三郎との会話の段 「お久しぶりです、小鳥遊先輩。隣いいですか?」 「三郎か。ああ、たくあんをくれるなら構わんぞ」 「ええ、それぐらいでしたらどうぞ」 「そうか、それはありがたい」 「ところで今日は一人でお食事ですか?珍しいですね」 「留三郎も伊作も委員会で忙しいみたいでな。私一人だが、そう珍しくもないだろう?」 「いえ、小鳥遊先輩はいつも誰かといますから。特に食満先輩と善法寺先輩、七松先輩と仲がいいですよね」 「留三郎と伊作は同じ組だからな。小平太とはよく鍛錬で付き合うことが多い。文次郎ともよく付き合ってるぞ」 「噂では聞いていましたが、小鳥遊先輩は本当に鍛錬がお好きなんですね」 「強くなる為にここに編入してきたんだ、当たり前だろう?」 「さぞかし潮江先輩と話が合いそうで」 「ああ、あいつも鍛錬バカでな、よく指摘しあっている。うむ、いい奴だ」 「私には少々理解し難いお話です」 「三郎は天才らしいから何をやってもうまくいってしまうんだろうな」 「天才だなんてそんな…。まあ、変装の天才であることは否定しませんが」 「そうだな、私もお前の変装だけは見抜けん。話かけられるまで雷蔵だと思っていた」 「それはそうですよ。幼きころから術に磨きをかけていますし、雷蔵の変装は一年のときからしていますからね」 「そうなのか。それは素晴らしいな!」 「―――しかし、いくら頑張っても小鳥遊先輩みたいな女性特有の身体つきにはなれませんけど」 「ほどよく鍛え、美味しいものを食べれば肉などすぐつくぞ」 「私いくら食べても太らない体質なんです。それに、雷蔵の変装をしているので身体を変えるわけにはいきません」 「そうだったな!」 「というよりも、女性に変装することができても、女性になることはできませんから」 「ははっ、三郎は私と会えばいつもその話ばかりだな」 「言ったではないですか、「絶対に暴いてみせる」と」 「そうだな、しかしいくらお前が頑張って暴こうと忍んでも私は気づいているぞ」 「さすがは六年生ですよね、尊敬します」 「三郎、言葉に心がこもっていないぞ。胸も触らせて確認させたのに何を疑う」 「確かになかったですね。でも私、小鳥遊先輩が肯定も否定もしていないのに気づいてますよ」 「……」 「素直な性格ですね」 「本当にそれだけで判断しているのだとすれば、三郎…貴様も単純なものだな」 「仰る意味が解りません」 「お前がそういう性格なのを知って、わざと否定していない。とは考えていないのか?」 「…」 「私はあまり駆け引きが得意ではないが、年下に負けるほど経験不足ではない。どうせなら証拠を掴んでみろ。貴様も忍びだろう?」 「…言ってくれますね、小鳥遊先輩」 「お前もな。―――ご馳走様です。それでは私は失礼する」 「はい、お食事中の戯言、失礼しました」 「いや、お前のそういうところ嫌いではない。気にするな。あ、それと私のことは千秋でいいぞ。五年生全員にも伝えといてくれ」 「了解です」 「では失礼」 「………あーあ、やっぱ証拠抑えなきゃダメか…。感触でって言っても正直に話してくれそうにないしな…」 「お、三郎。今日は一人か?雷蔵はどうした?」 「ハチか。雷蔵なら委員会で遅くなるらしい」 「そっか。……どうした?なんかすっげぇ楽しそうに笑ってるけど」 「六年で遊ぶのって楽しいよなと思って」 「おまっ、そんな失礼なことすんなって何回言えばいいんだよ!お前はいいけど、あとから怒られる雷蔵と俺の身になれよな!」 「八左ヱ門はいいけど、雷蔵には謝ってるから大丈夫!」 「お前俺をなんだと思ってんだよ、ちきしょう!」 ( TOPへ △ | ▽ ) |