夢/マフィア後輩 | ナノ

介抱と戯れ


この手は使いたくなかった…。看病する期間が伸びるかもしれないからな!
怪我した脇腹めがけて膝蹴りを食らわすと、なんとそれが見事に命中!おおっ、やるじゃないか私!
表情を崩した瞬間、七松の下から抜け出して変わりに押し倒してやる。


「何で押し倒してんだ、私っ…!」
「上がよかったのか?別に構わんぞ?」
「うるせぇ…」


三郎によく言われてた、「お前らバカ二人は身体で動くから困る」って意味がようやく解った。
確かに今、頭で考えてなかったよ。身体が勝手に動くって怖いね。こんな勝手なことされては困るよね。よぉく解った。


「で、何して遊ぶんだ?」
「遊ぶ遊ぶって…。人を玩具みたいにしやがって…」
「玩具は嫌か?ならば、子犬とじゃれ合うのも嫌いじゃないぞ」
「かー…。あんたって男は本当にムカつきやがりますね」
「嫌か?ならば私みたいに噛みついてきてはどうだ?まぁお前に噛みつかれてもくすぐったくもないし、何も感じないがな」
「……」
「なんせ千梅は処女だしな?」


こンのクソ野郎が…!
色々言いたいことがありすぎて、怒りで手が震えた。


「怪我人のくせに…。傷口えぐってやろうか?」
「お前にされても痛くない」
「へー、そう。ついでにお前の首に噛みついて食いちぎってやる」
「やれるものならやってみろ」


傷口を包帯の上から押し付け、首にガブリと噛みついてやる。
食いちぎることはできないが、ある程度力を加えてやると、「ふっ」と笑われた。
お前の身体が硬すぎんだよ!
跡をつけることはできたけど、血を出すことができずそれで終わり。


「むかつくー!」
「そりゃあ経験のない女にやられても何も感じないさ」
「そっちじゃない!くそう…」
「ああ、でも。私も耳は弱…っと、何でもない」
「そうか!耳が弱いのか!」


馬鹿め!自分から弱点を言うとは!
弱点を聞けて嬉しいはずなんだけど、どうやって攻めればいいのか全く解らず動きが止まる。
あと、何でこいつ抵抗してこないんだ?傷が痛むのか?…やば、私が押さえつけたからかな…。それはちょっと悪いと思ってるよ。


「………」


ぎこちなく七松に覆い被さって、耳元に口を近づける。
解らない。何をしたらいいのか全く解らない。
半分パニックになりながらも、今さっき自分がやられたように耳たぶにキスをして、


「こ、こへいたぁ…」


下の名前を呼ぶ。
想像以上に恥ずかしいもので、熱が一気に上昇して頭はショート寸前。
勢いよく離れると、目をいつも以上に真ん丸にした七松が私を見ていた。
熱いし、暑い。恥ずかしすぎてもう死にたい。泣きそうだ。


「小平太…、大人しく―――。すまなかった」
「うわあああ!な、中在家!中在家さんっ、嫌だ、待って!待ってください!」


心の中で助けを求めると、タイミングよく中在家さんが入って来て、何事もなかったかのように扉を閉めた。
ので半分泣きながら追いかけて、中在家さんにしがみついた。


「吾妻…、介抱してやれとは言ったが、ああいう「違うんですってば!違うの!ムカついてたから噛んでただけなの!」……そういう性癖でも小平太はきっと「違うって言ってんだろクソ野郎ぉおおおお!」


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