一世一代の大勝負! !注意! 妖怪パロ。好き勝手にやってます。時代錯誤?無視無視! ちょいっとばかり暴力・流血表現ありますのでお気をつけ下さい。 獣主→犬神 竹谷→送り狼(犬) 七松→朱点童子 潮江→牛鬼 立花→白面金毛九尾の狐 中在家→さとり 食満→鵺 伊作→座敷わらしから疫病神へ 与四郎→ヤタガラス 「おい、急げ!早くしねぇとあいつが来るぞ!」 「うるせぇな!黙ってお前も手動かせよ!」 数十名の男たちが森の中にいた。 昼間だと言うのに薄暗く、少しだけ肌寒いなか、男たちは力を合わせて木を伐採し、村へ運んでいた。 年々増えていく人口や、戦争のせいで木材が足りず、人間たちは森の奥深くまで伐採しに来た。 木材だけではなく、滅多に採取できないキノコや薬草なども大量にとり、何度も村と森とを往復している。 「―――いけない子たちだなぁ…」 静かに森に響く、青年の声。 男たちは手を止め、声がしたほうを振り向くと、木の枝に座って自分たちを見降ろしている男の子がいた。 狩衣に身を包み、頭には犬の耳。 すぐに誰だか解った村人の一人が、「犬神様…」と呟くと、男の子……名前はニッと犬歯を見せて笑った。 ゾクリと背筋に鳥肌をたてる村人たち。一人は後退し、逃げようとする。一人は手を合わせて謝っている。一人は呼吸を整えるのに夢中になっている。 それらを見たあと、静かに地面に降りると、名前の後ろからたくさんの狼たちが姿を現す。 狼たちは牙を見せて唸り声をたてると、村人たちは全員膝をついて頭を下げた。 「お許し下さい、犬神様!」 「ハッ。自分たちが悪いことしてるって自覚あんのかよ。余計たち悪いだろ」 「お許し下さい。お許し下さい!」 「まぁ?そんなに必死に謝るんなら俺も鬼じゃねぇよ。許してやるって」 「っありがとうご―――」 「でもよ、森に入ったお前らなんて、ただの獲物だから」 ニタァと笑ったあと、名前の周りにいた狼は一斉に村人に襲いかかり、悲鳴が森中に響き渡った。 逃げ出す者もいたが、狼の足に勝てるわけもなく、すぐに食われてしまう。 「あ、っが…!」 「ダメだろ、無駄に木を伐採しちゃあ…」 「おゆるし、を…!」 「そればっかで聞き飽きたっつーの。この木がどれだけ大切か、何度も教えたよな?教えたのにお前ら人間って…。ほんとバカだよ」 「っがああああああああ!!」 「それと、森に入るなら狩られる側だってこと、いい加減気づけ」 一人だけわざと残しておいた村人の前にしゃがんで、優しい顔で腕を引きちぎる。 大量の血が地面に流れ出し、男の意識が朦朧としかけているときに、反対側の腕も引きちぎった。 「あーあー、うるせぇなぁ人間様はよぉ。ほら、お前ら、そいつも食っていいぞ」 その言葉と同時に、まだ餌にありつけていなかった狼が最後の村人に襲いかかり、ようやく森にいつもの静寂が訪れた。 手についた血をペロペロと舐めていると、森の奥からガサガサという音が聞こえ、そのままの状態で目をそちらに向けた。 「―――っはぁ…!」 「やあ、八左ヱ門くん。久しぶりだな」 「犬神様……また…っ、こんな…!」 「こんなって言い方は失礼だろ」 森の奥から姿を現わしたのは、名前と同じ年齢ぐらいの男の子。 同じような服装をし、頭には犬耳、お尻には犬の尻尾がついている。 狼たちはまだ人間だったものを食べており、子狼は骨をしゃぶっていたり、臓物で遊んでいた。 八左ヱ門と言われた男の子は手で口を抑えながら表情を歪めるが、名前は汚れたまま八左ヱ門に近づき、肩を叩く。 「だってこいつらは獲物だぜ?食べて何が悪いんだ?」 「っ…しかし…!それでも会話ができるのなら……っ」 「相変わらず甘い考えだな。大事なご神木に手を出す奴らなんてどうでもいい。もっと言うなら、俺は人間が大嫌いだ」 「犬神様…!」 「なぁ、八左ヱ門。早くお前もこっちに来いよ」 八左ヱ門の首に腕を回し、耳元で優しく優しく囁く。 八左ヱ門は浅い呼吸を繰り返しながら、胃から溢れるものを必死で抑えている。 自分は妖怪だが、人間は好きだ。だから、こんな姿見たくなかった。助けたかった。 「人間はすぐに裏切る。そして愚かだ。あ、見ての通り脆いしな!」 「…っぐ…!」 「ほら、お前だって興奮してんじゃねぇか。血の匂いに酔ったんだろ?目の色が変わってきてるぜ?」 「ち、っがう…!俺は…っ、俺は人間が好き、なんです…!」 「とか言いながら、この間人間を襲っただろ?」 「ッ!?」 「知らないとでも思ったか?この森は俺の縄張りだぞ?知らねぇことはねぇんだよ」 「違う…違う違う、違うんです…!あれは…っ!あれは違うっ。殺したくて殺したわけじゃない!」 「八つ裂きにしといて言う台詞かよ。っち、ほんと面倒くせぇなお前は…。さっさとこっちに堕ちればいいのに」 名前がいくら声をかけても、八左ヱ門は人間と交流を止めようとしない。