夢/贈り物 | ナノ

おかえり悪友


!注意!
パロになります。設定などは全て雰囲気で使ってますので、細かいことを気にしない人向け。
七松→空軍。戦闘機に乗って空を自在に飛ぶ。エース。
獣主→海軍。空母「幽霊船」の戦闘員。それなりの階級は貰っている。





「え、留三郎たち帰ってくんの?」
「ああ、無事に任務を終わらせたからな。とは言っても、先に小平太が帰って来るみたいだ」
「へー…いつもは最後なのに珍しい…」
「何でも愛機を傷つけられたらしい」
「へー!」


ニヤニヤと白い軍服を着た青年が笑えば、目の前にいた文次郎は「ほどほどにしておけよ」と言って書類を名前の頭にポンッと乗せ、背中を向けた。
書類を受け取った名前は締まらない口元のまま、狭い通路を歩き、甲板へとあがる。
甲板では既に戦闘機の受け入れ準備が始まっており、名前は背伸びをして空を見上げた。


「小平太がミスするなんて珍しいな。ま、これをネタに遊べるからいいけど!」


空軍のエースである小平太が愛機を傷つけるなんてとても珍しいことだった。
嫌いな人間が愛機に触れただけで殺気を飛ばすような人間だ。
きっと傷つけられてご機嫌斜めなこと間違いない。それでどうやって遊ぼうか考えていると、フッと顔に影が差してニヤッと笑う。小平太のお帰りだ。


「おーい、お前らー。あんまり小平太に近づくなよー。機嫌悪いからなー」


書類で道を開けろと言いながら、空母に降りてきた戦闘機に近寄る。
#名前#の言葉に戦闘員や長次以外の整備士は小平太の戦闘機から離れた。


「お帰り、小平太」


戦闘機を見上げ、笑いを堪えながら声をかけると、ムスッとした表情の小平太が顔を出した。
ヘルメット、ゴーグルを外して無言で戦闘機がから降りたあと、名前の隣にいた長次に「すまん。あとは任せた」とだけ素っ気なく伝えて歩き始める。
着ていたジャケットのチャックを下ろし、脱いで腰に縛ったあと今度は腕まくり。
どんだけ暑かったんだよ。と突っ込みを入れながら小平太の隣に並んだ。


「ただいまぐらい言えよなー」
「うるさい」
「ありゃ、ご機嫌斜めだ。どうした?何かあったのか?」
「…」


鋭い目つきで睨み、殺気を飛ばしてくる小平太は凄く怖かった。
きっと幹部以外だったら金縛りにあってしまうだろう。それほど恐ろしいのだが、名前は先ほどと変わらず笑っている。


「愛機、やられたんだって?珍しいな」
「…」
「まぁでもお前のミスだしな。俺にあたるのは間違えてるぜ」
「解ってる。だけどわざわざ話しかけてくるな。性格が悪いぞ、名前」
「そう言うなって。心配してたんだぞ?」


いくらエースだって言われていても、攻撃を食らってしまったら終わりだ。
これでも心配してるんだぜ?と小平太の背中を叩く名前だったが、小平太は怪訝そうな表情を浮かべて歩く速度をあげた。


「名前、ニヤついてる」
「うっそ、マジかよ!」
「やっぱりバカにしてるんじゃないかっ。もういいから仕事に戻れ!」
「小平太に言われてもなぁ。とりあえず、前の約束覚えてるか?」
「………」


歩いていた足を止め、若干俯く小平太。
ハァ…。と溜息を吐いたあと、首筋をポリポリとかきながら「で、何したらいいんだ?」と疲労感漂う表情で#名前#を見た。
先ほどより楽しそうに笑っている1名前は、さながら「鬼畜将校」と言われそうだった。
前の約束。というのは、どっちかが先に任務でヘマをした場合、どっちかの言うことを聞くというもの。
どうせろくなこと言わないんだろな、と小平太は溜息を吐いたのだった。
心の声を聞いてからか、「お前の考えることも、ろくでもねぇことばっかだからな」と小平太の首根っこを掴んで、自室へと連れて行く。


