夢/誕生日! | ナノ

実験してみよう!


!注意!
現代パロです。





「……思うだけどこの展開ってありえなくない?」
「は?何が?」


一階大広間のソファに仲良く座って、大型テレビを見ながら名前が呟く。
テレビには女を組み敷いている男がうつっていた。
ドラマのアダルトな場面になると、二人は真剣になってその画面を見つめる。


「いや、女だって頑張れば抜けだすことできるっしょ」
「あー……どうなんだろうな。この子、「イヤッ」って言ってるけど実はその気満々なのかな。あざといなー」
「それはそれで?」
「たまんねぇな」
「やかましいわ」


笑いながら八左ヱ門の後頭部を軽く叩いたあと、二人とも黙って再びテレビに集中する。
山場も終わり、普通の展開になった瞬間、二人は置いてあったお菓子に手を伸ばし、「いやー、興奮したわー」と感想をもらす。


「ねぇ竹谷。ちょっと今さっきみたいに私を抑えつけてよ」
「押し倒せってこと?」
「おうよ!男の腕力で抑えつけられても火事場の馬鹿力で脱出できると思うんだよ!」
「………いや、待て問題がある」
「問題?」
「お前相手じゃテンションあがんねぇ」
「やかましい!いいから押し倒せよ!」
「そういうところが嫌なんだよ!せめてもっと可愛い女の子になれよ!」
「竹谷くん、私初めてだから優しくしてね…?」
「うわキメェ」
「竹谷くぅん、今すぐ君を女の子にしてあげましょうか?」
「俺の息子をどうする気だよ!」
「使う予定のねぇ息子なんていらねぇんだよ!」
「い、いやー!止めてーっ!」


何故か名前が八左ヱ門をソファに押し倒して、両手を頭の上で拘束する。
拘束する手に力を込めるも、八左ヱ門は「いやー!」と悲鳴をあげながら名前の拘束を解いて、逆に押し倒す。


「お前……鍛えてんのにあの程度か?」
「いやー、止めてーっ!」
「ふははは!絶景だな!これが巨乳の子だったらもっとよかった!」


バカにした笑いを浮かべながら名前の両腕を頭の上で拘束する八左ヱ門。
名前は先ほどの八左ヱ門と同じリアクションを取りながら、拘束する手に力を込めて脱出しようとするも、ビクとも動かず、思わず言葉が詰まった。


「こうやってさ、巨乳で可愛い子を押し倒して、上から見下ろすとか最高に興奮するよなー…」
「う、おっ…!このっ………ッ!」
「「竹谷くん、怖いよ…」って言われたらもうたまんねぇよ!いつも優しい俺とはちょっと違うのさ!ってことを教えてやりてぇ!」
「くっそーっ……!何でこう…っ力込めてんのに…!」


押し倒したまま妄想を続ける八左ヱ門と、必死に抜けだそうとする名前。
平均的な女の子より少し…いや、かなり力がある名前。自信もあった。それなのに脱出できない。
悔しくなって身体全体をよじるも、体重が重たいせいでやはりビクともしなかった。


「って、早く脱出しろよ」
「竹谷なんて嫌いだ!死ね!」
「んだと!?テメェが押し倒せって言うから付き合ってやったんだろ!?何だその言い方は!」
「うるさい、バーカバーカ!」
「……ははーん、さてはお前…脱出できねぇんだな?」
「ギクリ!」
「口で言うなよ。はっ、なっさけねぇなぁ!」


さらに力で抑えつけ、ニマニマと笑いながら顔を近づける八左ヱ門を下から睨みつけて「バーカ!」と罵るも、彼は笑うだけだった。
あんなの絶対に嘘だと思っていた。絶対に本気を出せば抜けだすことができると思っていた。
だけどできなかった。いくら力を込めても振りほどくことができない。


「へいへい、名前ちゃーん!いつも威勢はどうしたんだーい?」
「お前ほんっとムカつくな!」
「で、いつまで続けるんだ?俺としては面白いけど?」
「むっかつく顔しやがって…。テメェなんか七松先輩に殴られちまえ!」
「それいつものことだから怖くないでーす!」


残念でしたー!と誇ることではないことを言いながら、さらに顔を近づけてベーッと舌を出して笑うと、大広間の扉が開いた。
二人ともそのままの体勢で扉に目を向けると、二人の恐怖の対象、七松小平太が立っていた。
一気に顔面蒼白になる二人と、バタン…と静かに扉を閉めて、小首を傾げる小平太。
ゆっくりと二人に歩き出す小平太からは殺気がピリピリと飛んできて、二人はすぐに起き上がってソファの上に正座になる。


「(おい、竹谷…)」
「(無理。マジ無理)」
「矢羽音うるさい」
「「すみません!」」


矢羽音を飛ばしてこの空気をどうしようか相談しようとしたが、当たり前のごとく小平太には聞こえていた。
近づくたびに震えあがる二人は、ギュッと手と手を取り合って恐怖に耐える。
とうとう目の前にやってきた小平太に、二人は戦意喪失。涙を浮かべながらこれからの展開にゴクリと生唾を飲み込んだ。


「…名前」
「っはい!」
「何で竹谷と仲良く手を繋ぎ合ってんだ?」
「すみません!ごめんなさい!」
「仲良さそうだなぁ?」


ニコニコと笑う小平太に声にならない悲鳴をあげる。
これ以上怒られないためにも、不機嫌にならないためにも名前は竹谷の手を離し、竹谷自身からも距離をとった。
するとすぐに腰を掴まれ、荷物のように持ちあげられてソファから脱出。


「……えッ!?」
「名字ーっ!」
「うるさい竹谷」
「いってらっしゃいませ!」
「竹谷ーっ!」
「うるさい名字」


一睨みと一声で静かになった名前を連れ、名前の部屋へと向かう。
あまりいい予感がしない名前だったが、ここで暴れたとしても小平太に敵うわけがなく、ただひたすら祈るのだった。


「相変わらず汚い部屋だな」
「(七松先輩にだけは言われたくない…)った!な、投げないで下さいよ」
「ベットに投げただけマシだろ?」
「そうで…………あの……」
「ん?」
「何で…?」
「だって押し倒してほしかったんだろ?ヤりたかったんだろ?」
「激しく違います!勘違いです!」


ベットの上に名前を投げたあと、すぐに自分もベットに乗って、名前に覆い被さる。
逃げようとして起き上がった名前の腕を逃がさないよう掴んで、首を傾げた。
名前は「違う!」と否定しながら後ろに後退して、壁に頭をぶつけて悶える。


「バカだなー」
「違うんすよ、七松先輩…。押し倒されても女の力で脱出できるかって実験をしてただけなんす…」
「できるわけないだろ?女と男だぞ?」
「……それがよく解りましたよ」
「だから男が女を守るんだ!」


サラッとちょっと格好いいことを言う小平太に、乙女モードに入った名前はきゅんと胸を鳴らす。


「解りました。解ったので手を離して下さい」
「それとこれとは別の話だ」
「勘弁して下さい!」


しかし、これとそれとは話は別なので必死に抵抗する名前だった。





ツイッターでお世話になってる、スィグルミさんと雪介さんより素敵な萌えを頂いたので文章にしてみました。
竹谷とのどうでもいい会話も書けて楽しかったです。


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