ僕は日誌つけるから残りはお願いね。―――千秋先輩?」 「ら、雷蔵っ…。悪いが少し手伝ってくれ…!」 「あ、はいっ!どの本ですか?」 「あの深緑の本だ」 「これですね。はい」 「おお、すまんな雷蔵!私の身長では届かなくて」 「……そう言えば千秋先輩は身長低いほうですよね。四年と同じぐらい?」 「そうだな、昔から小柄な身体つきで少々不便だ…」 「でも可愛いですよ?」 「―――」 「あ、すみません!そういった意味で言ったのではなくっ…!あ、のっ…し、失言でした…」 「…いや、気にするな。それより本助かった、ゆっくり読ませてもらう」 「はい、本当にすみませんでした」 「雷蔵は優しいな。同じ顔なのに三郎とは大違いだ」 「千秋…」 「あ、長次!」 「どうした、私に何か用か…?」 「大したことではない。今日の夜鍛錬に付き合ってくれないか?」 「それは構わない。しかしまだ委員会がある」 「ああ、それまで本を読んで待ってる」 「そうか、では静かに待ってろ」 「解った!」 「不破先輩、仕事終わりましたー。ってあれ?日誌全然つけてないじゃないスか!」 「ご、ごめんよきり丸。今すぐつけるから」 「もー、僕に仕事任せて自分はサボりとか卑怯っすよ。あ、中在家先輩帰って来てたんですね。……横にいる六年生は誰ですか?」 「新しく編入してきた千秋先輩」 「へー………。女の人がなんで忍たまに編入したんすか?」 「え!?きり丸も三郎と同じこと言うのかい!?」 「だって女の人じゃないっすか。僕色々バイトしてるんで人を見る目は肥えてるほうですし、自信あります」 「うーん…、でも千秋先輩は違うって言うし…」 「ま、俺には関係ないことっすけどね!それよりバイトに行っていいですか?」 「うん、あとは僕のだけだからね。中在家先輩に一言言ってあがるんだよ」 「はーい!」 「………やっぱり三郎ときり丸が言う通り、千秋先輩は女の人なんだろうか…。でも女として育てられてきたからって前に言ってた気がする…。いやいや、それより何で僕今さっき「可愛い」なんて言ったんだろうか、やっぱり無意識のうちに千秋先輩を女として見てたから?ああああ…だったら凄く失礼なんじゃないかな…。千秋先輩、女の子扱いされるのが凄く嫌ってるみたいだし…!あー……」 「長次、雷蔵が何やら頭抱えて唸っているぞ?」 「…雷蔵は迷い癖を持っているからな。放っておいて大丈夫だ」 「大丈夫なのか?」 「いつの間にか寝てる」 「…それは…、見た目に反して大雑把な性格だな…。驚いた…」 ( TOPへ △ | ▽ ) |