破顔微笑 『今日も見事に犯人を捕まえた、スカイハイ!やっぱりキングオブヒーローは違う!』 「さすがですね、スカイハイさん!学ぶことばかりです!」 「いやいや、私もまだまだだよ。それに今日の活躍は君の援護あってのものだ。君もだんだんとヒーローらしくなっていって嬉しいよ。そして嬉しい!」 「私なんて…」 『スカイJr.の援護もよかった!さすがスカイハイの弟子なだけある!これからの活躍がますます楽しみです!」 「あ…。ありがとうございます!ありがとうございます!」 「ありがとう!そして、ありがとう!」 『でたー!師弟揃っての「ありがとう」連発!キングオブヒーローは礼節を大事にする!これぞヒーローの鏡。子供に見せたいヒーローNo1!」 ワアアアア!と盛り上がるテレビ番組を見て、名前は色々とメモをとっていた。 今日のHERO TVをキースと一緒に悪い点・良い点を見つけ、その場面を停止させて、どうしてダメなのか・どうしてよかったのか。と何度も振り返った。 反省会はヒーローを初めてからずっと続けている。そんな勉強熱心で、真面目なキースを見て、名前も見習いたいと思う。 いつも以上に気合いを入れ、解らないことがあれば臆せず聞くようにしている。 そんな真面目な名前にキースも名前以上に気合いを入れて答えてくれた。 「あれが本来のコンビというものよ。あんた達はどうなの?」 カリーナの言葉に、休憩中の虎徹、バーナビーは沈黙で答えた。 解っていたカリーナもさすがに反論していこない二人を見て、呆れるように息をついてトレーニングルームを出て行く。 「おじさんがもう少し考えてくれればいいのに…」 「え、俺が全部悪いの?」 「少し訂正します」 「お?」 「おじさんがもっと考えて行動してくれればいいのに」 「少しじゃなくなってるから!」 ヒーロー界初のコンビからはピリピリとしたムードが漂い(但しバーナビーからのみ)、最近コンビを組んだ二人からほのぼのとしたオーラが漂っている。 ここまで対照的な2組のコンビに、ヒーロー界の保護者的な存在であるネイサンとアントニオは「いつものことか」というように気にすることなく軽いトレーニング終わらせた。 「―――よし、今日の反省会はここまで!お疲れ様、名前君」 「ありがとうございます!お疲れ様です、師匠」 メモを取ったノートとペンを大事そうにカバンへと収める。 キースも録画されたHERO TVを停止させ、カバンへと収めて名前を振り返った。 トレーニングはこれで終了。夜も遅いので帰ろうと準備をしていた名前はキースから視線を感じて同じく振り返った。 「どうかしましたか、師匠?」 「名前君、お腹は減っていないかい?」 「……そう言えば…」 「もしよかったらこれから一緒に食べないか?」 「も、勿論です!ご一緒させて下さいっ」 顔を綻ばせ、嬉々とした足取りで更衣室へと向かう。 キースもカバンを持って更衣室へと向かおうとしたら、ネイサンによって止められてしまった。 「ファイヤー君、どうかしたかい?」 「んっふふ〜、二人とも本当に仲がいいのね」 「そう見えるかい?」 嬉しそうに笑って聞くキースに、ネイサンはさらに口角をあげて笑う。 「見えるわよー。師弟っていうより恋人っぽくも見えるわ」 「恋人?」 「だってこれからディナーを一緒にするんでしょう?コンビじゃあそんなことしないわ」 そう言って虎徹とバーナビーに視線を向けると、二人は…というよりバーナビーが虎徹をネチネチと責めている場面だった。 「それはきっと名前君が私を慕ってくれるからだよ。そう、慕ってくれるからだ!」 「あなたも満更じゃなさそうね」 「勿論!彼女は素直でとても努力家だ。邪見に扱うなんてできないよ」 「んー…キングオブヒーローは鈍感さんね。まあいいわ、ごゆっくり〜」 持っていたタオルを首に回し、ネイサンもトレーニングルームを後にする。 ネイサンの言葉に首を傾げ、急いで更衣室へと向かった。 