留三郎×獣主BL夢 分かってるよ。 そんなお前が好きだから、 見ていたいとも思うし、一緒にいたいとも思うんだ。 ・・・だけどな。 それでも俺が最優先じゃなきゃ嫌なんだよ!もっと構って! 〜飼い主と獣の休日〜 ある休日の日のこと。 六年長屋の一室で、生物委員会委員長こと名字名前は・・・ 「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 拗ねていた。 ふてくされたような顔をして恨みがましく見つめる視線の先には、彼の恋人であり、この部屋の主の一人である、用具委員会委員長の食満留三郎が手馴れた手つきで、背中にべったりと引っ付いている名前をものともせずに風呂用の木桶を修繕している最中であった。 事の起こりは数刻前、いつもなら日常茶飯事に起きている生物委員会が飼育している動物や虫の脱走もなく、補習や任務も入っていないので、名前は久方ぶりに留三郎に構ってもらおうと、彼の部屋を訪れたのであった(もう一人の部屋の主のことはこの時頭から抜け落ちている)。 しかし、間の悪いことに留三郎は自室で一人、委員会中にやりきれなかった修繕作業の真っ最中であった。 中へと入り名前を呼べば、留三郎は名前のほうを少し見て「適当に座って待ってろ」と一言言ったっきり再び作業に意識を向けてしまった。 そのそっけなさに少しだけ面白くなくてむくれそうになる。 が、名前もだが、留三郎の委員会は下級生が多いため上級生がやる仕事の量は自然と多くなる(名前の場合は竹谷と言う忠犬がいるためそれほどでもないが)。 ましてや留三郎の委員会はいつも何かとトラブルが絶えない学園全体の、それこそ木桶やボールの一つから、蔵の壁や校舎の屋根に至るまでの修繕や補修を担っている。 しかも上級生は留三郎一人だ。 仕事の量は名前が考えてる以上に多いのだろう。 そう考え直しておとなしくしていることを選択した名前は、作業の邪魔にならないように、けれども近くにいたい、と言う理由で肩にあごを乗せるような感じで留三郎に後ろからくっついたのだ。 それと同時に恨みがましそうな視線を彼から送られる。 「・・・重てぇよ。」 「・・・ほんとに邪魔だったらやめるけど?」 自分の恋人は自分に一等甘いことを知っている名前、そんなことを言いながら甘えるような視線で留三郎を横目に見れば、彼は少し頬を染め、言葉に詰まったようなひるんだ顔をしたあと「暴れんじゃねえぞ」と一言言って、また木桶に視線を向きなおして作業を再開させた。 「・・・へへー。」 引っ付いたままでいい事を許可された虎徹は、嬉しそうに顔を緩ませながら留三郎の手付きを肩越しにまじまじと見ていた。 大きくて長い指が淀みなく動きながら、木槌を操り壊れている箇所を分からないくらいに綺麗に直していく。 三年で初めてそれをみたときは、妖術や南蛮の物語に出てくる魔法の一種のように見えて、素直にそう言えば、照れたような顔で嬉しそうに「ばーか!」と言われたことが、まるで昨日のことのように思い出せた。 視線を指から手の甲へと移すと、ぱっと見れば分からない程度のものが大半だが、大小様々な細かい傷がいくつも付いていた。 きっと委員会や実習、個人鍛錬で付いたものだろう。彼はたとえどんなに簡単だと思われる実習でも決して手は抜かない(それが普通なのだが自分はどうにもやる気にむらが出てくることは自覚してる)。 どんな小さなことでも、文句を言ったりしながらもすべてきちんと、納得できるまでやり遂げる。 きっと手のひらにも似たような傷がたくさんあるのだろう。あの傷は、留三郎の六年間の努力と成長の証なのだ。 そう思うとあの傷すべてが愛しく思えてならないし、名前はあの手で撫でてもらったり抱きしめてもらえたりするのが大好きだ。 