ときめき竹谷くん! | ナノ

唯一の人


「(そろそろだろう)」


教室の時計を見ながらぼんやりそんなことを思った。
机に入れていた携帯がチカチカと光ったので画面を開くと、名前先輩の文字。
自然と笑ってしまい、中身を確認する。確認しなくても大体どんなことが書かれているか解る。


『会いたい』


たった一言の内容なのに、胸が躍るような気分になった。
俺、今すっげぇ嬉しいです。幸せです。
ああ、早く授業が終わって名前先輩の元へ行きたい。
名前先輩の隣に座ってる奴が憎い。俺も横顔が見たい。
名前先輩の前に座ってる奴が憎い。俺も呼吸を感じたい。
名前先輩の後ろに座ってる奴が憎い。俺もずっとあの背中を見ていたい。
クラスメイトが憎い。俺が味わえない時間を過ごせるあいつらが憎い。
名前先輩を見ていいのも、触っていいのも、勿論喋りかけていいのも俺だけだ。誰も触るな。
だから忠告した。
「触らないでください」と頼むと、あの人たちは名前先輩に喋りかけなくなった。
名前先輩は悲しんでいたけど、俺が嫉妬でどうにかなりそうだったから我慢してもらうことにした。
でもその分俺がいっぱい愛します!あなたが望むことならなんだってします!


「よっしゃ、帰る!」


名前先輩のことを考えているといつの間にか授業は終わっていた。
急いで片付け、鞄を持って名前先輩の教室に向かう。
名前先輩に会いたい。早くあの笑顔を見たい。俺だけに向けてくれるあの笑顔を見たい。触りたい!
走って教室に向かうと、名前先輩のクラスメイトが俺を見て顔を背けた。
あの男の先輩は嫌いだ。名前先輩と親しげに話していた。話しかけていいのは俺だけだっつーの。
あの女の先輩も嫌い。名前先輩の椅子に座っていた。名前先輩困ってただろ。
教室に辿り着くと、名前先輩が小さな紙を開こうとしていたのが目に入った。


「あ?」


誰が名前先輩に紙を?何で?誰も名前先輩に近づくなって言ったよな。なのに何で?
大股で教室に入り、先輩に近づいて「遅くなりました」と声をかけると露骨に驚いた。
驚いた名前先輩も可愛いっすね。今度一緒にお化け屋敷とか行きたいなー。あ、いいな、そうしよう。


「あれ、どうしたんすかそれ?」
「あ…えっと、なんか手紙貰って…」
「え?…ちょっと俺が見ていいですか?もしかしたら酷い内容かもしれないし…」
「……あ………うん…見てもらっていい…?」


悲しそうな、泣きそうな表情に背筋が震える。
可愛いなんて言葉じゃ足りないぐらい、名前先輩が愛しい。
ここが教室でなかったら抱きしめて、キスして、押し倒したかった。
ここでしたら名前先輩に怒られるからしないけどよー…。
名前先輩から貰った紙を開いて見ると、女子っぽい字で、


『竹谷くんは危ないから別れたほうがいい』


ということが書かれていた。
他にも色々書かれていたけど、要約するとこういうこと。
危ない?俺が?俺のどこが危ないのか知りてぇよ。名前先輩のことすっげぇ愛してんじゃん。それのどこが危ないんだよ。
つか、名前先輩に話しかけんなって言ったのに何でこんなことしてんの?こんな手紙送って、名前先輩が俺のこと嫌ったらどうすんだよ。こいつバカか。
名前先輩に嫌われたくねぇ。ずっとずっと一緒にいたい。余計なことすんなよ!


「名前先輩、帰りましょうか!」
「あっ…その、紙は…」
「見ないほうがいいっすよ!それより今日はどこ寄って帰ります?」
「……。クレープ食べたい」
「了解!勘右衛門から聞いたすっげぇうまいクレープ屋さんに行きましょうか!」


こんな手紙、名前先輩に見せたくない。
握りしめてポケットに突っ込んだあと、名前先輩の手を握って教室をあとにした。
逃がさないように強く握って、廊下を歩いていると、今にもこと切れそうなか細い声で俺の名前を呼ぶ。
名前先輩にとって、俺が頼りなんだ。名前先輩には俺しかいないんだ。
あはは、すっげぇ嬉しい!
俺も名前先輩だけですよ。名前先輩のこと大好きです!


「いつもありがとうね」
「今更なに言ってんすか!俺は名前先輩が大好きなんです!」
「うん、うんっ…」
「大丈夫、俺だけは名前先輩の傍にずっといますからね!」


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