夢/贈り物 | ナノ

小競り合い


「え、八左ヱ門が小さくなったの?かわいー!」
「ちょっと名前、はっちゃんばっか可愛がってないで俺のことも構ってよ!」
「名前、…その、俺……あ、豆腐っ!そうだ、豆腐があるぞ!」
「このガキを今すぐ先輩たちに預けてこよう。邪魔だ」
「まぁまぁ…。八左ヱ門、こっちおいで。名前の迷惑になるだろ?」
「雷蔵っ、迷惑じゃないよ!いつもの八左ヱ門はちょっと迷惑だけど、子供だよ?可愛いよ?抱っこしていいかな…可愛すぎる…」
「あー!はっちゃん名前の胸触ってる!揉んでる!ずるい!」
「名前ー…。豆腐のほうが可愛いぞ…。ほら、高野豆腐もあるから八左ヱ門から手を引け…」
「とんだエロガキだな。小さくなっても煩悩の塊、さすが八左ヱ門だ。さ、名前寄越せ」
「名前、子供だからって甘やかさないほうがいいよ?ほら、いつ戻るか解らないし…」
「そうだけどさー!あはは、八左ヱ門くすぐったいよ。でも可愛いから許す!そうだ、一緒にお風呂でも入る?」


名前の優しい微笑みに「入る!」と腹の底から大声で返答をすると、後頭部を叩かれてしまった。
ぼやける視線で叩いた犯人を振り返ると、三郎が不機嫌な顔で「やかましい」と鍋を持ったまま答える。
八左ヱ門は涎を垂らしたまま周囲を確認すると、全員がコタツに入って暖をとっていた。
雷蔵は笑いながら「涎垂れてるよ」と教えてくれる。兵助は豆腐を食べたまま八左ヱ門を凝視している。勘右衛門は一度八左ヱ門を見たあと笑って、目線が手元に戻した。


「八左ヱ門、寝言大きいよ…」
「あれ…?名前?」
「寝ぼけすぎ。ほら、もう少ししたら鍋完成するよ」
「作ってるのは私一人だけだがな」
「鍋なんて具をぶっこむだけじゃーん」
「勘右衛門にはやらん」
「わー、ごめんって!」


怒って鍋をコタツの上におくと、全員がそれぞれ食事の支度を始める。
そこでようやく自分がコタツでうたた寝していることに気づき、涎を袖で拭って自分も食事の支度を手伝った。


「ところで八左ヱ門。なんの夢見てたの?」


名前の質問にご飯を大量につぎながら八左ヱ門は唸る。
少しの間考え、思い出した八左ヱ門はニヤニヤと嬉しそうな顔で答えた。


「俺が小さくなってさ、名前に抱っこされて可愛がられる夢」
「へー…。八左ヱ門が小さくなったら可愛いだろうね」
「だろ?だから俺と「はいはい。そういうことはご飯食べてからねー」
「名前、俺と結婚して俺の子供産まない?」
「勘右衛門!雷蔵が折角八左ヱ門を止めたのに…。兵助、お前の親友だろ。なんとかしろ」
「名前、勘ちゃんが嫌なら俺でどうだ?」
「お前は一生豆腐と仲良くしてろ!」


三郎の怒鳴り声を聞いて名前も笑う。
いつものノリとテンションに飽きることはない。
八左ヱ門がついだご飯をテーブルに並べ、それぞれ座っていた位置に腰をおとして全員が手を合わせる。
名前の左隣に勘右衛門が座り、それから時計回りに、兵助、雷蔵、三郎、八左ヱ門とコタツを囲っている。


「三郎さん、いつも美味しいお食事をありがとうございます」
『ありがとうございます』
「いいか、残さず食えよ」
『いただきます!』


今日で通っている大学が冬休みに突入し、折角なので三郎の家で鍋をすることになった。
鍋の材料費は八左ヱ門と名前持ちで、お菓子は勘右衛門と雷蔵担当。兵助はお酒担当だ。
買い物を終わらせ、夕食までの時間を八左ヱ門はお酒を飲んで、いつの間にかコタツで寝てしまっていた。
三郎に頭をさげたあと、楽しい鍋パーティの始まりである。


