夢/誕生日! | ナノ

振り回す七松家の男たち


!注意!
長男が二歳、次男が一歳、三男がお腹の中というちょっと昔のお話。





「かーちゃん、おれあれたべたいっ」
「にぎゅー!」
「もー…言うこと聞くって言うから連れてきたのに…」
「名前!私も肉食べたい!」
「父親の小平太がこれだもんなぁ…!」


ハァと溜息をついて、足に引っ付く長男と、抱っこしている次男と、服を掴んでキラキラした目で訴えてくる旦那に頭を抱える。
今日は日曜日。
せっかくなので家族皆で地元のデパートへとやって来たのだが、毎回「肉」と騒ぐ男たちに名前は「またか」と長男を掴んで、ペイッと投げ捨てた。


「にぎゅ!」
「にぎゅじゃなくて、肉です」
「にく!」
「可愛く言ってもダメです」
「名前、肉食べたい」
「格好よく言ってもダメです!もー、まずは他の買い物でしょう!?」


たくさん人がいる通路で大声をあげてしまい、他人からジロジロと睨まれる。
「すみません」とペコペコ頭を下げながら、先を歩き出す名前を、小平太と旦那に似た長男がついて行く。
まず最初に日用品が欲しくて見て回りたいのに、子供と小平太は「肉食べたい」とレストラン街を指さす。
「私の言うことちゃんと聞くなら連れて行ってあげる」と、来る前に約束したのにこれだ。因みに、小平太にも言っている。
それでも騒がしい子供たちに、名前は足を止めて振り返った。


「言うこと聞けないなら家に入れません。私はやると言ったらやる女です。解ってますよね?」
「「……」」
「お肉は最後に買って帰るから…。ほら、子供広場で遊んで来なさい」


向かっていた場所は、子供たち専用の広場。
休日とあってたくさんの子供たちが楽しそうに遊んでおり、それを見た長男も目をキラキラさせて「うん!」と元気よく返事をしてから向かった。


「小平太は二人をちゃんと見ててね」
「私も遊びたいなぁ…」
「絶対ダメ!」


抱っこしていた次男を小平太に渡し、中に入ったらダメだからね!と強めに注意をして、一人で日用品を買いに出かける。
大きなお腹で動くのはしんどいが、彼らを相手にするよりかはマシだ。
身体を動かすのが大好きなので、一日中子供広場に放置してても文句は言わないが、他の子供を泣かせてしまうから自然と買い物が早くすむ。
相手が知り合い、特に竹谷家や食満家なら問題はないのだが…。と思いながら会計を終わらせ、子供広場に向かうと子供も旦那もいなかった。
一瞬ドキッとしたが、誘拐されるような性格でもないし、まず誘拐できない。


「んー…じゃあレストランか?……ありえる…」


たくさんの荷物を乗せたカートを反転させ、レストラン街へ向かおうとすると、前から長男がやってきた。


「どこ行ってたの?ここにいてって言った「おしっこ!」……は?」
「かーちゃん、おしっこ!」


駆け寄ってきた長男は目の前で止まり、大きい声で報告してくる。
周りに小平太がいないか探したがおらず、プチパニックになっていると、ギュッと服を握ってきた。


「おしっこ、「も、もうちょっと我慢して!?小平太ーっ!」でた…」
「……ええええええ!?」


プルプルと震える身体と、涙目で上目使いをしてくる長男に驚きの声をあげる。


「……ぐすん…ごめんなさい…」
「い、いや…。うん、いいよ、大丈夫。我慢できなかったのはしょうがない」


謝る長男の頭を撫でて許してあげたあと、近くにいた店員さんに声をかけ、床を汚したことを謝り、清掃してもらうよう頼んだ。



「かーちゃん、おこってない?」
「怒ってないよ。しょうがないことだもん」
「ほんと?」
「うん、ほんと」


濡らしたズボンをその場で脱がしながら、笑顔を見せてあげると長男もようやく笑ってくれた。
やっぱり泣いた顔は似合わないなーと思いながらズボンを脱がせ、ぷりんとした長男の小さなお尻を周囲にさらす。
恥ずかしいけどこれ以上床や商品を汚さないためにも…と思って脱がせたのだが、何故かテンションがあがった長男はそのままの格好で走りだした。
店員から貰った袋にズボンを入れていた名前は気づかず、「さ、トレイ行こうか」と振り返ったときには遅く、長男は遠くにいた。


「………あんにゃろう!」


ぷりぷりのお尻をさらしたまま走っている長男に、名前は荷物をその場に残して追いかける。(危険だし、迷惑なので止めましょう)
子供のくせに足が早く、ちょろちょろと予測不能な動きをする長男。
いくら名前を呼んでも、「おにごっこー!」と勘違いしてさらにテンションをあげる。
途中警備の人に「お店で走らないで下さい」と注意されたが、構ってられず、無視をして子供を追いかける。(大変危険なのでしないで下さい)


「と、止まって下さい!」
「今それどころじゃないんです!息子が!」
「どこに息子さんがいるんですか!危ないですから走らないで下さい!」
「―――いたっ!コラッ、いい加減止まりなさい!お尻を晒すんじゃない!」


もっと言うなら、小さなぞうさんを晒すんじゃない!
それはグッと堪え、きゃっきゃと楽しそうに走っている長男を捕まえようとさらに速度をあげる。
勿論、他のお客さんにぶつからないよう…身体に負担がかからないよう…。


「っ小平太!捕まえて!」
「おっ?」
「にーぎゅー…」


どこかに行っていた小平太と、小平太に泣きついている次男に声をかけると、小平太はすぐに気づいて自分に走って来ていた長男をひょいっと掴んで、肩に乗せる。
長男は慣れているのか、小平太の肩に乗ると大人しくなる。
肩に乗った長男は息を整えながら、「かーちゃんとおにごっこ!」と嬉しそうに報告。
追いついた名前はゼェゼェと息を切らせながら小平太の服を掴んで、呼吸を整える。
その後ろで警備員も息を整えていた。


「名前、あまり走ったよくないぞ?」
「そ、そうなんだけど……その子が…!」
「ん?ところで何で下はいてないんだ?」
「かーちゃんがぬがせた!」
「誤解を生むような発言はしないで!かくかくしかじかです!」
「あーそうそう。それで名前を探しに行ってたんだ。トイレってどこだ?」
「にぎゅ……にぎゅううう!」


小平太の言葉を聞いた名前はさらに深い溜息をはいて、その場に座りこんだのだった。





フリーダムな長男と、肉を「にぎゅ」と発言する次男と、マイペースな小平太が書きたかった。
あとプリプリなお尻も書きたかった。こんな子が走ってたら確実に誘拐します(真顔)
小平太には常に振り回されたいです。


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