願いと我儘 !注意! メモで話していた空軍海軍パロ。詳しい設定はメモをご覧下さい。 相変わらずパロディ要素が強くなっております。 空軍の特攻隊長→七松 空軍(七松たち)を乗せている空母の戦闘員→後輩主 「―――……」 空母こと、幽霊船の船長である文次郎から言い渡された言葉に、名前は言葉を発することなく静かに拳を握りしめた。 ただの下っ端戦闘兵である自分が、船長である潮江文次郎に意見できるわけがない。 周りには幽霊船の幹部がズラッと並び、彼らの前には空母に乗せている空軍のメンバーが全員並んで、敬礼をしていた。 「以上、報告終了。質疑があれば個別で頼む。それ以外は準備と調整に入ってくれ」 文次郎の言葉を最後に、それぞれが動きだし、名前も小平太を見ることなく甲板へと向かった。 本日言い渡された内容は、「明日、激戦区へ応戦しに行くこと」だった。 それはこの幽霊船ではなく、幽霊船に乗っている空軍のメンバーのみ。 戦争中だから、おかしいことではない。 おまけに自分たちは軍の影となる存在で、できるだけ激戦区へと向かい、味方を助けるのが使命であり存在意味。 だから、おかしくない。解ってて海軍に入隊した。「女には無理だ」と言われるから血反吐を吐くほど鍛錬に励んだ。 「……ッ…!」 でも、この時が大嫌いだ。いつまで経っても慣れない。 大好きな人を見送るときが、一番嫌い。 明日もしかしたら死ぬかもしれない。敵に撃墜され、もう帰って来ないかもしれない。 動かしていた足を止め、握っていた拳で壁を殴って捨てきれない感情をぶつけた。 「七松先輩だから大丈夫。いつもみたいに笑って帰って来てくれる。いつもみたいに敵を殲滅してくれる」 大丈夫と自分に言い聞かせるも、手が震えていた。 しかし、いつまでもこの場にいられないので、甲板に向かって戦闘班のメンバーとともに、空軍の準備補佐に回った。 チラリと明日飛び立つ空軍の幹部メンバー、留三郎、小平太、兵助、八左ヱ門を見ると、彼らは真剣な顔で話し合っている。 きっと作戦を立てているんだろう。どういう編制で飛ぶか、どういう経路で向かうか…。 空母では目立つ茶色のジャケットを着用し、ヘルメットやゴーグルをそれぞれ手にしていた。 留三郎だけは大量の書類を持って、他の空軍メンバーや補佐をしている戦闘班や整備士に指示を飛ばしていた。 「名前ー、なにしてんの?準備しないと怒られるよ?」 「勘右衛門…。うん、ごめん」 「そんな心配しなくたって大丈夫だよ!七松先輩が死ぬような人に見える?」 同じ戦闘班の勘右衛門に肩を叩かれ、何も話してないのに励まされた。 顔に出ていたのか、それとも勘が鋭いのか…。 すぐに笑って、「ありがとう」とお礼を言うと彼はニッと笑って、隣にピッタリと寄り添った。 「名前ってさ、結構乙女だよね」 「は?」 「だってー、「好きな人には死んでほしくないよぉ。生きて戻ってきてー」って思ってたんでしょ?」 「そんな言い方じゃないし」 「でも、そうは思ったってことだよね?いーなー、俺もそんな風に思ってくれる女の子ほしー!ここじゃ無理だけど」 「………兵助が心配なくせに」 「あはっ、バレた?兵助ちょっと真面目すぎるからねー。深追いはしないと思うけど、ちょっと怖いんだ。でも俺は兵助を信じてるよ?」 軽い口調で言う勘右衛門だが、本当はもっと真剣に兵助を心配している。 それを見せたくないのか、そんな雰囲気を出さない。 勘右衛門と少しの間話していると、戦闘班の班長であり、幹部である男に軽く注意され、準備に戻る。 勘右衛門のおかげで少しは気が楽になり、整備士の仲のいい子と一緒に準備を始めた。 「……」 慣れたもので、準備は早々に終わり、既に夜を迎えていた。 空母にいるメンバーは特に命令されてないので、明日は大人しく待機。 向かうのは空軍のみなので、空軍のメンバーはそれぞれ早めの就寝。 勿論、小平太もさっさと個室へと戻って行った。 少しだけ言葉をかけたかった……声を聞きたかった名前は、小平太の部屋の前に立ったままジッと扉を睨んでいた。 「…。(どうしよう。来たのはいいが、寝てるかもしれない…。でも起きてるかもしれない。っていうか声聞きたい……)」 勘右衛門に言われた通り、自分は乙女なのかもしれない。 女々しいなぁ…。と溜息を吐いたあと、踵を返して自室へ戻ろうとしたらガチャと扉が開いて、名前を呼ばれた。 「いつ声をかけてくるかと待っていたら、結局帰るのか」 「………気づいてたのですか…」 「いくら気配を消しても、名字のは解りやすいからな」 低いドアを屈んで、廊下に出たあと「で、何か用か?」と声をかけると、名前はおずおずと身体を小平太に向け、「あの…」と俯く。 