「でさ、夢の話に戻るんだけどよ。名前のおっぱいが気持ちよかった。めっちゃ揉んでた」
「なにそれ。食事中に変なこと言わないでよ…」
「名前、はっちゃんから離れたほうがいいよ。食欲と性欲が強いケダモノだからねー」
「名前、勘右衛門からも離れたほうがいいぞ」
「勘右衛門と八左ヱ門に挟まれたらセクハラされるよ?ほら、僕と三郎の間においでよ」
「いや、三郎もナチュラルにセクハラしてくるから、俺と雷蔵の間にしたほうが…」
「どこにいても安全じゃなさそうだからこのままでいいよ…。ともかく八左ヱ門、変なこと言わないで」
「いや、でもおっぱい揉んでたんだぞ?」
「鍋をつつきながら言わないでよ…。しかも真顔で」
「俺、名前の胸はいつでも揉みたいと思ってる」
「勘右衛門も止めて!エロ左右はほんと対処に困る…」
「で、起きたら名前のおっぱいないじゃん?それって寂しいじゃん?つーわけで揉んでいいですか?」
「ご飯食べながら言うことじゃないのだ…。はっちゃん、自重って言葉知ってるか?」
「名前…僕なにもしないからそこから脱出したほうがいいと思うよ…」
「このバカ左ヱ門!お前もうコタツから出て行け!」
「なんでだよ三郎!名前のおっぱいだぞ!?お前揉みたくねぇの!?」
「っバカが!」
「………勘右衛門…。お願いがあるんだけど…」
「なぁに、名前。名前からのお願いなら何でも聞くよ?」
「鍋つつきながらコタツの中で足を絡めてくるの止めて…。足癖悪すぎ…」
「だけど、可愛くおねだりしたらね?」
「……」
「勘ちゃんの足が気持ちよすぎて感じちゃうから止めて?って言ったらいいよ」
「兵助、雷蔵。そっちに行っていい?」
「勿論なのだ」
「ちょっと待てよ名前!行くなら一回おっぱい揉ませて下さい!」
「白熱した顔で言うねぇ。絶対に嫌だ。大人しく鍋つついてて」
「じゃあ俺、名前の胸つつきたいな。もっと言うならクリ「勘右衛門!食事中にそういうこと言うの止めてってば!」
「雷蔵っ、勘右衛門の口を押えるのはいいが味噌汁倒した!う、動くな!」
「三郎、私も手伝うよ!兵助、ちょっと豆腐食べてないで手伝ってよ!主に勘右衛門の相手を!」
「すまない、この豆腐を堪能してからな」
「もー!って八左ヱ門、なに人の胸凝視してんの!?」
「いや、おっぱい揉みたいなと…」
「「いい加減にしろ!」」


何をしてても騒がしい六人組だったが、なんとか食事を終わらせることができた。
片付けは名前と雷蔵の任せ、残りの四人はコタツに潜り込んでぬくぬくと食休み。
兵助に至っては眠たそうに目をシパシパさせていたが、そろそろ限界を迎えていた。


「眠たそうな兵助見てたら俺まで眠くなってきた…。寝たらまたあの夢見れるかな。今度こそ名前のおっぱい揉んでやる」
「いいなー、俺もそんな夢みたい!あ、夢じゃなくて現実で揉めばいいのか。今日の夜一緒に寝よーっと」
「止めろって言ってるだろ」
「でも三郎も揉みたいって思ってるんでしょ?一緒に揉む?俺別に三人でもいいけど?」
「あれ、なんでか知らないんだけど俺がハブられてる…」
「誰が混ざるか。因みに私は独占したいタイプだ」
「うっわー…いないときにそういうこと言っちゃう?三郎はムッツリだよねぇ」
「ねぇ、勘右衛門。なんで俺ハブったの?なぁ!」
「まぁお前らは望み薄いだろ。いっつもあんな感じで名前を困らせているしな。兵助は…本気出したらどうなるか解らんが安全だ」
「眠い……。あぁ、でも……今度一緒に出掛けることになった…」
「えー、なにそれ聞いてない!俺も一緒に行く!」
「あいつっ、俺が誘っても絶対に行ってくれないのになんでだよ!お前ら俺をハブにしすぎだ!」
「お前らが煩悩の塊だからだよ。何回も言わせるな」
「寝る前に一言いいか?名前と雷蔵見て」


とうとう限界を迎えた兵助が机に顎を乗せたまま名前と雷蔵が立っているキッチンに目を向ける。
三人揃って二人を見ると、


「ふふっ。名前、頬に泡がついてるよ」
「あ…。今さっきかゆかったからその時に…」
「僕がとってあげるからそのままでいてね」
「ありがとう、雷蔵。雷蔵は本当に優しいね」
「名前が優しいからだよ。僕こう見えて現金な人間だよ?」
「じゃあこうやって甘やかしてくれたり、優しかったりするってことは自惚れてもいいってこと?」
「うん、自惚れていいよ。僕も自惚れていいかな」
「私も雷蔵が好きだよ」
「ありがとう、名前。僕も好き」


キッチンではまるで新婚夫婦のような雰囲気を出していた。
今邪魔をしに行ったら確実に名前を怒らせてしまうが、あまりの仲の良さに嫉妬をしてしまう。
どうしようか悩んでいる三人に雷蔵だけがこちらを振り向いてニコリと笑顔を向けた。


「(ごめんね)」


口パクで伝えたあと、違和感なく名前に近づき、腰に手を添えたのだった。


「なに、雷蔵?」
「ん?えへへ、なんかちょっとくっつきたくなっちゃって…。ごめんね?」
「雷蔵なら別にいいよ。甘える雷蔵かわいー」
「……雷蔵…!雷蔵に裏切られた!」
「なにあれズルい!雷蔵黒い!」
「さすが優秀ってだけあるな…。俺も今度してみよ」
「八左ヱ門がやったら確実に怒られるだけだから止めたほうがいいのだ。因みに俺もやったら怒られなかった」
「「「なんだと!?」」」
「もー、うるさいよ。夜なんだから静かにして」
『はい…』





蜜月さんへ。
誕生日おめでとうございます!
遅くなりましたし、下ネタそんなに入ってなかったですね…。すみません…。
五年はこんな感じの下ネタトークと小競り合いが私的に萌えてしまいます。


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