ときめき竹谷くん! | ナノ

おとまりにきました


「名前おねえちゃん!」
「おはよう、はっちゃん」


眠たい朝も、隣に住んでいる子供の声を聞きたいがために頑張って起きる。
時間も確認して玄関の扉を開けると、今日もタイミングよく幼稚園の制服を着た男の子と遭遇。
隣に住む、竹谷八左ヱ門くん。可愛い容姿とは裏腹にいかつい名前なので、私は「はっちゃん」と呼んでいる。
たまに自分のことも「はっちゃんね」と言うがとてつもなく可愛い。どれぐらい可愛いって言うと、無言で抱きしめてあげたくなるほど可愛い。


「おれね、きょうね、ひとりでおきれたんだ!」
「そっかー、凄いねー。あ、おはようございます」
「おはよう。この子ったら、名前ちゃんに早く会いたいから朝頑張って起きてるのよ」
「…まさかずっと待ってたの?」
「うん!」


キラキラと眩しい笑顔に胸が苦しくなる。これが…萌えってやつでしょうか…!
苦しむ胸を抑えていると、足にぼすんと抱きついてきて、クイクイっとスカートを引っ張られた。
その位置からじゃあパンツ見えちゃうけど、子供にとってどうでもいいんだろうな。このまま純粋に育ってくれ、はっちゃん!


「あのね、あのね…」


先ほどとは打って変わり、何だか恥ずかしそうな顔で上目使いをしてくる。
だからっ…朝からそんな可愛い仕草しないでおくれ!お姉さんほんと君のこと抱きしめたくなるからさ!
抱きしめたくなる衝動を必死に抑え、「なぁに」と手をとってしゃがむ。
目線が合うとちょっと恥ずかしそうに俯いて、「あのね…」ともう一度小さい声で呟いた。


「ほら、早く言わないとお姉ちゃんも困ってるでしょ」


はっちゃんのお母さんが頭を小突くと、はっちゃんは「うん…」と言って私の手をギュッと握ってきた。


「あのね…、名前おねえちゃんとおとまりしたい!」
「……え?お泊り?」
「へーすけがね、かんちゃんのいえにとまりにいって…。おれもいきたい!名前おねえちゃんといっしょにねたい!」
「友達がお泊り会したみたいで、自分もしたいって言うこと聞かないのよ。でも、いいよって言ったら友達じゃなくて名前ちゃんの家に泊まりたいって言っちゃって…。ダメかしら?」
「いえいえっ、そんなことないです!というか私の家でいいのかな…。お隣だからあんまり楽しくないかもしれないよ?」
「名前おねえちゃんがいいの!おれ、名前おねえちゃんのことだいすきだもん!」


そこは恥ずかしがることなく大きな声で言ってくるはっちゃん。
こっちが恥ずかしいよ…。
でも嬉しかったので「私も大好き」と笑って、お泊りにおいでと誘う。
喜ぶはっちゃんは本当に天使だ。可愛い。
一緒にお風呂入ったり、ご飯食べたり…楽しそうだなぁ。


「あっ、時間が…。すみません、また帰ってからでいいですか?」
「ごめんね、名前ちゃん。一応お母さんにも伝えておくから」
「はい、宜しくお願いします!」


もっとはっちゃんの顔を見ていたかったんだけど、時間が危なくなったので別れて学校に向かう。
友達に今日のはっちゃんを教えると、よかったね、ショタコンと冗談交じりに罵られる。
その日の授業はどこか上の空でだった。


「ただいまー」
「お帰り。明日、はっちゃんが泊まりに来るよ」
「え、明日!?」


早くない?と聞いたが、はっちゃんが早く泊まりに行きたいと言ったらしい。
明日は土曜日だし、私も問題ないけど…。はっちゃんは照れ屋さんなのにかなり行動派だね。
制服から普段着に着替え、母親と一緒に掃除を始める。
そこまで散らかってないからそんなに時間はかからなかった。
掃除を終わらせ、母親と明日のことを話しながら準備を整えて、その日はすぐに就寝。
早く明日にならないかなぁ。


「おはようございまーす!」


翌日の朝。
チャイムが鳴ると同時に、外から元気で明るい声が届いた。
わざわざ声を出さなくても…。
笑いながら玄関を開けると、大きなクマのぬいぐるみと犬のリュックを背負ったはっちゃんが立っていた。
服は猫柄の可愛いシャツ。靴は子供に大人気のヒーローもの…。
ちょ、ちょっと待って…。とにかく動物に囲まれているし、想像した通りの恰好なんですけど…。すっごく可愛い…!


「名前おねえちゃん、おれきたよ!」
「あ、うん…。いらっしゃい」


朝早いというのに元気いっぱいのはっちゃん。
家に入れると大きな声で「おじゃまします!」と言って、玄関に座って靴を脱ぐ。
そうだよね、子供はそうやって脱ぐよね。もうダメ…お姉さん仕草の一つ一つにきゅん死にしちゃう。
可愛さを噛みしめていると、はっちゃんのお母さんが来て挨拶をしてくれた。


「いきなりごめんなさいね。明日の朝まで宜しくお願いします」
「いえいえ。私も楽しみにしていたので嬉しいです」
「何かしたらうちに投げ捨ててね」
「あはは。はっちゃんならきっと大丈夫ですよ」


リビングからお母さんも姿をあらわし、はっちゃんのお母さんと話し始めたので私ははっちゃんを連れてリビングへと向かった。
ソファに座らせて、ジュースを出してあげるといつも見る明るい笑顔を見せてお礼を言ってくれる。
こんな可愛い子が弟にいればなぁ…。


「ところではっちゃん。何でクマのぬいぐるみを持ってるの?」
「これ、おれのしゃてーなんだ!」
「しゃてー?って…舎弟?」
「そうっ。おれがめんどうみてんだ!」


コップを両手で持って、ごくごくと豪快に飲むはっちゃん。
舎弟ねぇ…。ぬいぐるみが舎弟か……。


「おねえちゃん、どうしたの?」
「ううん、なんでもない」


萌え死ぬ…。まだ朝なのに萌え死んじゃう…!


「そのリュックも可愛いね」
「だろ!おれのおきにいり!」


横に置いていたリュックを抱きしめて嬉しそうに自慢してくるので、頭を撫でてあげると照れて喜んだ。


「あとな、名前おねえちゃんも…おれのおきにいり!」
「ありがとう。私もはっちゃんが好きだよ」
「えへへ!」


お気に入りって言い方が少しおかしいけど、「好き」って意味だよね。
こんな可愛い子に言われるんだ、嬉しくないわけがない。
もしこれが同級生の男の子に言われたら、「はぁ?」ってなる。確実になる。


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