夢/七松デー | ナノ

初めまして、


!注意!
七松家のお話。捏造、妄想が多々入っております。
以下はあくまでこのサイトでの設定になります。

七松家。
とある町の領主。道場を開いているので、かなり大きな屋敷に住んでいる。
父親は息子たち以上に豪快だが戦いにおいては冷静沈着。七松家では剣術も体術も最強。
母親は寛大。全てを笑って流す。天然なのかもしれない。
長兄は自由奔放、小平太以上に豪快。跡取りにならず、自分の好きなこと(忍者)をしている。
次兄は真面目で優しい。七松家の跡取り息子で武士。
末っ子小平太。武家出身なので作法はそれなりだが、刀の腕はからっきし。長男に憧れているのと、次兄を助けたい支えたい気持ちで忍びへ。





忍術学園が長期の休みに入りました。
上級生となれば実家に帰らず、忍たま長屋で過ごす生徒のほうが多いが、今回だけは違った。
正月をまたぐということで、ほとんどの生徒が帰宅準備を整える。あの六年生でさえ、帰る支度をしている。


「…竹谷くんも帰るんだよねー」
「正月ぐらい顔見せねぇとな」


苦笑しながら荷物をまとめている竹谷を見て、「ふーん」とだけ答えると、動きを止めて私に振り返った。


「お前はまた帰んねぇの?」
「んー……まぁ…別に用はないしねぇ…」


実家が嫌いとかそういうんじゃなくてですね…。帰らなさ過ぎて顔を出しづらいだけなんですよ。
文のやり取りはしているものの、顔を合わせるとなると気恥ずかしいんだ。もう何年も会ってないんだから…。
だから今回も長屋に残ろうとしたら、竹谷はちょっと寂しそうに笑ったあと、「そうか」と答えて支度に戻る。
気にかけてくれるその気持ちが嬉しいよ。


「六年生は誰が残るか知ってる?」
「誰だっけな…」


五年は全員帰宅することになっている。
三郎も嫌がっていたけど、正月ぐらいは…と言われて帰ることにしたらしい。あいつもあまり実家に帰りたがらないからね…。
六年の先輩は、伊作先輩のみ残るらしい。でも、どの先輩も正月を過ぎたらすぐに戻ってくるとのこと。
あ、立花先輩は挨拶周りとかで遅くなるって言ってたな…。


「七松先輩も帰るって珍しいよな」
「よね」


支度を終えた竹谷が笑いながらそんなことを言っていたので、私も笑って同意すると、廊下の向こうに気配を感じたので口を閉じる。


「お、名字いた」
「七松先輩でしたか。どうされましたか?」


声をかけることなく戸を開けたのは、噂をしていた七松先輩。
ちょっとドキドキしてたけど、別に悪口を言っていたわけじゃないから大丈夫…。
七松先輩は私に一歩近づいてニコッと笑った。


「お前、今回も実家に帰らないんだって?」
「あ、はい。伊作先輩と二人っきりってのは嫌だけど、長屋に残ります。山田先生もいるし、なんとかなるかなーって」
「じゃあ私の家に来ないか?」
「へ?」


七松先輩の提案に、思わず素っ頓狂な声がもれた。竹谷も目を見開いてちょっと驚いている。


「嫌か?」
「やっ、嫌とかじゃなくて…。ビックリしてあんな声が出ただけです、はい」
「何でビックリするんだ?」
「だっ…て、………」


実家ですよ?大好きな人の実家ですよ!?
そりゃあ色んな意味で緊張するしビックリするでしょう!
いずれは夫婦となりたい人の実家ということは、その…挨拶とかも必要だろうし、うまくやっていけるか不安ですし…。
いやいや、そんな深い意味はないはずだ。「遊びに来い」的な意味で誘ってくれたに違いない!


「いい加減嫁を紹介しろと母上から文が届いたんだ!」


んぎゃあああああ!やっぱりそういう意味なのかっ。そういう意味でよかったのか!
早まる心臓と呼吸のまま、竹谷に助けを求めると、竹谷は目を泳がせていた。………ああ、居心地が悪いのか。すまんな、お前の前でこんな話して。でも助けて!


「あ、の…。嫁、というのは…」
「……」


そう言うと眉間にシワを寄せて不機嫌オーラを放つ七松先輩…。
ううっ、でも自惚れって思っちゃうんですよー…。
小声で謝って、目を伏せると、溜息をつかれた。


「今まで私の勘違いだったのか。残念だな」
「っすみません!行きたいですっ、行っていいですか!?」
「おう、構わん!」


幻滅させてしまった!と焦って顔をあげ、素直な気持ちを伝えると最初に笑った顔をすぐに見せてくれた。……もしかしてわざと?


「ならさっさと小松田さんに外出届け出してこい」
「解りました!」
「荷物は必要最低限で構わん。全部準備させる。準備ができたらまた声をかけてくれ」
「はい!」


準備させる。って言い方がまた……なんていうか、武家の方だなぁって思う。
……よくよく考えたらさ。私って玉の輿だよね?だって我が家は農家ですよ?詳しくは、半忍半農。
そんな家の子が武家に嫁ぐなんて……。あ、母さんに言ったら喜ぶかな。父さんは驚きそう。
七松先輩はさっさと用件を伝えて、部屋から出て行く。
準備をしながら実家のことを考えていると、ちょっとだけ寂しくなった。……ちゃんと帰るべきだよね。でもなぁ…今更って思われそうで……。


「おい名字、早く準備しねぇと七松先輩に怒られるぞ」
「あ、うん」
「七松先輩んち楽しみだな。どんな家だったか教えてくれよな!」
「おうともよ!」
「じゃ、俺は先に帰るぜ。また来年な!」
「うん。今年はお世話になりました。来年も宜しくな相棒」
「おう!」


荷物を背負い、元気よく外へ飛び出す竹谷くん。
外は寒いっていうのにあんな薄着だなんて…。まぁ走って帰るから熱くなるんだろうね。
って言ってる場合じゃないや。私もさっさと荷物をまとめて、小松田さんに許可を貰わないと…。あと山田先生にも言って来よう!