「(早くおわんねぇかなあ。そしたら名前呼んでもらって、思いっきりぎゅーってして貰いながらいっぱい頭撫でてもらって・・・それからそれから)」 作業する手をじっと見ながら、名前はこのあとの楽しい時間に思いを馳せた。その光景を通りすがりに見た五年のある双忍は・・・ 「とても微笑ましい光景で、食満先輩にくっついてる名字先輩がとても可愛らしかった。うちの変た・・ゲフン。変装名人もあれだけ可愛げがあれば僕もしつけなんかしなくて楽なんだけどねぇ・・・。(その横で膝を抱えてしょげているS・H氏を確認。原因は不明)(R・H氏)」 「尻尾振りまくって主人に懐いてる大型犬に見えた。普段からあれだけ大人しい感じなら私ももっといたず・・・ゲフン。交流を深めたいと思うんだけどな。だがしかし!可愛らしさで言えば私の(強調)雷蔵にかなう事はないがな!雷蔵の愛らしさは言葉にするのに・・・(この後R・H様が降臨されたため記述不可能)(S・H氏)」 ・・・と語ったという。 名前はもともとそんなに我慢強い方ではない。 学園の暴君と呼ばれている体育委員長よりはマシではあるが、辛抱や我慢と言う「耐える」と言うことがあまり得意ではないのだ。 そんな彼が我慢をしていると言うことだけでもある意味すごいことなのだが、あっという間にその限界は訪れる。 ましてや名前は彼に構ってもらいたくてここに訪れているのだ。 そんな彼の視線も意識も、自分を差し置いて無機物のほうへと注がれていれば、段々と面白くなくなってくる。 留三郎が作業中だということもどっかに行っているのか、つまらなさそうな顔をしながら引っ付いたままゆらゆらと留三郎の身体を揺らした。 しかしながらそんな状態に慣れているのか、はたまた想定内だったのか、名前のそんな行動にも動じず、留三郎は作業の手を止めることはなかった。 「・・・なーなーあー、とめさぶろー。まーだー?待ってるのあーきーた、ヒマー、構えー。」 「・・・あーはいはい。もう少しで終わるから待ってろ」 「あと少しってどれくらいだよー。ヒマだよー、遊びたいよー。構ってくれよー」 「もう少しはもう少し、だ。いい子だから、大人しくしてろ。な?」 そしたらちゃんと構ってやっから・・。 言いながらどこか呆れたように、けれど愛しそうな目でやわらかい笑みを浮かべ、大事な宝物を愛でるかのようにそっと頭を撫でてからまた作業に戻った。 「(・・・うー、ずっけええ!何だよ今の顔!何だよ今の撫で方!あんな顔してあんな事されたら大人しく待ってるしかないじゃんか!ああああああ!ちっくしょー!大好きだー!!)」 恋人の思わぬ行動と表情に、名前は顔を真っ赤にしながら再び大人しくなり、更に密着するように抱きつく力を強めながら、甘えるように背中に火照った顔を擦り付けたのだった。 そんな光景をたまたま部屋の前を通り過ぎた五年い組のとある二人は・・・ 「名前先輩が機嫌悪そうな感じなのにいちゃついてるようにしか見えなくて、甘ったるくて砂糖吐きそうだった。・・・ん?砂糖吐ければ甘味いらずで毎日いい感じ?でも味に変化がないのがなぁ・・・。(K・O氏) (砂糖を吐いた時点で人間としておかしいのだ勘ちゃん。てかもうそれは人間じゃないのだ勘ちゃん。(突っ込み提供H・K氏)) 「・・・甘い。・・・砂糖。・・・・砂糖を溶かして入れた甘い味がする豆腐なんていいと思わないか勘ちゃん!更には食紅で色付けして眼にも鮮やかに・・・!(H・K氏)(うん、それはもう豆腐じゃないと思うし、食紅はまだこの時代普及してないからね。うん、その案は忘れよっか兵助(突っ込み提供K・O氏))」 そして状況は冒頭に戻り、待ちくたびれた名前が、留三郎に引っ付いたまま拗ねているのである。 