夢/七松デー | ナノ

ホラー鑑賞会


!注意!
現代パロでちょこっとだけホラー話。





『キャアアアア!』
「っ!」


夏!ということで、立花先輩がホラーDVDを持ってきた。
立花先輩には逆らえないので皆大人しく、一階に集まり見ることに。
大きなテレビなせいで、大迫力…。しかも、テレビの目の前に寝転がって見ているから余計迫力が増す。
ホラー系はちょっと苦手だし、あまり見たくなかったのだが、それ以上に…。


『ね、ねえ…。あそこにいるの……死んだはずの……っ!』


七松先輩がビクビクしているため、私はそこまで怖くなかった。
つーか七松先輩にも怖いものってあるんだね…。
熊と遭遇すれば喜ぶ。不審者を見ても喜ぶ。泥棒を見ても喜ぶ。
常に戦うことしか考えてない七松先輩に、怖いものなんてないと思っていた。
チラリと後ろを見ると、立花先輩がニヤニヤと七松先輩を見ていた。ああ、知ってたんだ…。わざとか。
潮江先輩は立花先輩の近くにあるソファに座って、真顔で見ていた。あれ絶対解析してる。
中在家先輩は一番後ろの椅子に座って、普通に見てる。うん、あれも通常通り。違うのは眼鏡をかけているぐらいだ。
食満先輩と伊作先輩は何故か一緒のソファに座って、「怖い怖い」とうるさい伊作先輩を宥めている。あそこはマジでホモなんじゃないかなぁ…。
雷蔵は一人用のソファに座って、真剣にテレビを見ている。その足元には三郎。三郎はちょっとつまらなさそう。あいつは現実主義だもんね。
兵助も三郎と同じ感じ。ただ、豆腐を食べるときは最高に幸せそうだ。はいはい、電波電波。
勘右衛門は中在家先輩と同じ机に座って、携帯とテレビを交互に見ている。はいはい、女の子女の子。
で、テレビの目の前に寝転んでいるのが私と七松先輩と竹谷。因みに私が真ん中だ。


「七松先輩」
「っなんだ!」
「怖いんですか?」
「怖くない!」
「いや、だって…私の服掴んでますし…」
「違う!お前が怖がっていたから掴んでるんだ!」
「そうですか…。あと竹谷」
「な、何だよ…。今いいとこなんだから邪魔すんなよ…」
「何で私の服掴んでんだよ」
「お前が怖くねぇようにだろ!?」
「逆切れされても…」


どうやら二人揃って怖いみたいです。私は、自分より小さい子に寄り添うお前らのほうが怖いよ。
まぁそのおかげで怖いと話題のDVDも怖くなく、見終わることができた。


「うー…やっぱダメだ。幽霊はダメだ!」
「やっぱり怖かったんですね」
「違う!幽霊は拳がきかんからダメなんだ!」


なるほど…。攻撃することができるなら、幽霊も怖くないんですね…。なんつー人だ…。


「じゃあゾンビは怖いですか?」
「何で?噛まれる前にぶっ飛ばせばいいだろ?」
「ですよねー」
「小平太は和物ホラーが苦手なんだ」
「立花先輩」
「あいつらは倒せんからな…!」


悔しそうに拳を握る七松先輩を見て、「この人アホだなー」って思った。口には絶対出さねぇけどな!


「もー、すっごく怖かったねー!」
「伊作、お前ビビリすぎだろ…」
「だってこれヤバいんだもん!仙蔵、これさっさと返してきたほうがいいよ!」


未だ私の服を離さない七松先輩の頭を撫でていると、食満先輩にぴったりくっついた伊作先輩が今さっきのDVDを立花先輩に投げつける。
さすがヘタレ。そのまま怖がって、明日寝不足になるといい!
心で呟いたはずなのに聞こえたのか、伊作先輩は私を見て、目を細める。んだよ、まだ何にも言ってないだろー。


