夢/マフィア後輩 | ナノ

彼らと彼女


アルモニアファミリーと千梅が廊下で出会いました。
一人目、中在家長次。


「……」
「…」
「(この人ってあんまり喋らないよね…。でも雷蔵曰く、「無口気取ってるけどドス黒い何かを持ってるよ。あと人間食べるから気を付けたほうがいい」って……)」
「……」
「(確かに…人間を食べそうな顔してる…!わ、私そういうのはちょっと苦手で…。どうしよう、逃げたいけど背中向けた瞬間食べられ…!?うわあああ!誰か来てくれ!)」
「…」(なんとなく察しがついた人)
「(うえっ!?なんか近づいてきた!止めろ、こっち来るな!……はっ、もしかして食べられる?!)」
「がおー」(両手をあげる)
「ひぃ!来るなー!」
「…」(ちょっと楽しくなった人)
「私なんか食べても美味しくないぞ!そうだ、お肉なんてないからな!それより勘右衛門とか雷蔵のほうがちょっとムチムチしてて…!ああでも二人に手を出すな!」(逃げる)
「がおー」(追う)
「わああああ!来るなーっ!来るなってば!止めろ!人間を食べるなんてお前は悪魔か!ハ、ハチー!さぶろー!助けてー!」


二人目、留三郎。


「ひぃ!どこまで追いかけてくるんだあいつ!」
「…」(構えたまま楽しそうに、だけど無表情で追いかけてくる長次)
「やばい…体力がもう…!っわ!」
「…お前何してんだ?」
「いたた…」
「留三郎…」
「長次まで。おいおい、お前にそんな趣味があったとはな」
「留三郎ほどじゃない」
「俺はただあいつら(ストリートチルドレン)に飯やってるだけだって何度言ったら解るんだよ!お前も、同盟組んでるからって屋敷を走り回るな!」
「私じゃない!こいつが追いかけて来たから逃げてたんだ!」
「長次…」
「面白くて…」
「はぁ…。遊ぶなとは言わねぇが、ほどほどにしとけよ…。まぁ小平太みたいに怒られないだろうけどよ」
「(こくん)」
「あ、そうだ。おい、仙蔵が呼んでたぞ」
「……」
「早く行けよ。長次、折角会ったんだ、少しいいか?」
「ああ」


三人目、仙蔵。


「……」
「入るときはノック三回以上だと前に教えたはずだが?」
「仕事は当分の間ないと言われたのに、何故帰ったらいけない」
「ああ、そうだな。お前たちは犬だったから人間様のマナーは覚えられないんだよな。すまない、同盟を結んだからついつい…。ふっ、私もまだまだだったようだ」
「(私こいつ嫌い。いちいち嫌味ったらしいし、しつこいし、考え読めないし…)はいはい、それでいいですから早く帰らせて下さい。雷蔵たちも仕事終わってますよね?」
「すまないな、嫌味ったらしくて。不破と久々知ならまだ仕事を終えていないぞ。尾浜と鉢屋は既にアジトに戻っているようだが」
「でも私は終わってますよね。ここにいても居心地悪いんで帰らせろ」
「居心地が悪いのか、そうかそうか。なら、慣れるまでここにいたらどうだ?大体、留三郎と伊作と小平太にお礼を言ってないだろう?」
「お礼?お礼を言うようなことをしましたっけ?それとも、お礼に殴らせてくれるんすか?」
「睡眠薬のおかげで死なずに済んだ」
「私はあの男を庇ったんですよ?ならばあちらからお礼を言うのが先では?」
「それもそうだな。では先に小平太の元へ行ったらどうだ?きっとお礼を言ってくれると思うぞ」
「結構です。私、あなたみたにお礼が云々って言うほど心狭くありませんから。用がないならもうアジトに帰らせて頂きます」
「久々知と不破を置いてか?あいつら、お前が怪我をしたと聞いて心配してたぞ?ここに残って安心させてやったほうがいいんじゃないのか?」
「私あんたらのこと嫌いです」
「そうかそうか。いい子だから大人しくしてるんだぞ」
「(犬扱いしやがって…。ムカつく!死ね!)」


