正反対 !注意! ・夢主コラボ夢です。 (めすみけ。さんの夢主「隼人」くんをお借りしてます) ・妖怪パロ !簡単設定! ・隼人くん→烏天狗(名前変換不可) ・三郎→化け狐 ・八左ヱ門→送り狼 ・名前→犬神 人間も妖怪も、自分以外の生き物が全て嫌いだった。 法力が強いだけで人間からは忌み嫌われ、妖怪どもは自分を食べようと襲ってくる。 何度か人や妖怪を信じようとした時期もあったが、やはり最後に信じられるのは自分だけだと、血で汚れた手を見降ろす。 『それでもっ…。それでも君だけは―――』 ふと暑さで目を開けると、ぼろぼろになった寺の屋根がうつる。 何度か瞬いたあと、ゆっくりと上半身を起こして小さく欠伸。 「……久しぶりに見た…」 夢のとき同様、手を見降ろすといつもと変わらない手のひら。 一度手を握りしめたあと、背伸びをして外へ出ると頭に狐の耳、お尻に二本の尻尾を生やした青年が隼人を迎えた。 青年、三郎が「おはようございます」と挨拶すると、ふいっと視線を外し、「おはよう」と返してからその場に座る。 今日は人が寄りつかない荒廃した寺で睡眠をとっていた。 十分な睡眠をとるため、勝手についてきた化け狐の三郎に見張りを任せていたが、見張りだけではなく、朝食の準備まですませていた。 「隼人さん、食べますか?」 「まだいらないよ。起きてすぐは食べれないさ」 「そうですか」 少しの間ボーッと空を見上げ、時々みかける鳥を見て、「はぁ…」と溜息を吐く。 そのたびに、手持無沙汰になった三郎がチラチラと見てきた。 「なに」 「え!?あ、いや…」 綺麗に整った顔。どちらかと言えば女性らしいスラッとした身体。そして身体中から放つ独特の雰囲気。 腰まである髪を無意識に弄りながら、「今日は何をしようか…」と悩む。 悩むと言っても、大体は色々なところに足を運んでは、人間や妖怪を傍観している。 あれらはいい暇潰しになる。と、三郎にとびっきりいい笑顔を見せて言ったのは、ここ最近の話。 「どいつもこいつも同じようだね」 「そうですね。同じようなやりとり、行動しかしていません」 「学習能力のない奴らは嫌いだよ。ヒトも妖怪も」 はっ!と口元だけで笑うと、三郎はキュッと口を引き締める。 人間だった生前の隼人に助けられた三郎は、隼人に恩を返そうをしていた。 しかし彼は妖怪が嫌いだった。人間も嫌いだった。 だから姿を見せることなく、ただひたすらこの気持ちを抑えつけていたのだが、隼人が妖怪になったと聞いて、いてもたってもいられなくなり探し続けた。 見つけたときの感動は、口では言い表せない。しかし、忘れることなどできない。 それからは隼人の傍に付き添い、「邪魔」と言われても彼の傍から離れなかった。 そしてとうとう、「三郎は便利だね」と嫌味のような口調で言われたが、それすらも嬉しく、二本の尻尾が左右に揺れた。 「何でああもヒトって執着してるのかねぇ」 「依存し合わないと生きていけないからです」 「妖怪同士もつるみあってバカみたい」 「ええ。……あ、でも前に隼人さんのような妖怪がいると小耳に挟みました」 「ふうん?どんな妖怪?」 嫌いではあるが、興味はある隼人。 人間だったころから色々な情報を仕入れるのは好きなので、三郎の話に目を細める。 その目を向けられた三郎の心臓は飛び跳ね、視線をパッと離した。 「(どうもあの人の目は苦手だ…)」 あの妖艶な目に見られると身体が痺れる。何か術でも使ってるんじゃないか?ああ、そう言えば法力が強かったな。そのせいか…。 そう自分を説得するも、頬が熱くなっており、手で口元を隠してから「この近くに…」と喋り始めた。 「犬神がおられます」 「犬神……」 「その方も自由奔放に動かれているようで…」 「へぇ」 もしかしたら自分と同じかもしれない。 興味が湧いたようにニヤリと笑って、三郎が持っていたおにぎりに手を伸ばす。 隼人の小さな口用に作られた、小さめなおにぎりを持って背中に生えている羽を精一杯伸ばした。 「ちょっと様子でも見てこようかねぇ」 「お供します」 「勝手にどうぞ」 目を鳥のように鋭くさせ、地から離れる。 三郎は狐へと戻り、隼人を見失わないよう懸命に追いかけた。 「なぁなぁ!」 「犬神様、そんな近くで大声を出されても困ります」 「お前が俺の話聞かねぇからだろ」 隼人が探している犬神こと名前は、とある森の入口付近の枝に座っていた。 他の枝に座っている一匹の妖怪、送り狼に声をかけると、彼…八左ヱ門は名前を見ないまま答える。 それがさらに気に食わなくて、枝に立ち上がり八左ヱ門の隣に飛び渡ると、葉っぱが数枚地面に落ちた。 「人間なんて忘れて、こっちこいよ」 「はぁ…。何度も言わせないで下さい。