授業参観 !注意! 子供の名前(固定)が出ています。苦手な方はお気を付け下さい。 小平太が全く出てきません、すみません…。 「………とうとう来たか…」 目の前には、長男、次男、三男が仲良く背の順に並んで、キラキラした目を私に向けて座っている。 彼らの手には一枚のプリント。 まだ幼い末っ子を片手で抱っこし、長男からプリントを受け取る。 プリントには、「授業参観のお知らせ」と大きく書かれており、時間割が載っていた。 「かーちゃん、もちろんきてくれるんだろ!?」 プリントから目を離すと、一番に三男が聞いてきた。 身を乗り出し、ワクワクといった様子で私の返事を待っている。 確かに、授業参観は楽しみだ。子供たちだって私に来てほしいと思っている。なんて嬉しいことなんだ。 しかしですね…。しかしですよ、お三方。あなたたち、授業中にジッとしないじゃない…。 小平太の息子というのもあり、我が家の子供たちは勉強が苦手だ。私も苦手だし、好きとは言えないが、それ以上に彼らは勉強が苦手だ。 この子たちの担任の先生に、「元気があっていいと思います。それを授業にも使って頂きたいのですが…」といつも言われるほど、苦手だ。 私だって息子の勇姿は見たいけど、そんな彼らが授業参観で頑張れるんだろうか…。 「見に行くことは見に行くよ。仙蔵のとこの息子と、文次郎の娘と息子、んでもって留三郎の息子と長次の息子も見たいしね」 「ダメ!母ちゃんはおれを見るの!おれ、がんばるから!」 次男が少し拗ねて腰に抱きついて見上げてくる。可愛かったので頭を撫でてあげると、キャーと言いながら甘えてきた。 「でもね、……騒ぎ起こしたらダメだよ…?」 心配なんですよ…。 きっとこの子たちのことだ。私が来たら絶対にテンションあがるに違いない! そうなれば、周りの子に迷惑だ。お母様方にも迷惑だ! 長男は三回目だから余裕そうに笑っていたけど、あんたも一年のころは酷かったよね? 「だいじょーぶ!母ちゃんはしんぱいしょーだなぁ!とっておきのがあるから聞いてくれよな!」 自信満々に言う長男はふんぞり返って、どや顔を私に見せてきた。 可愛いけど…。うーん…、素直に喜べないなぁ…。 「まぁ悩んでてもしょうがないや。うん、ずっとは見れないけど、絶対に行くからね」 「「「おう!」」」 小学一年生の三男を最初に見て、それから二年生の次男。最後に三年生の長男! 授業は四十五分だから、大体十五分ぐらいか…。 この日だけチビたちは保育所に預けよう。末っ子は伊作んとこに頼もう。彼女、子供は好きだからね! 授業参観がある日まで、ずっと浮足立った彼らを見て微笑ましくなるが、不安だけはなかなか消えてくれなかった。 「こんにちはー」 そしてとうとうやって来た、授業参観当日! まずは一年教室の近くへと向かい、仲のいい文次郎、留三郎、長次のお嫁さんに挨拶。 我が家には七人子供がいるが、この学年が一番賑やか。武闘派な息子たちが揃ってますからね。 綺麗なお母さん方にも簡単にも挨拶して、ちょっとした情報交換をする。 とは言っても、旦那さんへの愚痴が多数で、私はずっと笑って聞いていた。私は特に不満なんてないからねぇ…。 チャイムが鳴る前に教室へ入ると、ちょっと緊張気味の一年生たちが必死に母親を探していた。うわー…皆小さくて可愛いなぁ。 因みに、文次郎の息子と留三郎の息子とはクラスが違うため別れた。 「かーちゃん!」 「あ、いた」 三男の小三郎は一番前の席に座っていた。 元気のいい声で私を呼び、大きく手を振っていたので笑って振り返してあげると、さらに激しく手を振る。 ちょ、目立ちすぎ! さっそくか!と思ったが、隣に座っていた長次の息子、長太郎くんが小三郎を抑えてくれた。 まるで小平太と長次の関係に見えて、ちょっとだけ笑ってしまった。