「あ、名前。明日からのご飯なんだけど、君朝と昼担当でいいかな?」
「何で私が一食多いんだよ!でも残念でしたーっ。私帰ることになったんですよ」


小松田さんのところへ向かおうと廊下を出たら、丁度伊作先輩と遭遇し、面倒なことを押し付けられた。
こいつが後輩に優しいって誰が言ったんだ。酷い先輩だぞ、伊作先輩は!


「え、どういうこと?せっかく解剖してやろうと思ったのに…」
「ボソリと怖いこと言ってんじゃねぇぞ不運野郎。七松先輩のお言葉に甘えて、七松先輩の実家でお世話になるんです」
「……小平太が誘ったの?」
「はい」
「…。へー…、それは楽しそうだね」


ニッコリと笑う伊作先輩だったけど、心なしか目は笑ってなかった。
いや、怒ってとかそう言う意味じゃなく、何だか悪い意味で楽しそう。
クツクツと喉の奥で笑って、背中を向ける。


「じゃ、休みの間しっかり楽しんできなよ。でも、ちゃんと気をつけるんだよ?」
「は?」
「子供できちゃったら卒業できないからね。じゃ!」


…………そういう意味で笑っていたのかあの野郎!
でもそうだ!実家にお世話になるってことは、七松先輩と一緒にいるということ…。しかも嫁(恥ずかしいなちきしょう)と紹介されるなら………ッ!


「い、今更断れないし、何より考えすぎなだけな気が…」
「お前は一人なにを喋ってるんだ?」
「ッ七松先輩!?あ、すみません!ごめんなさい!」
「何か悪いことでもしたのか?」
「してないです!でもまだ小松田さんに伝えてないです!」
「……十秒待ってやる」
「行ってきます!」


私服姿に着替え、荷物を背負った七松先輩が後ろから現れ、一瞬心臓が止まった。
すぐに邪な考えは捨て、今すべきことをする!ええい、考えても始まらねぇや!
きっと大丈夫。実家だし、七松先輩も静かだろう。
それより挨拶とか、手土産とかどうしよう!やっば、そっちのほうが緊張する!あーっ、もっと女の子らしい恰好に着替えないと!着物あったっけ!?


「もう、ギリギリに言うのはダメですよぉ」
「すみません小松田さん!今度からは気をつけます!」
「次回からは気をつけてね?じゃ、山田先生にもちゃんと伝えといてください」
「解りました。ご迷惑をおかけします」


小松田さんに事情を説明すると、渋々と承諾してくれた。ごめんなさい、小松田さん!
慌てて山田先生がいる職員室に向かい、同じく事情を説明すると、笑顔で承諾してくれる。これが大人の余裕ってやつか!?


「(着物着物着物っ!この前着たのいつだっけ!)」


連絡事項は終え、部屋にダッシュで戻ってくると、七松先輩が廊下に座って待ってた。
謝って部屋に戻り、私服へと着替える。
七松先輩が待っているからさっさと着替えないと…。でも着物……時間がかかる!ああもうっ、着物への早着替え実技苦手なんだよね!


「七松先輩、ちょっとお時間頂いても宜しいですか!?」
「まだ時間は余裕だから大丈夫。どうかしたか?承諾してもらえんかったのか?」
「い、いえ…。あの……七松先輩の実家へ行くなら、ちゃんとした服装に着替えようかと…。可愛くない着物ですけど…」
「何だ、そんなことか。誰も気にせんぞ!私なんかいつも袴ボロボロにしてる!」


廊下に座ったまま、首だけをこちらに向けて笑ってくれる七松先輩に、ちょっとだけ心に余裕ができた。
なんか一人で焦っていたな…。無理もないよ、好きな人の実家に行くんだから……。


「そうですか…。でも一応…その、自分が満足したいので…」
「そうか、なら構わん」
「ありがとうございます!」


とは言っても、着物の数は少ない。
選ぶのに時間はかからず、着るのに時間がかかってしまった。
若い子が着るにしては地味な色の着物を選び、腕を通して、ささやかな抵抗で簪もつけた。これで少しは女の子らしく見える…!


「お待たせしました」
「おう」
「着物着てますが、ちゃんと走れます!」


七松先輩の実家は、それなりに遠い。きっと今から早歩きで向かったら夜につくだろうという距離。
もしかしたら走るかもしれない。そう思って、いつもの走りやすい草履も用意すると、七松先輩は滅多にしない優しい笑顔を浮かべた。


「せっかく名字が化けたんだ。今日は走らん」


化けたって言い方はあれだけど、その言葉から優しさを感じて、照れ臭くなった。
一生懸命したお化粧が汗で落ちないように。頑張って着た着物が崩れないように。簪を落とさないように。
うん、やっぱり私七松先輩が好きだ。改めて実感すると心があったかくなるね!


「では行くか!」
「はい。お世話になります!」


いざ、七松先輩の実家へ!


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