俺は人間が好きなんです」 「人間なんて信じんな。あいつらはすぐ裏切る。だから早くこっち来い。こっちならお前を裏切る奴なんていねぇ。俺もいる」 「ありがたいお言葉ですが、俺はまだ人間…あいつを信じたいんです」 「だぁかぁらぁ!そいつもいつかお前を裏切るって言ってんだろ!」 いくら名前が強い口調で言っても、八左ヱ門は苦笑いしか返さない。 犬神名前は呪いの力を持つ妖怪で、隼人同様に各地を渡り歩いている。 反対に八左ヱ門はこの場所に留まり、人間たちをいつも見ている。森に入った人間の手助けをすることだってある。 そんな彼が気に食わない名前。妖怪のくせに人間と仲良くするなんて言語道断だと言わんばかりに、こちらの世界へ引き入れようとするが、何度も断られている。 「おや。僕がお前から聞いた犬神様は、こんな奴なのかい?」 「私が聞いた情報は少し古いのかもしれません」 「―――誰だテメェら…」 「……」 そんな二人のもとに、空から一匹の妖怪が舞い降りる。 羽音をたてて枝に立ったあと、すぐ横に狐の妖怪が姿を現わす。 気配を感じなかった名前は目を鋭くして二人を睨み、殺気を放つ。 隣にいた八左ヱ門も驚きながら警戒する。 名前の殺気に三郎は息を押し殺されかけたが、隼人はふふっと笑い、殺気を受け流す。 「こんにちは、犬神様。僕は烏天狗の隼人。こっちは…まぁ、勝手についてきてる三郎くん」 「…」 「……ああ、聞いたことあるぜ。覗き見烏がいるってな。今日は俺らを覗き見か?」 「覗きなんて失礼な。情報を集めてるだけさ」 「それを覗きって言ってんだよ。趣味わりぃな」 ピリピリと放つ両者の殺気は凄まじく、まさに「大妖怪」といったところ。 だが、三郎も妖怪だ。しかも隼人より昔から。 名前がいつから妖怪をしているか解らないが、大事な人の悪口を言われ、黙ってはいられない。 殺気に意識を飛ばされないよう食いしばって名前を睨みつけ、指を二本立てた。 化け狐の三郎は術が得意だ。隼人と出会ってからさらにその力を磨き、そこらへんの化け狐より強くなった。 呪いをかけてやろうと口を開けると、 「調子に乗るなよ小童。貴様ごときが呪いで俺に勝てると思うな」 瞳孔を細くさせた名前に睨まれ膝をつく。 逆に呪われてしまう…。 危険を感じた三郎だったが、逃げることすらもできない圧力に意識を手放そうとした。 「ふうん、結構強いんだね。でも、だからって調子に乗ってもらっては困るなぁ」 隼人が名前の近くの枝に移動し、手のひらを名前に向けた。 瞬間、三郎の身体は軽くなり、今度は名前が眉間にシワを寄せて袖で口元を隠す。 「お前…元人間か」 「さぁどうだろうね」 「法力は人間しか使えねぇからな…」 「ああ、バカじゃないんだ」 人間のころ使えていた力が、妖怪になった今でも使える隼人はそこらへんの妖怪より強く、いつの間にか「大妖怪」とまで言われている。 そんな彼はニコニコと笑ったまま、未だに手のひらを名前に向けていた。 隼人の手の周りだけ陽炎のように歪んでおり、それが法力を使っている証。 一緒にいる三郎すら滅多に見れない力。 そんな力を、初めて出会った奴に使っているのが悔しい三郎はギリッと奥歯を噛みしめた。 「ねぇ、苦しいかい?」 「テメェ…いい性格してんな…」 「そんなことよりいいの?隣の子犬ちゃん、すっごく苦しそうだけど?」 隼人に言われ、忘れていた八左ヱ門を見ると、先ほどの三郎のように苦しそうに俯いていた。油断すれば地面に落ちてしまうほど、ぐったりしている。 しかし、名前はニィと笑って犬歯を隼人に見せた。 「この犬がどうなろうが俺にゃあ関係ねぇよ。これぐらいで死ぬ弱い奴には興味ねぇんで」 「………」 「執着してねぇし、興味ない」 名前の台詞に目を少しだけ見開き、そのままの表情で口に小さな三日月を作る。 名前に手のひらを向けるのを止め、背中を向けたまま三郎の隣に戻って「犬神」と呼んだ。 「僕、君のこと好きだよ」 「唐突だな。ああ、俺も好きだぜ。テメェのその顔だけはな」 「じゃあ、また遊ぼうね」 「断る!」 舌を出して嫌そうな表情を浮かべる名前とは対照に、隼人は怪しげな笑みを浮かべたまま空へと飛び立つ。 飛び立つさいに、つむじ風を起こして名前と八左ヱ門の視界を奪い去る。 三郎は解っていたし、慣れているので風の向こうにいる名前を睨みつけて、隼人を追いかける。 「見つけた、僕と「同じ」やつ…」 「あんのクソ烏!今度来たら焼き鳥にして食ってやる!」 性格が合うはずのない者同士が出会った、とある日のことだった。 ▼ 相互の「めすみけ。」さまへ。 初の夢主コラボにどっきどき! 本家、隼人先輩ととても知的で美しくて、格好いい方なので「bkm」からどうぞ! ( TOPへ △ | ▽ ) |