「明日………無事に帰って来て下さい、よ?」 「当たり前だろ。私がやられると思うか?留三郎も竹谷も、久々知もいるし大丈夫だ」 「それは…解ってますけど……。それでもやっぱり…」 「何だ、お前は私を信用してないのか?」 「信用はしてますよ」 信用はしている。彼の腕前は軍本部でもトップレベルに入るほどだ。 小平太が戦っている様子を生で見たことがあるし、彼が死ぬなんて想像つかない。 それでも心配している自分がいて、酷く泣きたくなるときがある。 泣きそうになるのをグッと堪えたあと、顔をあげて小平太に少しの笑顔を見せた。 「やっぱり私も空軍に入ればよかったです」 本当に自分は女々しいなと、心の中で自嘲しながらこぼす。 空軍に入隊して、小平太のそばにいたい。戦闘であっても彼のそばにいたい。そうすればこんな苦しい思いなんてしなくてすむ。 不謹慎な理由だから、そこまで言わなかったが、きっと小平太にはバレているだろう。 だから昔、「お前は空軍に来るな。海軍へ行け」と言われた。 こぼしたあと、「今度は怒られるな」と思ってすぐに俯いたが、小平太は何も言わなかった。 「…七松先輩?」 「空軍はダメだ。名字が空軍に入ったら守れないだろう?」 「……え…?」 「空母にいてくれ。私が空からお前を守るから。絶対に沈めさせない。お前だけじゃなく、皆を空から守りたいんだ」 真剣な声と眼差し。 ああ、だから彼は昔あんなことを言ったのか。 自分もそうだが、小平太も言葉足らずだ。いや、真っすぐすぎて解らない。 嬉しい気持ちに胸がキュンと高鳴ったが、それと同時に片方の目から涙が流れ始めた。 「名前…、「でも……あなたに待ってる気持ちなんて解りませんよね?」 嬉しくて顔は笑っていた。だけど胸は凄く苦しくて、声が震えていた。 いつだって小平太は戦いに出たがる。よく応戦に出ることもある。 そのたびに苦しい思いをして待ってる私の気持ち、解りますか? と問うと、涙を拭ってやろうとしていた手と歯をグッと握りしめ、目を瞑ったあと名前の手首を乱暴に掴んで、自分の部屋に引き入れた。 乱暴だったので、扉を閉める音が響いたが、誰一人として様子を窺いにくることはなかった。 「な…っなまつ、先輩…」 「うん、ごめんな」 「ッ!」 「ごめんな、名前…」 引きこんだあと、大きな身体で小さな身体を抱き締める。 名前の耳元で何度も謝る小平太に、次第に涙が溢れ、子供のように顔をぐしゃぐしゃにしながら泣き始める名前。 ギュゥウウ…と小平太の服を強く握りしめ、できるだけ声を押し殺して泣くのだが、小平太が喋るたびに嗚咽が酷くなった。 小平太の肩に顔を埋めて、「ごめん」と謝るたびに首を横に振った。 小平太だけではなく、名前も「ごめんなさい」と何度も謝り続ける。 我儘を言ってごめんなさい。 そう聞こえた小平太は、背中をぽんぽんと優しく叩いたあと、「ん」と優しく返事をしてあげた。 落ちつくまで背中を叩いてあげて、ようやく名前も泣き止む。 「…酷い顔だな、名前」 「七松先輩のせいじゃないっすか…」 「ははっ、そうだったな」 一度離れ、涙で汚れた名前の顔を見て笑う小平太。 拗ねながらも小平太から離れようとしない名前の目元を優しく触ったあと、名前の額に自分の額をあてて、また「すまん」と謝った。 「…。明日、絶対に生きて帰って来て下さいよ」 「ああ、勿論だ。いけどんでやっつけてやる!」 「それが怖いんですよ…」 「じゃあなんて言ったら安心するんだ?」 「………わかんないです」 「何だそれ」 「すみません…」 「んー…じゃあそうだな…」 額を離して、名前の手をとって狭いベットに連れて行く。 先に小平太がベットに腰を下ろしたあと、隣に名前を座らせる。 「今日は一緒に寝ようか」 「……はい」 狭いベットに二人で寝たら、きっとゆっくり寝れない。朝起きたら絶対に身体を痛めている。 だけど、小平太の近くにいたかった名前は遠慮することなく二つ返事をして、座ったまま抱きつく。 頭を撫でたあと、自分も横になりながら名前も寝かせた。 「おやすみ、名前」 「おやすみなさい、七松先輩」 来てほしくない明日。だけど好きな人と迎えるなら、耐えれる気がして名前は重たくなっていた瞼を静かに閉じた。 ▼ 妄想して話したら、盛り上がって、「書いちゃいなよ!」って言われたので書きました。 非日常の中に入る日常がたまんなく好きです。 明日死ぬかもしれないという立場にいる人たちの恋愛が好きです。切ないけど、余計愛が深まると信じております! あとは、わんこ主と竹谷くんのお話もありますけど、どうだろうなぁ。 七松は大人っぽい恋愛してそう。将来のことを考えて、今を守る!みたいな? ( TOPへ △ | ▽ ) |