「ほい、じゃーこれ吸って?」
「……私、煙草嫌いなのに…」
「だからだろ?所謂罰ゲームってやつだ。ほら、いけどんで吸えって!」


自室に連れ込んで、滅多に使わない机の引き出しから一箱取り出し、一本の煙草を小平太の口に押し込む。
「むー…」と唸りながらも一度目を伏せ、ジッポを投げてはキャッチして遊んでいた名前から横取りし、煙草に火をつける。
ジジッ…と燃えたあと、口から煙草を離して白い煙を吐き出した。


「まずい……」
「生きてるって実感しただろ?」


咳き込むことはないが、舌を出して文句を言う小平太に、名前は静かに俯いた。
煙草の箱をギュッと握りしめて、バレないように小さく息を吐いたが、ちゃんと見ていた小平太はニヤッと笑って名前から煙草を奪う。


「私が死んだかと思ったか?」
「…。おーよ、普段死なねぇ奴が攻撃された。って言われりゃぁ、ビックリもするさ。ほんっと頼むから死ぬなよな」


死と隣り合わせの世界だから、割り切っている。きっと死んだら泣きはするだろうが、凹むことなんてないと思う。それが亡くなった相手のためだとも思う。
だからと言って、死んでほしいわけじゃない。仲のいい友人なら尚更だ。


「文次郎から知らせを聞いた瞬間、心臓止まりかけたぞバカが。心配させるんじゃねぇよ」
「名前は本当に私のことが好きなんだな」
「ええ、アイシちゃってますヨ?」
「そうかそうか。ならお前も吸え!」


煙草を一本取り出し、名前の口に無理やり突っ込み、胸倉を掴んで自分に引き寄せた。


「ほら、火分けてやるから吸え」
「ざけんな。俺も煙草大嫌いなんだよ」
「私だけに吸わせておいてか?」
「これはお前の罰ゲームだからな」
「いいから吸え。吸って生きてるって実感しろ」
「この暴君が…」


胸倉を掴む力は強く、抵抗しても解放してくれる様子はなかった。
自分は全く関係ないのに何故…。
諦めて小平太の煙草から火を分けてもらい、独特の白い煙を胃袋に運んでから、ゆっくり外に吐き出した。


「まずい…」
「だろう?」
「くそまずい。ほんっと何が美味しくて吸ってんだろうな…」
「じゃあ何で名前は煙草なんか持ってたんだ?」
「後輩から没収したのでーす」
「……尾浜?」
「勘ちゃんと三郎くんと、その他諸々…」


煙草をくわえたまま、指を折りながら答える名前と、同じく煙草をくわえたまま笑う小平太。
まずいまずい。と言いながらも煙草は吸い続け、どんどん短くなっていく。


「ともかくさ、生きて帰って来てくれてよかったよ」
「おう、すまんな心配かけて」
「いーえ。留さんたちも大丈夫なんだろ?」
「勿論!」
「じゃあもういいよ。次からはもっと気をつけて頑張れよな」
「名前もな。お前らは狙われやすいうえに、逃げれないんだから気をつけろよ」
「お空から頼れる奴らが守ってくるから大丈夫さ。で、機嫌も元に戻りましたか?」
「おかげでな!」
「そりゃよかった。あの顔で空母にいられても困るからな」
「おおっ、戦闘班のリーダーっぽい台詞だな」
「リーダーなんだよバカッ。もう一本吸わすぞ!」
「なはは!それは勘弁だ」


二人して笑って、くわえていた短い煙草の火を指で潰したあと、近くにあったゴミ箱に投げ捨てた。


「さ、文次郎に怒られる前に仕事に戻るか…」
「何の仕事なんだ?」
「手伝ってくれんの?えーっと、前回破損した武器の報告から始まり「すまん、何でもない」





ツイッターでお世話になってるちゃまさんから簡単リクエスト!
とりあえず、七松が書きたかったので空軍パロを書きました。
煙草ネタとかも混ぜて、すっごくすっごく楽しかったんですけど、よかったでしょうか?

とりあえず七松が不足しているので、何かの繋ぎになればいいのですが…(笑)
ありがとうございました!



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