四人目、文次郎。


「何が、いい子だからーだ!どっかぶっ壊してやろうか!」
「そんなことしてみろ。俺がお前を壊すぞ」
「…(っびくりしたー…。こいつも気配読めないんだよな…)これはアルモニアファミリーのボス様ではありませんか」
「その言い方は止めろ」
「まぁ私には興味ないことですけどね。ところで、早く着替えたほうがいいですよ。血生臭い」
「………殺ったまま書類仕事に追われてな…。着替えるの忘れてた」
「(眠たそうな目…)今ならあなたを殺せそうですね」
「したらお前たちがやりたいことができなくなるぞ」
「…」
「睡眠不足だが、お前にやられるほど弱くもねぇよ」
「そうですか、それは残念。ですが、やりたいことが終わったらあなたたちも殺すつもりです」
「解った、楽しみに待っていよう」
「(…相手にされてないなぁ。別にいいけど)ではこれで」
「ああ。そうだ、吾妻。不破と久々知なら明日か明後日には帰ってくる」
「……。聞いておりませんが?」
「…………。そうだったな、余計なことを言ってしまった」
「え?」
「おいそこの奴、これを仙蔵のところに持ってってくれるか」
「はっ」
「あ、おい!…なんだよ…。何であんなこと言ったんだ?心配して?…昨日部屋でぼやいたことを聞かれてたとか?あそこの部屋、盗聴器あるのか!?ちきしょう!」


五人目、伊作。


「やっぱりあった!何で盗聴器なんて仕掛けてんだよ!この野郎!」
「ねぇ吾妻、ちょっといい……あ、バレたみたいだね。残念…」
「げっ!善法寺…」
「わー、そんな嬉しい声出されたら照れちゃうな…。ところで、今の気分はどう?通常かな?」
「はぁ?今の気分ならすこぶる悪いですが?」
「うん順調みたいだね。よかったー…あれちょっと失敗作だから怖かったんだよねぇ…」
「(真っ青)」
「…へー。そんな顔できるんだ。なに?薬怖いの?あ、留三郎が言ってたっけ?ふーん…」
「違う。近づくな。お前は薬臭い」
「え、臭い?おかしいな…今さっきまで劣化の死体触ってたから血生臭いと思うんだけど…」
「いいから部屋に入るな!」
「それはおかしいよ。ここの部屋は僕たちのなんだから」
「屋敷から出してくれないはお前たちだろ」
「だって君たち危険だもん。隔離しとかないと」
「ほんっとあんたたち嫌いだよ」
「ありがとう、僕たちもだよ。あ、夕食はいつも通り自分たちで取りに行って食べてね。じゃあ僕はもう行くから。薬の配合もうちょっと変えよう…」
「二度と顔見せんな!」


六人目、小平太。


「くっそー…。パンだけしかくれなかった…。お腹空いた…お肉食べたい…。アジトに帰りたい…」
「よぉ、吾妻」
「っ!(ま、またか…!気配を消すなクソ!)」
「相変わらず鈍感な奴だな。それだと首に刀を添えても気づかなさそうだ」
「…」
「この間は庇ってくれてありがとうな。まぁお前に庇ってもらわなくとも回避はできたし、死ななかったが」
「…」
「しかしその力は便利だなー…。次の仕事、また私と一緒にするか?私がお前を有効活用してやろう。伊作から薬も貰うし、死なんだろ」
「断る。貴様となんか絶対にしたくない!」
「私とお前だといいコンビになれると思うんだが…。お前はいい盾だ」
「盾のみとして私を扱うとしたらお前はバカだな。ハチのほうがお前より余程私を有効活用する」
「…その名を出すな。殺すぞ」
「出されたくなかったら貴様も発言には気を付けるんだな」
「…?私のものが何言ってんだ?」
「はぁ!?―――がふっ…!」
「ほら、跡つけただろ?」
「女の子が寝ている間に変なものつけやがって…。ゲスが」
「女の子?ははっ、面白いことを言うなお前は!だが、跡はちゃんとつけたんだ。悔しかったら力で消してみたらどうだ?」
「くっ…!(跡は自然に消えるまで待つしかない…。気持ち悪いもんつけやがって!)」
「自然に消えるのを待つつもりだろうが、無理だな」
「あ?」
「消えないように私がまたつけてやるからな」
「―――ッ離せぇ!」