微笑ましい光景だ。 写真に収めたい気持ちを必死で抑えていると、チャイムが鳴って先生が入って来た。 先生は私たちに頭をさげ、子供たちに「羽目を外すな」と笑って、いつも通りの授業を始める。 「(もー、前向きなよ)」 我が子もだけど、どこのうちの子もチラチラと母親の様子を窺っていた。 長男もこんな感じだったなぁ…。 昔を懐かしく思いながら、小さく手を振ってくる小三郎に笑いかけると、パッと笑顔になって前を向く。 だけどまた振り返り、えへへ!と可愛い笑顔を見せてくれた。 「よーし、じゃあこの答えが解る子いるかー?」 黒板には簡単な数式。先生が答えを求めると、どの子も元気よく手をあげ、自分をアピール。 「はいはいはいはいはい!!」 そして一番やかましいのが我が子です…。一番前に座ってるから余計うるさい…。 お母様方に謝ると、クスクスと笑われた。 隣にいた中在家は、「さすが」とニヤニヤ笑っていた…。可愛いでしょうが! 「じゃあ…今日は一段と元気な七松に答えてもらおうか」 「はいっ!」 「ここの答えは?」 「わかりませんッ!」 それはもう元気よく、ハッキリと…ッ! 子供たちや先生は慣れているのか、特に反応はしなかったが、お母様方は全員吹き出して笑ってしまった。 もー……元気なのはいいけど、はっきりと言うもんじゃないよ…。いや、解らないなら手をあげなくていいから…! 恥ずかしくはないが、何だか申し訳ない気持ちになって、また謝った。すみません、おバカな子で。でもいい子なんです…。 「っと、もう時間が…」 「あれ、もう行くの?」 「うん。ほら、うちあと二人いるじゃん?」 「あ、そっか。大変だね。気をつけて」 中在家に挨拶してから教室を出ようとすると、後ろから、 「じゃあなかーちゃん!おれ、きょうのばんごはん、肉がいい!」 「いいから前向きなさい!すみません、失礼します!」 小三郎に見送られ、笑われながら一年教室を退場。 よし、次は二年生教室!確かこの上だったよね…。 階段を上っていると、竹谷くんのお嫁さんとも遭遇して、簡単に挨拶。あそこも二人いるから大変だろうね。 二年生は、仙蔵の息子と文次郎の娘がいる。仙蔵の息子、誠一くんとは同じクラスで仲がいい。 邪魔にならないように静かに教室に入ると、仙蔵のお嫁さんと目が合い、会釈して隣に向かう。 「母ちゃん来た!」 「七松、授業中なんだから静かにしなさい…」 「母ちゃん!おれここっ、ここ!」 「解ったから先生の言うこと聞いて!」 さっそくか…。 先生と周りのお母様方に謝って、前を向くように手を払うと、首を傾げた。いいから前向け! 「そっか!」 その仕草をどう勘違いしたのか…。 次男の小次郎は後ろを向いたまま、あっち向いてほいをしはじめた。 違う!遊びじゃないから!前を向きなさいって言いたいの! 「小次郎、授業中は前をむけと言ってるだろ。名前さんに恥をかかせたいのか?」 「誠一、ハジってなんだ?」 「名前さんに嫌われてもいいのか?」 「やだ!」 「じゃあ前を向け。すみません、先生。気にしせず続けてください」 「いつもすまんな立花…」 隣に座っていた誠一くんの説得により、小次郎は前を向いてちゃんと授業を聞き始めた。 「すみません、迷惑かけて…」 「いえいえ。こうやって色々なことが学べるので」 立花さんに謝ると、彼女はのほほんと笑って許してくれた。 誠一くんのおかげで、小次郎はそれなりに成績がいい。 扱いも上手だから、特に問題もなく授業は進んでいき、最後の十五分になった。 「じゃあ私はこれで…」 「ああ、もう一人いますもんね。大変ですね」 「母ちゃんもう帰るのか!?おれ、なにもしてない!」 「小次郎の勉強してる姿見れて、名前さんも満足だよ。ほら、最後までがんばろう」 「うー……。