自分の仲間になろうとしない。 それが楽しくない名前は八左ヱ門から離れ、食べ終わって欠伸をしていた狼たちに近づいて、頭を撫でてあげる。 歩くたびにグチャと土ではない柔らかいものが足の裏につき、「ばっちぃ…」とその場から離れた。 八左ヱ門は小さな声で「ごめんなさいごめんなさい」と謝っていたが、それが何に対してなのか解らず、名前は背中を向けて森の奥へと消えて行こうとした。 しかし、その先から殺気を感じて足を止めた。 狼たちが全身の毛をたてて警戒するのを、名前が止める。 八左ヱ門も顔をあげて殺気が飛んでくるほうを見ると、上半身裸の男が姿を現わした。 「………こりゃまた…大物が…」 「あっ……あの、方は…!」 「お前が犬神の名前か?」 「っ。……初めまして、朱点童子の小平太様。こんな小さな森に何の用だ?」 「なに、ここに強い妖怪がいるって聞いてな。勧誘しに来た!」 「はぁ?」 頭に鬼の角を生やした男、小平太はニカッと笑う。 名前は怪訝そうな表情を浮かべるが、小平太は関係なく近づいて、ポンッと肩に手を乗せた。 「お前、私の部下にならないか?」 「全力で断る」 「なんで?」 「はぁ?だってお前……その………お、俺らそこまでお互いのこと解ってねぇだろ?」 「え?あ、そうか」 「だからよ、お互いのことをよく知り合ってだな…。そこから深い付き合いをするべきだと俺は思うんだよ」 「おお、なるほど!」 「……いや、なんか違う気がするけど…。とりあえず、俺はお前の仲間にも部下にもならねぇからな」 「なんで?」 「その、なんで?って言うの止めろ!俺は自由に生きたいの!この森から出たくねぇの!」 「うーん、でも私、お前のことが気になるしなぁ。強いって聞いた!」 「そりゃあ強いけどよ。呪いも使えるし」 「呪いも使えるのか!?」 「お?…おお、使えるぜ!すっげぇだろ!」 「凄いなお前!私そういうの使えないからな!」 「…………じゃあどうやって倒してんだよ…」 「拳?」 「マジかよ!おまっ…化け物か!」 「んー……妖怪?」 「あ、そっか」 二人声を揃えて、「アハハ!」と笑い、それを今まで黙って見ていた八左ヱ門はポカンと口を開けた。 しかし、すぐに小平太の後ろに何かの気配を感じ、警戒する。 次に現れたのは綺麗な顔をした狐の妖怪だった。 「バカ小平太。遊んでないでさっさとそいつを連れて来い」 「お、悪いな仙蔵」 「……女?」 「男だ。まぁ私が美しいから間違えるのは無理ないがな」 「性格は問題あるようだな」 「おう。きついぞ」 「黙れ。とにかく連れてこい。それと、その犬もな」 「え、あれもいるの?」 「使えそうだからな」 そう言ってニヤリと笑う仙蔵に、八左ヱ門は恐怖を感じて後退したが、後ろにドンッと何かがあたり、振り返る。 そこには、前にいたはずの仙蔵がおり、ニコリと笑って「捕まえた」と囁く。 「うぎゃあああああああ!!」 「いやー、狐とは便利な妖怪だな」 「あれ心臓に悪そうだな…」 「悪いぞ」 「美しすぎて悪いだろう?心拍停止したくないなら私についてこい」 「……あー…なんか面倒なことになってきたな…」 「いや、楽しいぞ!」 「そりゃあお前は楽しそうですけどよ…。とりあえず、話は聞いてやる」 「小平太、あとは誰が残ってた?」 「話聞けよ!」 「えーっと…、牛鬼の文次郎だろー、鵺の留三郎とー、ヤタガラスの与四郎!」 「………お前ら何してんだ?有名な奴らばっかじゃねぇか…」 「仙蔵が、面白いことしようって!あと、仲間にサトリの長次がいるぞ!」 「は?」 「犬神名前」 「なんだよ…」 「私はな、楽しいことが好きなんだ」 前を歩いていた仙蔵が振り返り、ニコリと人の良さそうな笑顔を浮かべ、名前に近づく。 後ずさりする名前の頬に手を添え、無駄に顔を近づいてから話した。 「人間相手に喧嘩を挑もうと思ってな。それの下準備をしている」 「……それ、面白そうだな。最高の喧嘩じゃねぇか!」 「だろう?勿論、人間嫌いな犬神様は私に力を貸してくれるよな?」 「あったり前だろ!」 「というわけで、お前の一番最初の仕事は、後ろのやかましいバカをしつけることから始めろ」 「うおおおお!怖ぇよこの人!超怖い!ぎゃっ、増えた!また増えた!」 「こりゃまた躾甲斐がありそうなことで…。でもまぁ任せろ!」 「名前ー」 「何だよ」 「この狼って非常食?」 「んなわけあるかぁ!」 ここに、人間嫌いの妖怪が集った。 始めるのは人間相手の喧嘩。きっと派手な喧嘩になるだろうと、八左ヱ門以外の妖怪は目を細めて笑ったのだった。 ▼ 前々から書きたかった妖怪パロ。男主バージョン! 最初はいい感じで殺伐と書けたのに、七松が出てきてからはダメになりました、すみません。 ( TOPへ △ | ▽ ) |