七人目、与四郎。


「あらー?小平太ぁ、なぁにしてんべー?」
「おおっ、与四郎。どうした、本部から連絡か?」
「―――」
「おーよ、劣化人間のことで…。って、お取込み中だったか?」
「え?いや?」
「お取り込み中に見えんだげど…」
「(…こ、こいつ危険だ…!怖い…っ)」
「あまりめんこい子で遊ぶでねぇよー?」
「解った!」
「じゃ。千梅、ええ子にするんだべ?」
「……」


そして。


「で、本部の人のおかげで助かったんだけど…。その人凄く怖かった…!」
「大丈夫、千梅?ごめんね、僕たちが帰って来るの遅くて…」
「すまない、千梅。傷を負ったらしいが大丈夫か?」
「あ、うん。傷は平気…。それより雷蔵と兵助たちの傷が…。ほら、手当てしてあげるからソファに横になって」
「俺は大丈夫だから、雷蔵の手当てを頼む」
「僕も「ダメだ雷蔵。暴れただろう?」……解った…。ごめんね千梅」
「気にしないで。……明日になったらアジトに帰れるよね?私ここ嫌だ…。確かに情報やあいつらの動きを教えてくれるけど、…嫌だ…。使われてるのが解る…。あの人たちみたいに使ってる…。怖いよ」
「大丈夫だ千梅。大事な情報を手に入れたら姿を消すつもりだ。街を離れて、そこから新たな作戦を立てよう」
「その為に今暴れてるんだからね。全部アルモニアのせいにしたら、あいつらも僕らじゃなくアルモニアを襲うだろう?同士討ちが一番!」
「…うん、解ってるよ。大丈夫、ただね……うん、一人は心細いよ…」
「「千梅…」」

「相変わらずガキみたいな甘さだな、こいつらは」
「そう言うな仙蔵。ガキなんだからな」
「…伊作、新しく仕掛けた盗聴器はよく声が聞こえるな」
「でしょ?留三郎に作ってもらったんだよ。さすが留さん」
「壊されるのは解っていたからな。にしても…あいつら…。マジでバックレたらどうすんだよ」
「それは大丈夫!私がちゃんと見つける!」
「…与四郎から聞いたが、あまり肩入れするなよ、小平太」
「任せろ。所詮は一時の戯れにしかすぎん。壊れたら興味ないさ」
「つーことは壊れるまでは手を出すつもりか。いい迷惑だな、吾妻も」
「…でも…楽しかった…」
「長次まじで楽しそうな顔してたぞ…」
「楽しかった…」
「じゃあ私も今度する!」

「だから早く帰ろうか!こんな盗聴器ばかりの部屋にいたくない」
「そうだね。ただ、僕と兵助はまだ残ってるから、先に千梅は帰ってて?」
「すぐに終わらせて戻るからな」
「…まだあるの?」
「もうちょっとね。でもここでの仕事だから大丈夫だよ」
「そんな顔をするな。大丈夫だから」
「解った。じゃあ先に帰るね。ハチたちも気になるし…」
「ふふっ、相棒の千梅がいないとハチも静かだろうね」
「三郎は喜んでいそうだな」
「あはは!―――じゃ、私は帰りますよ、アルモニアファミリーの皆さん」

「なんだ、やはりバレていたか。留三郎、もっとバレないいいものを作れ」
「無茶苦茶な…」


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