母ちゃん、今日のご飯、肉がいい!」 「兄弟揃って同じこと言うんじゃない!すみません、失礼しました!」 やっぱり笑われながら教室をあとにして、急いで最後の教室へと向かう。 さて、自信満々な長男はどんなことをしてくれるのか…。 同級生には立花双子がいるんだけど、双子ちゃんは私立の小学校に行かせているため、仲のいい友人がいない。 と言うことは、長男を止めてくれたり、上手に扱ってくれる友人が存在していないと言うことだ…。 すぐに謝れる準備をしつつ教室に近づくと、教室から「母ちゃんが来た!」という声が聞こえて、溜息を吐いた。 何故、気配が読めたんだい、我が息子よ…。 「やっぱり!母ちゃん、おれ、ここな!」 「はいはい、前向きましょうね…」 兄弟揃って同じことばっかして…。 謝りながら空いてる場所に移動して、長男の小太郎を見ると、彼も嬉しそうに笑っていた。 黒板には、「しょうらいのゆめ」と書かれており、そのお題に沿った作文を一人ずつ発表しているようだった。 順番は挙手制で、私が来たのを確認してから、小太郎は元気よく手をあげる。まるで三男のときのように…。 「じゃあ七松いくか。今まで静かだったしな」 「はいっ!」 元気よく立ち上がり(そのせいで後ろの子の机に椅子がガンッと当たったけど…)、ぐしゃぐしゃになった作文用紙を両手で持って読み始めた。 「三年二組、ななまつこじろう!しょーらいの夢は、ゴジラになることです!」 デジャヴだ。 お母様方は吹き出して笑い、肩を震わせている。 自信満々のわりに、これかぁ…。いやね、子供だから別に構いませんよ?問題なしです。ええ、可愛いですとも。 言ってやったぞ!って顔でこっちを振り返る息子は超可愛いですよ?きっとなれるよって言ってあげたいですよ? でもね、 「……七松」 「はい!」 「それだけか?」 「ハイッ」 作文なんだからあれで終わっちゃダメでしょぉ…!もうちょっと頑張ろうよ!作文苦手なの知ってるけどもっと頑張って! 「何でゴジラなんだ?」 「強いから!それに、あいつ火ふく!あと、でっかくなるから!」 「そうか。じゃあ今度からそれを書こうな」 「わかりました!」 素直に先生の言うことを聞いて、鉛筆を持ってその場で書き始める小太郎くん…。 ああ、おバカな子ですね…。今はもう書かなくていいんだよ。今度から気をつけようね。 もう何も言うこともなく、チャイムが鳴るまで息子を見守ってあげました。 うん、一生懸命な彼らが見れて満足だよ。恥はかいたけど、別に嫌じゃない。可愛いじゃないか! 先生に「ありがとうございました」とお礼を言って、先生がお母様方に挨拶して、参観日は終了。 先生が出て行くと同時に、子供たちはそれぞれのお母さんに近寄って行った。 「どうだった!?かっこよかった!?」 「小太郎がゴジラになりたいとは知らなかったよ」 「だってかっこいいもん!でも、今日のおれのほうがかっこよかっただろ!?」 「うん、よく頑張ってたね。偉い偉い」 「じゃあ今日のご飯は肉な!」 「またですかい…」 授業参観で学校は終わりなので、次男と三男を迎えに行って、四人で仲良く帰りました。 どんどん成長していく子供たちを見るのはやっぱり楽しいな。ちょっと大変だけどね。 おまけ。 「ゴジラになりたいのか?」 「おう!だって強いもん!」 「ふっ…。ゴジラなんか私にかかれば瞬殺だ!私のほうが強い!」 「す、…すっげぇ父ちゃん!父ちゃんすげーっ」 「当たり前だ!お前たちの父ちゃんだからな!」 「じゃあおれ、父ちゃんみたいになる!」 「おれもー!」 「おれもっ、おれもなる!」 「なるのはいいけど、野菜は食べようね?」 「「「「……」」」」 「ね?」 「逃げろ!」 「「「ラジャー!」」」 「コラッ!」 ( TOPへ △ | × ) |