夢/贈り物 | ナノ

兎の皮をかぶった狼


!すっごくすっごく注意!
オリキャラ×オリキャラ表現があります。忍たまキャラ?出ておりません。
獣主×オリキャラ(反対?)なので、苦手な方もしくは興味のない方はお気を付け下さい。
(なので、獣主の名前が固定となっております)





「虎徹先輩」
「げっ…」


ニコニコと人当りよさそうな表情を浮かべ、手を軽く振りながら虎徹に近づいてくるのは青の忍び装束を着た少年。
語尾にハートマークをつけて名前を呼ぶと、虎徹はピタリと動きを止め、ギギギ…錆びついた玩具のように首をゆっくりと動かし、振り返った。
その行為だけでどれだけ虎徹が彼のことが苦手なのかが解る。
しかし少年の名前は気にせずもう一度「虎徹先輩っ」と、今度はオンプマークをつけて至近距離まで近づいて足を止めた。


「ちけぇんだよ…」
「そんなことないですよ。それに、先輩の顔はもっと近くで見たいです。もっと言うなら、」


無邪気な笑顔から、少し怪しい笑顔へと変え、自分より身長の高い虎徹を下から覗き込む。
反応せずさっさと逃げればよかったと思い、逃げようかと思ったころには名前に手首を掴まれていた。
名前は接吻できるぐらいまで顔を近づけたあと「これぐらいまで?」先ほどより声を低くして言ってみた。


「俺は断る。大体、俺は男に接吻なんてされたくありません」
「僕はしたいですけど?」
「俺はしたくありません」
「僕はしたいんです」
「お前しつけぇな!」


離せ!と、掴んでいた名前の手を振りほどく。
名前から距離をとって離れたあと、掴まれた場所を反対の手で摩りながら、名前を睨む。
とは言っても、名前にはあまり意味のない行為だった。
普通、六年生でもあり野生っぽい虎徹に睨まれると、大体の人間が若干の恐怖を抱く。
しかし、名前は虎徹の睨みをニコリと受け止めるだけじゃなく、一歩近づいた。


「虎徹先輩は本当に格好よくていらっしゃる」
「近づくな。噛みつくぞ」
「ああ、それはいいですね。虎徹先輩から近づいてくれるなんて凄く珍しい」
「お前なぁ…。どんだけポジティブなんだよ…」
「違いますよ。相手が虎徹先輩だからです」


「好きなんですよ」といつものように告白する名前と、いつものように溜息をはく虎徹はもはや見慣れた光景。


「虎徹先輩、そんなに僕のこと毛嫌いしなくてもいいじゃないですか。小動物が懐いてくると思えば可愛くないですか?」


なんたって虎徹はこの学園で一番の獣使いだ。プロにはまだ敵わないが、それに匹敵するだけの実力を秘めている。
そんな彼はやっぱり動物好きで、委員会の後輩であり、自分と同じ学年の竹谷八左ヱ門も可愛がっている。
だから自分も先輩を慕う犬や八左ヱ門のように可愛がってほしい、と。いつも言っているのだが、虎徹はそうはしない。
名前を見る目の奥には若干の殺気がこめられている。「近づくな」と目で伝えているのだが、やはり名前にはきかない。


「名前が小動物?竹谷が小動物…犬なのは認めるが、お前は違うだろ」
「え?では、猫でしょうか?鳥にもなれますよ?どの動物になっても僕は虎徹先輩を慕っております」


ええ、もう心から。
目を伏せて、虎徹の腕を掴んでいた手を自身の胸にそえる。


「その胸の奥に何を隠してんだろうなぁ?」
「そんな…。僕の胸の中には虎徹先輩を慕う気持ちしかありません。虎徹先輩を敬愛しすぎて、男なのに愛してしまったのです。偏見がないと仰ったのは虎徹先輩ですよ?」
「ああ、言ったさ。言ったけど、「断る」とも言ったよな?」
「ええ。ですから落とすまでこうやって健気に頑張ってるんじゃないですか。後輩が頑張ってる姿は愛しいでしょう?」
「自分で言うなよ。でもな、俺は絶対にお前に落ちねぇぞ」
「それは何故でしょうか?少しでもあなたの理想に近づきたいので、理由を教えてください」


真っ直ぐと虎徹を見る名前の目は、先ほどの虎徹のように鋭かった。


「何度も言わせるなよ、名前。俺は男に興味ねぇ。もし、万が一好いたとしても俺が上だ。それだけは譲れねぇ」
「はい、ですから僕が下でいいと仰ったではないですか」
「それが信用ならねぇんだよ。お前が俺を食いたいってのは、お前の目を見ただけで解る。だから、「その胸の奥に何を隠してんだ?」って聞いただろ」
「………」