「ほらね!だから嫌だったんだよ!仙蔵も知ってるくせに何で借りてくるのー!?」
「伊作落ちつけって」
「そりゃ留さんはいいけどさー。僕、幽霊は怖くないんだけど、そんな雰囲気になるの苦手なんだよ!」
「ほー…。今回もか」
「このDVDってそういう噂があるから処分されたはずなのに!」


全く理解できない会話に首を傾げると、腕をガシッと掴まれた。
さっきまでホラーを見ていたせいで思わず悲鳴をあげて七松先輩に抱きつく。七松先輩も驚きながらちゃんと抱き締め返してくれた。


「名字ー…一緒にトイレ行こうぜー…」
「驚かすなよ竹谷!トイレぐらい一人で行けって」
「やだよ!すっげぇ怖ぇじゃん!」
「ヘタレか」
「はい、ヘタレです」
「認めんなよ…」
「名字っ、私も行く!」
「はいはい、解りましたよ」


何故か自分よりでっかい男二人を連れてトイレへと向かう。


「久々知ー、名前がまたつかれてるよ」
「え、またですか?」


………え?つかれてる?疲れてる?疲れてないけど?


「名字ッ、漏れるから早く!」
「あ、うん」


二人が順番にトイレに入ってる間、伊作先輩の言葉をずっと考えていた。
私別に疲れてないしなー…。それより何で兵助に?兵助……?え、何でさ!超気になる!


「ごめん竹谷!ちょっと離れる!」
『やだああああ!すぐ終わるからちょっと待って下さい!』
「伊作先輩!」
『名字ーっ!』


竹谷を置いて、七松先輩と手を繋いだまま伊作先輩の元に向かうと、兵助と真剣な顔をして話していた。
私が来ると兵助はジッと見つめてきた。……私じゃなくて私の肩らへんを…。


「幽霊的な意味か!」
「うん、憑かれてるよ。名前って憑かれやすいんだよねぇ」
「初めて知ったよその事実!え、マジで!?」
「だから言ったんだよ。あのDVD自体、よくないのに仙蔵ってばさぁ…」
「いや、すまんかったな。全く気付かなかった」
「もー…。どうすんのアレ」


つかれているは、幽霊に憑かれているという意味だった。
ふっざけんなよ!知りたくなかったような知ってよかったような事実を教えんなよ!
七松先輩はまだ解っていないのか、黙って様子を見ている。そこへ、半泣きの竹谷がトイレから走ってきて私の腰に抱きつく。どんだけヘタレだ!


「まぁでも大丈夫だと思う………。一応これを持っておけ」


ゴソゴソと兵助がポケットから取り出したのは、お守り。
それを渡されたあと、ジッと見る。止めろ。私に憑いているであろうものを見るな。


「兵助、助けて」
「ごめん、無理」
「じゃあどうしたらいいの!?私死んじゃうの!?」
「安心して名前!死んだらちゃんと解剖して焼いてあげるからね!」
「解剖する意味が解んねぇよ!黙ってろ不運!兵助ーっ」
「大丈夫。たちの悪い者じゃないから、明日になればいなくなる。お守りは一応、だから」
「それが怖いんだっつーの!っ七松先輩!」
「おう、何だ?」
「竹谷!」
「お前マジで今日のは許さねぇからな!」
「今日は一緒に寝て下さい!お願いします!」
「「喜んで!」」


夏が終わったら詳しい事情を聞いてやるっ…!


「ああ、そうそう。ちゃんと伝えとかないとね。あのね、好奇心だけで「そういう場所」に行ったらダメだよ?何もなかった。なんてことはないからね、絶対に。ほら、後ろ見てごらん?いるでしょ?」
「善法寺先輩、怖がりなんじゃないんですか?」
「僕、ああいう雰囲気が苦手なだけで、幽霊が怖いなんて言ってないよ?」
「そうでしたか、それはすみません」
「さて、このDVDをどう処分するかな」
「ちゃんと仙蔵が処分してよねー」
「俺もあんまり関わりたくないですね」
「仕方ない、祓ってもらうか」


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