「あ、師匠!」 「すまない名前君。すぐに準備するからもう少しだけ待っててくれるかい?」 「いくらでも待ちます!」 更衣室へ向かう途中、私服に着替えた名前と遭遇し、すぐに別れた。 男子更衣室の近くで静かにキースを待ちながら名前はワクワクする胸を抑える。 故郷を離れ、ポセイドンラインの寮で自炊しかしていなかったため、外食は初めて。 いや、外食自体が初めてで、楽しみでしかたないと言った表情を浮かべる。 ニヤニヤしてしまう顔を無理やり抑えつけるも、抑えきれない。 「待たせたね」 「いえ!」 「じゃあ行こうか。ところで何か食べたいものでもあるかい?」 「えっと…。外食が初めてなので師匠にお任せします」 「任せたまえ!」 身長差はあるものの、肩を並べて建物を出て街を歩く。 ニヤニヤを抑えることができないでいると名前を呼ばれ、慌てて平常心を取り戻す。 「外食をしたことはないのかい?」 「はい。してみたいとは思っていますが、どうしたらいいか全く解らないので…」 「じゃあ毎日自炊だね?」 「はい」 「それは素晴らしい!実に素晴らしい!私もできる限り自炊をしとうと思っているのだが、時間がないときはついホットドックやハンバーガーですませてしまうのだよ」 「でも少し憧れます」 「そう言えば職場でも何か持ってきていたね。確か…ベント?」 「お弁当ですね。先日の残り物を詰め込んだものですが、節約にはなります」 「一度しか見たことないが、あれはとても美味しそうだった!」 「……あの、師匠。もし宜しければ一緒にお作り致しましょうか?」 「え!?い、いいのかい!?」 「残り物で大変申し訳ありませんが、苦ではありません。それにいつもお世話になっている師匠に何かしたいと常々思っていました」 「それは嬉しい。とても嬉しいよ、名前君!是非お願いしたい!」 「未熟な腕ですが精一杯作らせて頂きます!」 差し出がましいと思いつつ、感謝の気持ちをこめて「お弁当を作る」と提案したところ、キースは名前が思っていた以上に喜んでくれ、名前もほっと息をついた。 お弁当を作ってあげる。という約束をしたあと、キースは目的地に近づいたことに気がつき、名前の肩をくいっと引き寄せ、「ついたよ!」とお店を指さす。 一瞬ドキッとしたものの、初めてみるファーストフード店に胸を躍らせた。 「す、凄いです…!キラキラしてるっ…」 「私のお気に入りでいいかい?」 「はい、お任せ致します!」 興味深々に店内を見回す横で、キースがいつものようにホットドックと飲み物を注文する。 すぐに用意され、名前を呼んで店内の空いた席に座らせた。 「何だかおかしいね」 「―――あっ…。す、すみませんキョロキョロしてしまって…」 「いや、そうじゃないよ」 笑みを浮かべながら名前の前にホットドックと飲み物を置いて、自分もストローの袋を破って乾いた喉を潤す。 名前が見よう見真似でキースと同じことをして、口に含んだ飲み物に感動の声をもらした。 「師匠、これ凄いです!凄く甘い!蜜柑と同じ味がします!」 「それはオレンジジュースだよ。もしかして飲み物も初めてなのかい?」 「はい!故郷では水やお茶しか飲んでいませんでした。凄いところですね、ここは…。綺麗だし皆さん元気ですし、美味しいし…」 興奮を通り越した名前は比較的落ちついた様子で再びストローをくわえる。 「いつも食べてるものが何だか違って見える」 「え?」 「名前君と一緒に食事をするととても美味しい。そして美味しい!名前君の笑顔も素敵だ!」 キースの言葉に少し恥ずかしくなって、目を反らした。 でも嬉しい気持ちが勝って、容器をテーブルに置く。 「私も師匠と一緒に食事をすると美味しいです。師匠の傍に置いて下さるだけで私は幸せです」 頬をほんのり染め、はにかみながら素直に気持ちを伝えるとキースも嬉しそうに笑ってくれた。 (200.0704) ( △ | ▽ ) |