いつもは誤魔化していたが、いい加減しつこい、ケリをつけたいと思い、ハッキリと言ってやった。
下手にくる名前だが、彼の目は言っている。


「俺を食いたいんだろう?」


バカな考えをするものだ。
ハッ!と鼻で笑い、目で名前を見下す。
別にバカにしているつもりはない。
ただ、「お前は俺に勝てねぇぞ」という感情をこめたら、自然と見下していたのだ。
虎徹の言葉に、ほんのり笑顔を浮かべていた名前は時が止まったように動かず、だけどすぐに笑みを消してもう一度笑みを浮かべた。


「さすがですね。やはり俺の愛した方だ」
「おいおい…さっそく化けの皮はがすのかよ…」
「ええ、虎徹先輩がそう望んだんでしょう?これが俺の本性ですよ」
「ずっと隠しておくかと思ったのに」
「まさかっ!虎徹先輩を抱くときはこれで攻めてやろうと思ってました」
「あーあー……」


先ほどの柔らかい雰囲気はなく、強い口調で喋る名前は、今までの名前とは同一人物に見えない。
心底嫌そうな顔をして顔を背ける虎徹に近づいて、ニヤリと笑った。


「虎徹先輩ってどう見ても下でしょう?俺が可愛く鳴かせてあげますから、いい加減俺のものになってくださいよ」
「ゲス野郎。誰が野郎の下で鳴くかよ」
「じゃあ上でもいいですよ?俺も先輩同様、足腰強いんで」


クスクスと笑いながら舌を出し、自身の親指で抑える。
その親指をペロリと見せつけるかのように舐めたあと、反対の手で今まで見せたことのないような力で掴んで引き寄せた。


「こっちも上手ですよ?」
「百年はえぇよバァカ」
「ああ…虎徹先輩のその目は本当に素敵ですね。強い意志、殺気……それらを全て押さえつけ、俺の下で泣かせたい。きっと喘ぐ先輩も、泣く先輩も格好いいですし可愛いです」
「想像しただけで鳥肌がたつな。お前の性癖にも鳥肌がたったよ」
「あはは、そんな虎徹先輩も可愛い」


至近距離で会話をしたあと、名前が虎徹の唇を奪う。
チッと舌打ちをするように眉間にシワを寄せたあと、ガリと名前に噛みついたが止めようとしない。
血の匂いと味にさらに表情を歪め、懐に忍ばせてあった苦無に手を伸ばした瞬間、すぐに離れた。


「物騒だなぁ…」
「それはテメェだろうが。噛んだんだから離れろよ」
「それぐらいじゃあ俺の虎徹先輩への愛は拒めませんよ」
「重てぇ愛だな」
「ええ、でも好きですよね?一途な子が好きですもんね、虎徹先輩は。だから、俺にしときませんか?」
「断る。これからもないから諦めろ」
「言い方が悪かったですね。俺にしてください」
「女になって出直して来い」


名前の血をペッと吐き捨てたあと、背中を向けて歩き出す。
背中からも殺気が滲み出ており、よくよく上空を見ると鷹が旋回していた。
さすがにこれ以上攻めたら危ないと諦め、手を軽く振る。


「虎徹先輩、僕は本気ですよ。本気で虎徹先輩のことを愛しております」
「じゃあ可愛い俺のわんこになることだな」
「八左ヱ門じゃあるまい、できない約束です」
「なら、俺はお前より竹谷を可愛がるよ」
「嫉妬が爆発したらどうなるのか楽しみですね」
「ああ、楽しみだな」


お互い笑っているのだが、目だけは笑っておらず、胸の内に秘めている言葉を視線に乗せて伝えた。





ちよこさんへ。
お誕生日おめでとうございました!

おまけ。



「なぁ八左ヱ門。虎徹先輩くれよ」
「お前なぁ…。何度も言わせんな、やれねぇ」
「俺のほうが虎徹先輩を溺愛しているし、可愛く鳴かせることができる。俺のほうが虎徹先輩のことを理解しているし、支えることができる。だから委員会変われ」
「ったぁ!名前っ、テメェ足癖悪いんだよ!あと、俺らの前と先輩の前とじゃ性格が違いすぎだ!」
「あったりめぇだろ。可愛いほうが先輩に好かれんだから。それより早く変われよ」
「絶対ぇ断る!」



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