「・・・よし、これで終わりだな。おい名前。・・・名前?」 「・・・帰る。」 「・・・は!?・・・って、おいこら、ちょっと待て!」 恋人の突然の帰る発言に慌てながらも虎徹の腕をつかむ留三郎、しかし掴まれた途端に名前も離せとばかりに暴れだすので困惑するしかない。 「ちょ、待て暴れんな!落ち着いて大人しくしろ!一体どうしたんだ!?」 「うるせえな!どうせ留三郎は俺より修繕したり後輩構うのが好きなんだろ!?俺は帰ってやるから心置きなく修繕してればいいだろ!」 「・・・は?」 「だから!俺が帰れば好きなだけ修繕できんだろ!・・・って、なに笑ってんだよ!」 「ククッ、・・・いや、悪ぃ。お前があんまりにも可愛いこと言いやがるからつい、な・・・。」 「かっ、可愛いことなんて言ってねぇだろ!むしろ俺は文句・・・ッ」 留三郎の言葉に顔を真っ赤にして名前は反論しようとするも、留三郎からの口づけの前にそれは叶わぬ事となる。 時間にすればほんの数秒のことであったが、名前にとっては一生続くのではないかと思われるくらいに濃厚なそれを始めこそ抵抗していたものの、長年の付き合いゆえに弱いツボはすべて心得られていて更には構って貰えているということに、どこかで嬉しさを隠せない自分がいて、段々と抵抗する力を奪われついには大人しくその口づけを受け入れてしまっていた。 「・・・はぁっ。・・・な、なんだよ、いきなり、こんな・・・っ」 それでも口づけから開放されれば素直に甘えることが出来ない意地っ張りが顔を出してしまい、つい悪態をついてしまうが、留三郎はそれすらも余裕とばかりに笑みを浮かべながら力の抜けた名前を抱き寄せ自分のお膝の上に向かい合う形で座らせ、頬に額にと何度も口づけを落としていく。 「んぅ・・・留ッ・・・くすぐってぇから、・・・やめろってば・・・」 「本当に嫌なら今すぐにでもやめてやるぞ?」 「・・・その言い方は、ずりぃ」 「お前だって俺に言ってきた癖してよく言うぜ。・・・で?機嫌悪いのは直ったか?やっと修繕が終わったから、俺としては恋人を目一杯構って甘やかしたいんだけどな。」 まだ直ってないんじゃなぁ。と、余裕のある、どこか意地の悪い笑みを浮かべる留三郎。 そんな彼に名前はほんの少しの悔しさと満たされるような胸の疼きを感じながら留三郎に噛み付くような口づけをした。 「・・・俺に我慢させてほったらかした分まで構ってくれんなら許す。」 「・・・承知」 可愛い恋人のおねだりに、留三郎は笑みを浮かべながら再び名前に顔を近づける。 ・・・ここから先は、獣と飼い主、二人だけの時間。 ・・・の、はずなのだが。 「(・・・よ、吉野先生に言われて風呂桶受け取りに来ただけなのに、この空気の中割って入れってか!?確実死亡フラグじゃねぇか!つか名前先輩。めちゃくちゃかわい・・・ってそうじゃねえええ!このままじゃ風呂桶貰えねえ!かと言ってまだ死にたくねえ!どうする!どうするんだ竹谷八左ヱ門!)」 ・・・と、時間を置く、という選択肢を忘れ、歌舞伎役者並に頭を抱えて無駄に悩んでいる邪魔者がいた。 そんな彼を・・・ 「(竹谷のやつ、入り口前でなにやってんだ?つかいい加減にどっかいかねぇかな。まあ、見られても別に問題はねえけど、あんまり面白くねえしなぁ。)」 飼い主が気付いて対処を考えていたことは、いうまでもない。 ▼ ツイッターでお世話になってる、淦さんから頂きました。 頂き絵、ゆんけるさんから頂いた「獣主 その21」からの派生小説になります。 フォロワーさんにイラストを描いて頂き、違う方が小説を書いてもらえる。何ですか、ここは、天国ですか…! 素敵な夢小説、ありがとうございました! 感想は送り済みですーv ( TOPへ △ | ▽ ) |